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鷹槻れん

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#契約結婚
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清香は、自分が言いたいことは言うけれど、味方にはならないと明言していたはずだ。だが、実際には母はこの上なく晴永の味方だった。
この場に清香がいなければ、こんな風に盛晴の心を動かすことは出来ていなかったかもしれない。
「私は……自分の名誉を守っただけです」
ツンと澄ました表情で言う母を見て、晴永は(この人は)と思う。分かっていたつもりで分かっていなかった。母は、愛情をストレートに表現することが限りなく下手な人なのだ。
(くそっ。ホント俺はバカだな)
それで晴永も清香のことを避けてしまっていたのだが、考えてみれば晴留はそんな母のことをいつも慕っていた。
(晴留の方が俺より母さんの本質が見えていたってことか)
そう思うとなんだか情けない。
盛晴が場の空気を切り替えるように、小さく咳払いをした。
「さて」
その一言だけで、応接室の空気が再び引き締まる。
「わしが折れたからと言って、すべてが終わったわけではないというのは分かっておるな?」
晴永は黙って頷いた。
「婚約はすでに公表しておる。お前たち個人の問題では済まん」
「……はい」
頷きながらも、(誰のせいだよ)という気持ちがないわけじゃない。だが、今は過去を悔いるよりこれからどうするかの方が大事だった。
「藤井田家とは改めて正式な場を設ける」
盛晴は淡々と続ける。
「双方合意のうえで婚約を解消することを確認し、両家連名で発表する」
「はい」
「その席には、お前も出ろ」
「もちろんです」
迷いのない返事だった。おそらく、藤井田の方からは千紗も来るだろう。
晴永の返答を聞いて、盛晴は満足そうでも不満そうでもない表情で小さく頷いた。
「それから関係各所への説明も必要になる」
銀行。
取引先。
役員。
親族。
盛晴はひとつひとつ指を折るように挙げていく。
「婚約を発表した以上、何もなかったことには出来ん」
「承知しています」
「責任とは、頭を下げることだけではない」
盛晴は晴永を真っ直ぐ見据えた。
「失った信用を、これから先の仕事で取り戻していくことだ」
その言葉に、晴永は背筋を伸ばす。
「はい」
「その覚悟があるのなら、わしは何も言わん。責任から逃げるために会社を辞めるなどというのは、愚か者の選ぶ道だ。――あんな馬鹿なことは、二度と言うな」
先ほど晴永が自分の覚悟を表現するために、そうしてでも瑠璃香と一緒になりたいと言ったことを指しての言葉だろう。
「分かりました。おじいさまが許してくださるなら、角実屋フーズで精一杯自分が出来ることをやらせていただきたいと思います」
晴永の言葉を聞いた盛晴は小さく首肯したのち、一拍置いてさらに続けた。
「小笹さんとのことだが……」
瑠璃香の名前が出てきたことで、晴永の表情が自然と引き締まる。
「婚約解消を発表したからと言って、すぐに結婚することは認めん」
それは、予想していた言葉だった。
だから晴永も驚かない。
「……はい」
「世間は面白半分に騒ぎ立てる」
盛晴は腕を組む。
「『婚約者を捨てて別の女へ走った』だの、『前から関係があった』だの……好き勝手言う連中はいくらでもおる」
晴永は唇を引き結んだ。
「そんなくだらん憶測に、小笹さんまで巻き込む必要はない」
その一言に、晴永はゆっくりと祖父を見た。
盛晴は、もう瑠璃香を否定しようとはしなかった。
はっきりとそう名言しなかったものの、彼女を守ることを前提に話してくれている。
コメント
2件
2人ともよかったね!(*´꒳`*)
みぅです🤍🥀 このエピソード、すごく良かった…。清香さんが実はちゃんと晴永くんの味方だったっていうのが、じわじわ来た。あの「愛情をストレートに表現することが限りなく下手な人」って言葉に、なるほどなって思う。祖父も、瑠璃香さんを否定せずに「守る」って方向で話してくれてて、確かに一歩進んだ感じがした。晴永くんの成長が感じられる回だったなあ…。続き、ちゃんと読ませてもらいます🌙