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花フブキ

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花フブキ

8 - 栗色。

♥

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2022年01月11日

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⚠学パロ

ーーー









爽やかな秋が近づいてくる。



沢山の彩りをつけたそうな木々達もちらほら



季節先取りも今年はしてみたいかな。






























「それでさぁ…」




ガッチさんが珍しく文句を言ってくる。




「ごめんって」


「思ってないよね?待っててって俺、言ったよね?」



「………」







俺達3人は先日5分もガッチさんを、待たずに帰ってしまった。10分だけでも待っていればこんなに怒られることもなかったよなぁ………







「「「………………ごめんなさぁい……」」」



「……よろしい。特別に許してあげます。でも、次からは無しだからね?」








優しくにこりと笑みを顔に浮かべてそう言ったガッチさんの細くなった目の奥は、黒く果てしない闇のようだった。








ガッチさんは…怒らしてはいけないな…



そう俺らはアイコンタクトをとって瞬時に悟った。










ーーー







帰宅の準備をしていると「ぽぽんっ」と聞き慣れない通知音が耳に入った。






音が聞こえてきた方を見ると、レトさんが滅多に使わないと言っていた携帯を握っていた。






「どしたの?珍しい。」



「俺にだって連絡は来るわ」



「ふーん」






その画面をレトさんは顔をしかめたり、困ったような顔をしたり、嬉しそうな顔をしたりと表情をころころと変えながら、見入っていた。






すると、俺らの準備が遅かったらしく、うっしーとガッチさんがこちらへとやって来た。




「なにしてんの?」


「遅いよ~」



「え?あ、あぁごめん。………ごめんついで、なんだけどさ。」



「うん?」



「じ、時間…今日ってある?」



「…なんで?」



「…………いやぁ…これですよ。」




レトさんがちょいちょいとスマホの画面に指をさす。


その画面を男三人が囲んで眺めている。その光景はハタから見たらどれほど滑稽な絵ずらなのだろう。






………いや、そんなことは今はどうでもいい




画面の内容を確認してみる。




『栗ケーキを焼きました(^^)v早く帰っておいで』





優しい文面でレトさんのことを大事にしていることが温かく伝わってくる。


けど、これが家に呼ぶ理由になるのか?




「…あのー…どゆこと?」


お、うっしーが先に聞いてくれた。有難い。


「うん。俺もよく分からん。」


「え?」


「よぉーく見て…」



よぉぉぉく見てみると文章の上の方に写真らしき物がある。


「なんだこれ」


タップしてみると大きなホールケーキの写真が写っていた。も、もしかして…………



「……これ…が…おばあちゃんの作ったやつ?」


「…………ご名答」



「………にしても、お店に売っているのみたいだなぁ」



「まぁ、お店のみたいに美味しいんだけどね。」



誇らしげにふふんっと小さく笑ってこちらもこちらでおばあちゃんのことが大好きなんだなぁと読み取れた。



そんな大事そうにおばあちゃんのことを考えているレトさんの素の顔を見てこちらも愛おしく感じてしまった。







「俺は行けるよ~」


「うん。俺も」


「俺も行ける。」



「よかったぁぁ…!!」



ぱああぁぁっという、華やかな効果音が鳴るくらいの嬉しそうな顔をレトさんが三人の方へと向ける。




この顔を見て俺は抱きしめてしまいそうになったが冷静をなんとか装った。




だが、今の顔はうっしーとガッチさんにも効果はあったようだ。



「…う」なんて情けない声をうっしーは出して、



ガッチさんは、「かわいいね~」なんていつもはおふざけでしか言わない言葉をレトさんの頭をぽんぽんしながら言っていた。





「は?なめてる?」



おっと、毒が降ってきた。いつものレトさんだ。


だけど、ほんのりと耳が赤くなっていて目を合わせてくれようとはしなかった。



その姿が俺にとっては更なる毒に感じた。


歯止めがきかなくなりそうで、止められなさそうで。







「レトルト~?」






うっしーがそんなレトさんの態度も気にせずに顔を覗き込もうとしている。


「え、なに」


レトさんは、目はあわせないけど顔を上げて安否確認に応える。



ガッチさんはその様子を面白そうに、にまにまと黙って見ている。



なんつーことをしているんだ。コイツらは…。



溜息を思いっ切り心の中でついて俺らはレトさんの家に向かうことにした。












ーーー




















「ただいま~。」



「「「おじゃましまーす。」」」



前に泊まった時とは何も変わっていない。


ただ、変わっているのは前とは違う甘い匂い。






「ばあちゃん?いるー?」



「!」


「おかえりなさい。そちらの方々がお友達?」


「うん。さ、適当に座ってて」





そう言ってレトさんは台所の方へと走っていった。






「……ありがとうございます。」



初めて見るおばあちゃんは見た目はそんなに似ていないが鼻声の所はそっくりだった。


まぁ、レトさんの方が酷いんだけどね。


それよりも他のお二人さんはおばあちゃんと二人暮らしっていうところに驚いて唖然としている。






「…ゲームでもしようぜ」


「お、おう」






しんみりして、レトさんが戻ってきたときに心配はさせたくないから俺は咄嗟に話をそらした。


一つのゲームを取り出す。



4人でできるパーティーゲームだったので「これやろう」とか、「うっしー苦手そぅ~」と珍しく自分から場を盛り上げる。




そのことを見越してなのか、それともただ単に楽しかったからか分からないけど二人は楽しそうに話題に入ってきてくれた。




ガタンッ





ドアが開いた音がする。






「お待たせ」



「うまそっ…!」


「スゲー」


「やっべぇな…これ…」





「食べて食べて!」



切り分けられていたしっとり、ふわふわなケーキにフォークを入れる。


「いただきます。」



大きく口を開けて一口頬張る。




程よい大きさにスライスされている栗が柔らかく食べやすい。そして甘さ控えめの栗味のホイップクリーム。まろやかで甘めのふわふわとしたスポンジとマッチしている。


半分くらい食べ終わった後大きな栗を食べる。


またそれの美味しいこと…!!



そんな調子であっという間に一切れ食べ終わってしまった。



「もう一個食べて良い?」


「うん。いいよ。」





栗ケーキを片手にふわりと笑って「ありがとう」とでもいうように訴えかけてくる。




レトさんの少し栗色気味の髪の毛と重なって彼自身を引き立たせる。







とてもそれが美しくて、綺麗で、また胸が高鳴った。





「じゃ、じゃあ、もらうわ…」



それからはあまり喋れず、黙々とケーキを食べ進めるだけだった。









ーーー











「俺、もういいわ」


「うん。俺もいいかな~」


「ん。ありがとね。」




「おう。………てか…キヨ…何個食べるつもり?」


「ん?」




「ん?じゃねーよ。それお前四つくらい食べてんぞ。」


「マジか。無意識だったわ。」


「えぇー……」




なんだよ。そんな蔑んだ目で見なくてもいいではないか。




「んー。けど皆もう食べないらしいし、俺も帰ろっかなぁ。」


「あ、これ持ち帰りおっけー?」



「いいの?」



「あ、じゃあ俺も~」


「俺もいいか?」



「うん。」





そう言ってレトさんは箱と袋にご丁寧に入れて持ってきてくれた。





「そんじゃね。」



「じゃあな」


「バイバ~イ」


「またね」










ーーー










二人とも別れて後家までもう少し。










ブブッ










バイブ音が聞こえた。俺はスマホを取り出しその場で見てみる。どうやらLINEの通知音だったらしくそのまま画面を開く。








「またケーキ食べにきてくれる?多いから。」










グループLINEで、今日楽しめたかが心配になったのかレトさんがわざわざ聞いてきた。










「もちろん」












送信ボタンを押して






今日大好きになったケーキをカサリと振って俺は家へと帰宅した。












ーーー





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