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格安生姜
320
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#そのじん
しらす
200
久しぶりに招かれた勇斗の家。
お互い仕事が忙しく以前のようには来れなくなっていたのだが、次の日が午後からの予定だったこともありこれが実現した。
…まぁ汚い。
物が散らかって多すぎる。
来たはいいものの、この部屋でどうやって二人でのんびり過ごすんだよ…
「んー久しぶりの仁人ぉ…」
「ちょ、重い重い」
のしかかるような勢いでぎゅうと抱きしめられ動けなくなる。
このままじゃ埒が開かない。
先風呂入って来いよ、なんて言ったら勇斗はわざとらしくキャッ!と口元を押さえた。
仁ちゃんったらいやらしい男〜だなんて茶化すものだから、軽く片付けておいてやるから早く入れ!と文字通り背中を押して風呂の方へと追いやった。
一人になった静かなリビングで、散らかったものをさくさくと元あった場所へと片付けた。
物を退かすとソファにいくつか置かれていた洗濯物が目に入る。
まぁ…こんなのやる時間ないよな。
床に正座をし、その洗濯物を畳む。
「ん…?」
テキパキといくつか畳んだところでやたらとボリュームのある服が目に入る。
「あ…」
広げてみるとそれは勇斗のパーカーだった。
「………。」
着てみようか。
チラリと部屋を見る。
家主はいま風呂だ。
これだけ片付けをしてやってるんだから少しくらい良いだろう。
もそもそとその服をかぶり、両手を広げて腕をパタパタと振ってみる。
「でっか…」
やっぱり大きい。
余った袖が垂れて揺れている。
フードもかぶってみた。
なんだか少し前に番組で着たペンギンの衣装みたいで思わず笑ってしまう。
でもフードまでかぶったのは失敗だった。
勇斗の匂いに包まれすぎている。
洗濯したのにこんなに匂いって残るものなのか?
それか俺が勇斗の匂いを覚えてるだけで…
いやいやいや!!俺なに考えてる?
とうとう頭やられた?
ヤバいやつじゃん…。
否定したくて頭をぶんぶんと横に振る。
ただ服を着ているだけなのにまるで抱きしめられているような感覚が不思議で、それが照れくさくなった。
ほくほくと熱くなる頬を隠すようにフードをぐっと引っ張って俯くと、
ーーガチャン。
え??
部屋に戻ってきた勇斗は俺の姿を見て固まった。
風呂上がりなので頭にはタオルが一枚、そしてあとは下着しかつけていない。
「仁人…なに着て、」
「やっ、あの!これは…!!」
アホすぎた。
フードに埋もれていたせいで周りの音が聞こえなかったなんて。
ずんずんと近付いてくる勇斗。
「俺の服着てたの?」
「っや、その…俺のより大きいなーと思って」
「うん。それで?」
「着てみただけ!ほんとそれだけ!」
「えー?なになにー」
笑いながら手を伸ばしてきたのでそれをかわすように近くのソファにダイブした。
うずくまるよう丸くなり防御する。
「なぁーに仁ちゃん小さく丸まっちゃって。かーわいっ♡」
「うるせえっっ、」
「うさぎさんみたいだね、かわいい」
もうやだ、あーやだ。
顔見られたくない。
「見るな見るな!やめてくれ…」
「いいじゃん、顔あげてよ」
「イヤ!ぜーったい嫌!」
見せれたもんじゃない。
泣きそうだもん俺。
こんな姿を見られるだなんて…
悪態をつくものの声のトーンからしてニヤニヤしてるだろう勇斗に敵うはずもなくフードをそっと捲られる。
すぐ隣りにそっと腰を下ろした勇斗の大きな手に頭を優しく撫でられた。
そして髪の間に指を滑らせる。
「俺すっごい嬉しいけど?」
からかうような言い方ではなくまるで喜びを噛み締めるみたいな言い方をするものだから、居ても立っても居られなくなった。
「嬉しいからこそ、俺の服着て仁人はなにを思うのかなぁって考えちゃうの」
問いかけてくる声が蕩けそうなほど柔らかくて、
「ねぇ、どう思ったの?」
観念するしかないようだ。
勇斗が俺を甘やかすのも、俺が勇斗に甘えてしまうのも。
「洗濯してあるのに、勇斗の、に…においがして…っ」
あーもう、
「抱きしめられてる…みたいだなって、」
帰りたい。
「………」
…え?勇斗のやつ無言なんだけど。
もしかして引いた?
うずくまっていた顔を恐る恐る上げると手で目元を押さえてうなだれている勇斗の姿があった。
「あの…っごめん…」
「もういいから脱いで?」
あ…やっぱり呆れてる。
声のトーンが随分と低い。
こんなことするんじゃなかった、と後悔が押し寄せる。
「はい…すんません」
さっと上体を起こし正座をしながらぶっきらぼうに呟いて脱ぎかけると、
「だめ、上はそのまま下だけぜんぶ脱いで」
とんでもない爆弾発言に時間が止まった。
「……はぁあああっっ?!?」
まさか、いやまさかね!
驚きと羞恥でふるふると震える俺を見て勇斗は腹を抱えて爆笑していた。
お前、パン一だからな?
だぼだぼの服着てる俺も大概だけど、お前も酷いもんだからな?
…なんだよ。
呆れられたかと思ったけど、そこは思い違いのようだ。
このまま俺も笑って、このやりとりを流してしまいたかったのに。
「わっ…!」
ふわりとそのままソファに押し倒されると意地悪く微笑む勇斗の髪から雫が一つ溢れ落ちた。
「ねぇ、まだ濡れてる」
「拭いてくれる?」
「じゃあなんでこの格好に?」
「可愛すぎる仁人が悪い」
「…はいはい俺が悪かったですよ」
顔にかかる髪を指でそっと退けるとあまりにも雄の表情で色気を放つ瞳に心臓が高鳴った。
結局は勇斗のことが好きで、なんならこの角度で見上げる顔が一番好きで。
いつの日か嗅覚も視覚もみんなこいつに支配されてたみたい。
だからもう諦めた。
知らないだろ?
なんてことない日常に、こんなにも俺の好きが溢れてるってことを。
「好きだよ、仁人」
「ん、俺も…」
( 好き。)
言葉にする前に降ってきた甘い口付けを、俺はただ受け止めるしかなかった。
***
日常に潜む好き。
お互いに愛重めのお二人が好きです。
ラジオでのTシャツ畳み、ペンギン衣装、鹿児島かーえろ(あれは可愛すぎた)らへんを詰め込んでできたお話。
彼シャツいいよね(パーカーだけど)
コメント
1件
Mauさん、第1話読みました!仁人が勇斗のパーカーをこっそり着て、匂いに包まれて照れるシーン、すごく可愛くて印象的でした。あの「抱きしめられてるみたいだな」って自覚する流れが甘くて、最後の「好き」の応酬にときめきました。お互いに愛が重めな感じがもう伝わってきて、この先の関係の行方が楽しみです。素敵なお話をありがとうございます!