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ソファの端と端。
でも、いつもと違う顔つきのなるせは、じっくりとらっだぁを見ていた。
(ぽつり)
「らっだぁ?ちょっと…こっち、来て?」
(スマホいじりながら)
「んー今忙しいから、 後でいい?」
「………じゃあもういい、俺が行く」
ほんの数秒で、すぐ隣。
少しだけ躊躇って、でも、指先でらっだぁの服をつまんだ。
「んー?」
「なんでさ、俺が寂しいときに限って、そういう態度なん…お前?」
らっだぁは顔だけ向けて、
「え〜? そんなことないでしょ〜笑」
って気のない返事。
でも、なるせの目は、もう捉えて離さなかった。
手を伸ばして、らっだぁの頬に触れ、 そっと――唇を重ねる。
ほんの一瞬。
柔らかく、淡く。けど確かに、本気のキスだった。
……なのに。
らっだぁは何も言わなかった。
目も合わせなかった。
ただ、少しだけ眉を上げて、すぐにスマホに視線を戻した。
「んー、今の何?」
その言葉が、胸の奥にじんと刺さる。
ほんとは笑って流せたらよかった。
でも――無理だった。
(ぽつんと)
「……そっか、びびってたの、俺だけ…か」
声は小さくて、震えてた。
でも、それでも強がって、顔をそらした。
…らっだぁの表情なんか、もう見たくなかったから。
「…なんで……何も言ってくれねぇの……」
吐き捨てるように放った小さな声には、やはり返事は無くて。
なるせは、
ソファから立ち上がり、そっとその場を離れた。
……だって、泣きそうな顔を、見られたくなかったから。
その夜。一緒にご飯を食べた後。
部屋には、冷たいほど静かな時間が流れてた。
スマホをいじるらっだぁ。
隣には、特に何かするわけでもなく、ただソファに座るなるせ。
さっきから5分、10分──
言葉は、ほとんど交わされてない。
「……」
それでも、なるせは何度も横を見ては、軽くため息を落とす。
それなのに、らっだぁは、 ゲームの通知を確認しては、 「あーこれか」なんて呟くばかりで。
(ちょっとぐらい、目、合わしてくれればいいのに──)
でも、視線も、声も、向けてくれない。
ついに、なるせの中で何かが限界にきた。
(小さく)
「……いても、俺のこと、見てくれんのやったらさ……」
声が震える。
「……おらんのと、 一緒やん……」
その言葉に、ようやくらっだぁの手が止まった。
「……なるせ?」
「…やっぱ、おれに…興味ないんだ……」
そう言ってなるせは目を伏せる。
寂しいって言わない。
構ってって言わない。
でも、
「こっち見てくれないの、こんなに苦しい」っていうのは、全部溢れてる。
少しの沈黙のあと──
らっだぁがスマホをゆっくり置いて、なるせの手にそっと触れる。
「ごめん、気づかなかった俺。ごめん。」
「…別に、謝って欲しいわけじゃなぃ……」
そう言いながら、
片手に置かれた手に、なるせは自分の手を重ねた返した。
「ごめん、ちゃんと見る。なるせのこと。
だから……そんな顔しないで?…」
(かすれ声)
「……遅いんよ、気づくん……」
その瞬間、
らっだぁがそっと抱きしめてきた。
もう、強がらなくてよかった。
だからなるせは、小さく、
泣く音がしないように、らっだぁの胸に顔を埋めた。