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コメント
2件
面白かったです
Side 黒
今日は試合だ。毎年夏にある大会の、入り口である予選。つまり大事な局面。
控室で、樹から渡されたメモをしっかりと確認する。これは、作戦が書かれたもの。毎回これをみんなと共有するのだが、よくこんなものを考えるな、と思う。俺だったら、絶対感覚でいってしまう。
そんなリーダーは、やはり必要不可欠だ。
「えちょっと待って、俺のユニフォームの上どこいった?」
大我が声を上げた。まさか忘れたのか、と血の気が引きそうになったところで、冷静な高地の声がたしなめる。
「バックネット。網だから入ってるの見えてんじゃん」
「あ」
みんなで笑い合いながら、着替える。車いすの上でやるメンバーと、ベンチに寝転がるメンバーがいる。
そのベンチに寝転がっている樹が、「あれ…俺のシューズ、どこ入れたっけ?」
またかよ…と呆れる。
動かない両足はベンチからだらりと下がっている。起きる気はさらさらないらしい。
「え、ロッカーの中ないよ」
ロッカーをのぞいた慎太郎が答える。
「えーちょっと待てよ、俺今日サンダルで来ちゃったんだって。高地ずるいなー」
「なんでだよ。俺だって靴履いてみたいわ」
「…ごめん」
真面目に謝る樹に、高地はいつもの笑顔だ。「アハハ笑」
「あーあった! お前、自分の車いすぐらい見ろよ」
樹の普段用の車いすのアンダーネットに入っている靴を見つけた。
「ありがとう北斗、助かった。ちょっとテンパっちゃって」
そんなことを言うなんて、少し珍しい。
時計を見上げると、最初のチームの試合が始まる時間になっていた。
「樹、ちょっと見に行こう」
「何を?」
「今試合してるチーム。技とか盗みに」
と言うと、樹は片頬を上げてにやりと笑った。「わかった」
このチームは、かなり強豪として有名だ。だから十分に手技を盗む価値はある。
スタッフが座るテーブルの脇で、2人車いすを並べてゲームを観戦する。
「やっぱすごいな」
「うん」
その目は真剣そのものだ。俺も前を向き直った。
「よし、みんな円陣組もう」
ジェシーが声を掛けると、みんなが集まってくる。が、少し離れたところにいる樹が動かない。
「樹、ほら円陣」
慎太郎が腕を伸ばしたのに、じっとしている。
「どうした」
高地はそばに寄り、「…緊張してる?」
「……怖い」
小さな声だった。
「どうして?」
「…また前みたいにボロ負けしたらどうしようとか、また怒られたらどうしようとか考えて」
「別に怒られてないじゃん。絶対大丈夫」
俺の言葉も、あまり響かなかったみたい。
「さっきのチーム見たら、もし勝ったらここと対戦するのかな、負けるかもしれないって…」
「そんなのわかんないって。今は、目の前の戦に挑むだけ」
慎太郎が力強く言った。
高地も続く。「そうだよ。だって、失敗は成功のもとだから」
「こないだの失敗は、今日からの成功のためだもんね」
大我もそう笑って、俺は樹へ手を差し出す。
「うん。とりあえず円陣しよ」
樹は輪に加わった。
「じゃあ、今日は樹が『We are』言って」
「え?」
きょとんとしているが、ジェシーは「いいから」と催促する。
「いくよ。……We are…」
「違う違う、いつもの確認は?」
「あ、忘れてた笑。車いすオッケーね? ちゃんと飲み物飲んだ? 準備いい?」
「あーちょっと待って、水飲みたい」
大我が水筒を取り出す。
「なんだよ笑」
たまにぐだぐだになるのも、俺ららしい感じだ。
「いいね、いくよ? We are…」
「あっもうちょっとrを巻いて」
「急に発音指導するなよ笑。今度こそいくぞ」
一呼吸置き、みんなを見据えて、
「We are…」
6人「SixTONES!!!!!!」
終わり
完結