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3匹は、夜を迎える。そこに、ピークが外出先から帰って来た。
大きな紙袋を抱えている。
袋の中身をテーブルに置いていく。
1本のボトル。やっと手に入った「Black Cairn 30」(ブラック・ケアン30年)。今や裏社会のオークションでしか見つからない、30年物のスコッチウイスキー。
ピークが酒を買いに行く行き付けの、人の良い酒屋店主とは、たわいない会話もする。暫く前にその、気の良い店主から、珍しいもんが手に入ったから、あんた用に取り置いて置く、と言っていた事を思い出して酒屋に行ったら、幻のブラック・ケアン30、だった訳だ。
真っ黒のラベルに白の一本線だけ。スモーキー、オイリー、そして焦げた木炭の香り。30年寝かせた深いコクの逸品を今日、味わう事が出来る。
ピークは珍しく浮かれた気分になり、その後も買い物を楽しむ。この街の表通りにある高級百貨店で、BK30に合いそうなアテを物色する。
「へへっ、こりゃ目移りするなぁ!」
銃や爆弾を選ぶより、楽しそうに迷ってやがる…………
BK30の味を想像しながら選んだアテは、Durness Jerky(ダーネス・ジャーキー)。沿岸地域であるダーネスで作られた鹿肉ジャーキー。ピートで燻されていて、スコッチと同じスモーキーな香りが酒を進ませる。
そしてもう1品は、Black Isle Smoked Oysters(ブラックアイル・スモークド・オイスター)。缶詰牡蠣である。オーク樽チップで強く燻してあり、一粒で口いっぱいに海の香り、スモークと塩味が広がる。
さてさて、自分だけが楽しんではいけない。
あいつらが居てくれたからこその勝利である。
先ずは鮮魚専門店で、新鮮な魚を求める。
Prime Tuna(プライム・ツナ)。味方の國から直送される生の本マグロ。専用の冷凍カートリッジで運ばれ、切り立ての鮮度を維持。
そしてWild Bonito(ワイルド・ボニート)。味方の國で一本釣りされたカツオをすぐに藁焼き処理。表面は香ばしく、中は新鮮そのまま。主に料亭にしか出回らないが、稀に高級食材店に出回る事がある。あればラッキーの逸品。
買い物は留まる事を知らず別の階に移動して、更に物色をする。お次は、キャットフードだ。
Clawmark Poultry Select(クローマーク・ポルトリーセレクト)。富裕層ペットオーナー御用達の「猫専用高級フード」。放牧鶏の胸肉100%を低温調理してフリーズドライ。
黒い缶に金色の猫の爪痕がトレードマーク。香料や着色料ゼロで、食感はほぐしたての蒸し鶏に近い。
White Rooster Prime(ホワイトルースター・プライム)。
北欧の國で富豪が競うように買い漁る超プレミア。特定の農園で育てられた白鶏のササミだけを使用。
スチーム調理で仕上げた後に真空パック、1週間以内出荷。開けるとふわっと鶏スープの香りが立ち、猫が瞬時に集まる大人気の高級キャットフードだ。
全てをテーブルに出し終わった後、3匹用に皿を用意する。
本マグロ、カツオで1プレート。キャットフードをハーフで入れてもう1皿。それを3セットだ。
「贅沢三昧だが、たまには良いだろ?
今夜は戦勝祝いだ。一緒に祝おう。」
ピークは缶詰とジャーキーを出して、自身のグラスを用意する。
ノラは無言で近づき、ひと嗅ぎして静かに食べ始める。ひたすら武士のように無言で食す。
ミケは淡々と静かに……一番味わってる。時折ピークを見上げる。
タマは待ちきれず、皿を前足でカンカン叩きながら喉を鳴らした。魚を鼻にくっつけるくらい前のめりになりながら嬉しそうに食べている。
ささやかな、勝利の宴。
「俺達のこれからに、乾杯だ…………」
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「The cat’s pajamas」
1920年代のアメリカで流行したスラングで、「最高に素晴らしい人や物」を意味する褒め言葉。
意味:直訳すると「猫のパジャマ」となり意味が通らないが、当時の猫がおしゃれな女性を指すスラングであり、かつパジャマが画期的なファッションであったことから、この表現が生まれた。
例:「Listening to her old songs again is the cat’s pajamas.」(彼女の懐かしい歌声を聞けるなんて感激です。)
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