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いつの間にか眠ってしまって、朝の陽射しで目を覚ます。
あまりにも幸せな眠りについたあとの、目覚めはまだ夢心地でフワフワしている。
少しずつ目を開けて辺りを見回すと、目の前で寝ぼけ眼の私を優しく見つめながらすぐ隣で頬杖ついてる樹の姿。
日差しを背に優しく見つめる姿は、寝起きのはずなのに寝ぼけ眼の私の意識でもわかるほどに、いつもと違うまた見たことのない綺麗なカッコよさで。
「おはよ。透子」
そして優しく声をかけてくる。
その優しい笑顔も声も、寝起きには甘すぎて、やっぱり夢なのか現実なのかわからなくなる。
まだ夢の中・・? それとも現実・・・?
こんな近くでこんなに見つめられて、夢か現実かわからなくても素直にそんなシチュエーションにキュンとしてしまう。
「お、おはよ・・」
どちらかわからないままでも、とりあえず返事をする。
「よく寝てたね」
「え・・そんなに・・? ごめん」
「オレは全然構わないけど。今日仕事も休みだし。オレにしたら眠ってる透子ずっとこうやって見つめられたから満足だったし」
そしてまたいつものように優しい意地悪めいた言葉を呟く樹。
「私だけ見られるのとかずるい。私も樹の寝顔見たかった」
「何その可愛い返し。そんなのこれからいくらでも眺めさせてあげる」
さらっとこれから先の事を約束してくれてるみたいで嬉しくなる。
「なら許す」
「透子、時間まだ今日大丈夫?」
「あっ、うん。特に今日は予定入れてなかったから」
「ならよかった。まだ朝早いし、もうちょっとゆっくりしていきたいなと思って、ルームサービスでモーニング頼んどいた」
「そうなんだ!ありがとう。私そんなのホテルで食べたことない」
「昨日はホントなら透子の誕生日ゆっくりお祝いしてあげたかったんだけど、結局あの時間からだったし、ちゃんとしてあげられなかったから」
「そんなの全然いいよ。元はといえば私が素直になれてなかっただけだし・・・。これだけしてもらえただけでも充分嬉しい」
「そうさせたのもオレに原因あったワケだしさ。何よりオレが悔しいだけ」
「なんで樹が」
「だってホントならさ、透子一日中独り占め出来て、ひたすら甘やかして喜ばせて好きにさせていい日だったワケだし」
「ちょっと待って。別にそんな好き放題していい日ではないよ?」
「えっ?オレが透子めちゃくちゃに好き放題していい日なんじゃなかったっけ?」
「一日中喜ばせてくれるのは嬉しいけどそんな日ではないよ・・。しかもそれ言うならどっちかって言えば樹の誕生日だよね」
「なら・・・。オレの誕生日には透子めちゃくちゃにしていい?」
「その言い方・・・。なんかヤだ・・・」
冗談のような本気のような。
だけどやっぱりドキッとさせるような言葉をこの人は何気なく言う。
「っていうか、透子の誕生日にホントはオレがめちゃくちゃ幸せにしてやりたかった」
そして、もっとキュンとするようなことを更に言う。
「大丈夫。すごく幸せだから」
私は今うやって樹と一緒にいれてプレゼントまでちゃんともらった。
それだけで充分幸せだ。
「まっ。オレも今こうやっていれるだけでも幸せだけど」
ほら。ちゃんと樹と気持ちも通じ合ってる。
これだけで充分。
「だから今度は樹の誕生日に私が幸せにしてあげる」
「マジで・・? なら期待しとく」
なぜか少し一瞬驚いた表情をして、そして嬉しそうに樹はそう答えた。
「誕生日。いつ?」
「10月24日」
「了解。じゃあちゃんと覚えとく」
「忘れたらお仕置きね」
「大丈夫。忘れないからお仕置きされない」
「そしたらオレはどっちでも幸せ」
「幸せの意味違うから」
私が今回幸せをもらった分、もっと私が樹に幸せをあげる。
樹と一緒にいられたら、私はきっとずっと幸せ。
そしてしばらくして、ルームサービスのモーニングが運ばれる。
目の前に並ぶ豪華で美味しそうなモーニングがテーブルいっばいに並ぶ。
「すっごい」
「どうぞ。お姫様」
モーニングが並べてあるテーブルの前の椅子を引いて、樹がそんな言葉と共に
エスコートしてくれる。
「お姫様って歳じゃないけど・・。でもホントこんなシチュエーション。お姫様みたいだね」
「オレには透子はいつでもお姫様だけど?」
抵抗なくスマートに言えるカッコよすぎるうちの王子様。
「なら、私にとっても樹は王子様、だね」
「当然。目の前のお姫様をこれからも幸せに出来るのはオレだけだからね」
「頼もしいね」
「大丈夫。いつか絶対迎えに行くから。信じて待ってて」
「何それ(笑)」
「いいから。お姫様はどんなことがあっても王子の迎え待ってればいいから。OK?」
「わかった」
この年齢でそんな少女漫画みたいな世界味わえるなんて思っていなかったけど。
でも樹は不思議となぜかそんな風に思わせてくれる。
今一緒にいれるだけで、特にこの先のことなんて考えてないけれど。
でも。
樹のその言葉に特に深い意味はないとしても。
でも。
この先も一緒にいたいと、いつかホントにそんなことが実現してほしいと。
今はほんの少しそんな期待をしたくなる。
こんな風に二人で朝食を毎日一緒に食べて。
普通の何気ない幸せを感じることが出来る、そんな毎日を。
樹となら叶えていきたいと、そう思う。