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「そういえば、昨日。ちょっと動揺した」
「ん?何が」
すると樹が急にそう呟く。
「パーティー会場に来た透子があまりに綺麗だったから」
「はっ!? ゴホッゴホッ。急に、何言い出すかと思えば」
いきなりそんなことを言われて思わずむせる。
「やっぱ格別だよね。透子のドレス姿」
「いや、そんなことないよ・・別に」
だから褒められるのは慣れてないんだってば。
でも、樹の気持ちを少しでも引き留めたくて、また自分を見てほしくて、本当はそれなりに頑張ったのは確か。
「でも・・・樹に気付いてほしかったから・・。樹を振り向かせたかった・・」
「は?? ちょっと待って・・・」
なぜか樹は顔を隠して戸惑って焦っている。
「樹・・?何? どしたの!? 私なんか変なこと言った!?」
「それ、透子が言うの反則だから」
「えっ、何それ。意味わかんない」
「はぁ~。オレが透子に気付かないはずないでしょ?どれだけオレが透子に夢中だと思ってるの?」
「そんなの樹見ててもわかんないし・・・」
「オレ振り向かせたいとか・・・。オレどこまで好きにさせたら気が済むの?」
また樹の言葉は私をこんなにもドキドキさせる。
「っていうか、あんな綺麗な姿、他の男に見せたくない」
「そ、そんなこと言われても・・・」
「だから、オレが透子守る為に、これからオレがちゃんと隣でエスコートしないと」
「そうだよ・・。樹が一緒にいてくれたら問題ないじゃん」
「そうだね。他の男に見せたくはないけど、オレの自慢の彼女だって見せびらかしはしたいから」
朝からどこまでこの人はこんなにも胸を高鳴らせるんだろう。
「樹だって・・」
「ん?何?」
「樹だって、入口で待ってる時、すごくカッコよくて皆樹のこと見てた」
「そっ?まぁオレもそこは自覚なかったけど。透子のことしか頭になかったし」
年上の私がきっと近くにいなければ、もっと若くて綺麗な女性たちが押し寄せて、そんな樹と似合うような人がたくさんいるんだろうけど。
でも。
やっぱりそんな樹を独り占めしたいと思った。
「てか。オレも透子に似合う男になりたくて必死だから」
「充分だよ。私には勿体ないくらい」
樹といるとつい忘れてしまいそうになる。
樹よりもいくつも年齢を重ねていて、その分年の差があるということ。
こんな風にお姫様扱いしてくれるからついその現実を忘れそうになる。
なぜだかこんな私を樹はこうやって特別扱いしてくれるから。
「いや・・・まだまだだよ。透子に釣り合う男になって、透子を幸せに出来るのは・・・」
「私充分幸せだよ?」
「いや。オレがこの先透子をもっと幸せにするから・・・。ずっと幸せに出来るようになるまで、もう少し待ってて?」
その言葉にどこまでの意味があるのかわからないけど。
でも樹の中で何かある気がして。
「わかった。待ってる」
私はそれ以上何も聞かずそう伝えた。
「何があっても絶対待ってて」
「わかった。何があっても絶対」
そう答えると、樹は嬉しそうに微笑んだ。
きっと、樹は、まだまだ私に何かを隠していて、知らない姿があるのかもしれないけれど。
でも。
今は、今こうやって伝えてくれる言葉が嘘じゃないと思えるから。
樹の抱えてる何かをいつかわかってあげられる自分でいれるように。
年上の私が何かあっても樹を支えてあげられるように。
私自身も強くなって、樹を信じて、その時を待つだけ。
そして、二人でマンションに帰って来て、お互いの部屋の前。
「あっ、そうだ透子」
「何?」
部屋に入ろうと鍵を開けていたら、樹が何かを思い出して声をかけてきた。
「今度の新しいプロジェクトでREIジュエリーと一緒にやるって言ってたの覚えてる?」
「うん。もちろん」
「その新しいブランドの関係者紹介しとこうかなと思って。明日会社に挨拶しに来たいって言ってるんだけど、どっかで時間ある?」
「あぁ。うん。午後からならいつでも大丈夫だよ」
「なら。14時にいつもの会議室でもいいかな?」
「了解。じゃあ明日14時に行くね」
「じゃあ。今日はゆっくりこのあと休んで」
「樹もね」
「じゃあ」
ホテルから戻って来て、お互いここからは自分の時間。
ゆっくり休んだらまた明日から仕事。
だけどその仕事場ではまた樹に会える。
今はその幸せが頑張れる力になる。
これからは今までの自分とは違う。
樹が自分を好きでいてくれて、自分の想いもこれからはちゃんと受け止めてくれる。
これからはずっと一緒にいられる。
その幸せをこれからはちゃんと一日一日大切にしていこう。
ずっとこの幸せが続くように願って・・・。