幼馴染兼親友に今日は交渉しなくてはいけない。
紅の為に紅に話をつけるのは文面にすると酷く奇妙だが事実である。
本音を言えば葵と一緒に居たいのもある。
だけど、俺も葵も紅と藤花ちゃんがくっついてからじゃないと安心出来ないんだ。
「ふぅー…」
一呼吸置いてスマホの液晶に触れる。過去に割ってしまったこともある画面には、馴染みのある名前が映し出されていた。
「…よし!」
意を決して端の送信ボタンに指を置く。
先程までの躊躇いがまるでなかったかのように紅にメッセージが送信される。
今更すぎる緊張にコーヒーみたいな苦い笑いが溢れてきたのはどうしてだろうか。
「なぁ、ちょっと良いか?」
送れば一分もせずに既読がついた。
「どうした」
「今度お泊まり会しないか?青春四人組で!」
今度は既読が一瞬だったのに返信ガ遅い。恥ずかしがっているのだろうか。
「お泊まり?青春四人組で?藤花と一緒?」
「そうだぞ」
「心臓がちょっとヤバイ」
紅らしいなと少し口角が上がる。恋する少年にとってお泊まり会がどれだけヤバイかは俺も分かっているつもりだ。
「藤花ちゃんと仲良く出来るチャンス、お前は逃さないだろ?」
「まぁ…そうだけど」
「あと泊まる家は消去法で紅だぞ」
「それ最初に言ってよ… 」
女の子の家に泊まるのは色々な意味で不味いし、俺ん家は4人には狭すぎる。
「と、言う訳で泊まる許可求む」
「うーん…まぁ…家族に聞いてからじゃないと」
「随分と消極的だな?」
ここは少し煽ってでもお泊まり会を勝ち取らなくてはいけない…紅と藤花の為にも。ついでに俺。
「そんなわけ無いだろ!藤花とお泊まり会したいに決まってる!」
「よく言った!お前は決めたら最後までやり切る男何だから自信持て!」
「言われなくても!」
キタコレ!紅を乗り気にさせることに成功した俺はようやく安堵して壁に身を預けた。
約束を取り付けられて一安心だ。
紅の笑顔が増えていくことを、俺は心の底かは嬉しく思っいる。
今も昔も不安な要素はあるが支えるのが幼馴染兼親友の仕事だろ?
寝っ転がってふと、天井を見上げると一つの思いが頭に過った。
───紅の姉ちゃん元気にしてるかな。