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「なんで?」
2人だけの静かな病室に気まずい空気が流れる。
「…俺さ,いや,俺が嫌われてるの知ってんだよ。だから__」
「だからじゃないよ!」
「だからって榎煉が死んでいいことにはならない。嫌われていたとしても,明日に向かって生きなきゃいけない。
私も変われたから,榎煉だってきっと変われる。怖かったら私が寄り添ってあげる。だから,私が寄り添ってあげる。」
榎煉はかなり驚いていた,私自身,人の事であれこれいう人じゃない。どちらかと言われたら言われる方じゃないかな。
そんな私が静かで,誰かほかの人が聞こえるような場所ではっきりと物事を言った。こうやって私は変わっている。どんな些細なことでも人は変わることができる。
「治療,受けたとしても卒業式になるんだよ。最後に行けない。ちょっと悲しいじゃん。」
「…分かった。私がどうにかして,榎煉も卒業式できるようにする!」
「…は?」
そして,私は学校へ走った。
「みんな!」
幸い,まだ休み時間だったから気まずい空気ではなかった。
「え,芽依?なんで?早退したんじゃないの?」
「ちょっと聞いて。」
そして,榎煉の事をクラスメートに全て話した。
「芽依ちゃん、それ本気?」
「本気だよ!」
「やっぱあいつに何かされた?脅されたりしたんじゃないの?」
「違う!」
私はとっさに大声を出していた。自分だってどうしてこんなにむきになっているのか分からない。榎煉が嫌ならこんなことしなくていいのに。
呆然として教室に立っていると先生が来た。
「鈴木さん…?今来たんですか?」
「先生,お願いがあります。」
ー数時間後ー
ノックの音が静かな病院に響き渡る。
「榎煉,入るよ。」
私は一人,榎煉のいる病室に入った。
「どうした…って、は??」
「見て。」
折り紙で作った花束とタブレットを榎煉に渡した。
『黒川さん、私は貴方を誤解していました。学級代表として恥ずかしいです。貴方は一人じゃない。鈴木さんが教えてくれたから。私達の事を許せないのは知ってる。だけど、死のうとするのは違うと思うの。一人で抱え込まないで。
学級代表、三島マリア。』
「何、これ。」
「いいから続き見て。」
『黒川さん!黒川さんは凄い怖いヤンキーだなって思ってた!けど、けど!芽依と居る時、凄く楽しそうにしてた!そんな芽依と会えなくなってもいいの!?私が言うことじゃないけど…けど!諦めるのは無しだよ!
…あ、出席番号26番、柊すいわ!』
私がしたこと。それは本音で榎煉に言いたいことを言う。その映像をタブレットで撮影した。この折り紙の花束も、合間に折ったもの。
『黒川さんは、本当に優秀な生徒よ。貴方に寄り添えなくて、ごめんなさいね。』
『最後に、…榎煉。何があっても、生きないといけないよ。諦めるのは無し。生きてるから私は榎煉に出会えた。これから何が起きるかわかんないけど、…生きてみようよ。愛してるよ、かれん。
鈴木芽依。』
「まじ…なんなんだよ、これ。」
「私、頑張ったんだからね。ほら、手術受けよ。」
榎煉の顔が赤くなっていた。
私はもう、何も言わない。榎煉自身でこれからのことを考えて欲しいから。私が口出すことじゃない。
「馬鹿みたいじゃねぇか。手術受けないって言って、結局、意地張ってるみたいで。」
「じゃあ…?」
「受けてやるよ!恥ずかしいから。」
榎煉は顔と耳を真っ赤にしながらそう断言した。