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私
・ルヴーシュ。ルヴーシュ王国の王女よ! 私は、今、王都を出て、隣国のユーレスタ王国に向かって旅をしている途中なのだわ。……え? なんでそんな事になっているのかって? それはね、私のお父様とお母様に原因があるのだわ。
私のお父様の名前はアルフォンス=ヴィノーラ=ドリュアス。通称『緑の賢者』と呼ばれるくらい賢くて偉い人らしいのだけれど……そのせいなのか、ちょっと変わったところがあって――。
「お前は、いずれこの国の王となる身なのだぞ!」とか、「女だからといって学問を疎かにしてはいかん!」とか言って、いつも私を部屋に閉じ込めようとするのよね。ひどいでしょう!? 私が一体何をしたというの? ただ自由に遊びたいだけなのに!! でも、いくら文句を言ったところで、お父様はまったく聞く耳を持ってくれないし……。
もう嫌になって家出してきたのだけど、さすがに一人じゃ心細いじゃない? それで護衛の騎士の一人を連れてきたわけなんだけど……それがいけなかったみたい。
騎士の名前? えっと確か――。
「あぁ、そういえば申し遅れましたが、私の名前はジェイクと言いまして、あなたの身の回りの世話を仰せつかっている者です」
「……?」
「ああ、すみません。つまりですね、私がこれから先ずっとお傍にいるということですよ」
「―――ッ!」
声なき叫びを上げながら、少年は目を見開いた。
その瞳には困惑の色がありありと浮かんでいて、自分が今どんな状況に置かれているのか理解できていないようだ。
少年は慌てて周囲を確認する。しかし目に映るものは何もなく、ただ暗闇が広がっているだけ。自分の体さえ見えない闇の中で、一体どうやって周囲の状況を把握すれば良いのか。そう考えると同時に、少年はある違和感を覚えた。
(あれ……? 声が出ない?)
喉元に手を当てながら少年は戸惑う。何故自分が今この場所にいるのか思い出そうとするが、その答えは全く浮かんではこなかった。
ただ分かる事は一つ――自分はもう既に死んでしまったのだという事だけだった。
何も出来ないまま呆然と立ち尽くしていると、突然目の前に小さな光が灯された。それはぼんやりとした淡い光の玉だったが、周囲を照らし出すには十分な明るさを持っていた。
「大丈夫ですか?」
不意に背後から聞こえてきた透き通るような美しい女性の声に驚き、反射的に振り返ると、そこに一人の女性が立っていた。女性は心配そうな表情を浮かべたまま、こちらを見つめている。
年齢は二十代後半くらいだろうか? 腰まで届く黒髪と切れ長の目が特徴の女性。その雰囲気にはどこか妖艶さがあった。しかし服装はなぜかセーラー服姿なのだ。
(なんなんだこの女……)
突然目の前に現れた謎めいた女性を前にして、真也はただ呆然と立ち尽くしていた。
***
時間はほんの数分ほど遡る——。
真也はいつものように九重院学園へと登校し、教室に入って自分の席に着いたところであった。
(今日はちょっと遅くなったけど、間に合ったかな