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Secret Lovers

4 - Love Trick〈Pink×Black〉

♥

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2023年03月28日

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Side桃


楽屋の扉を開けると、途端にガヤガヤとした話し声に包まれる。でもこれでも4人しかいない。

「あ、大我おはよう」

「きょもおはよ!」

俺に気づいたメンバーが挨拶してくる。

「おはよー」と返し、荷物を置く。

「でさー、ギター弾いて一緒に歌ってくれたんだけど、めちゃくちゃ楽しかった!」

何やらジェシーが楽しげに報告している。きっと誰かアーティストのお家にでもお邪魔したのだろう。

椅子に座ろうとして、ふと立ち止まる。

3人掛けのソファーに座っている北斗の右隣が、空いている。いつもなら樹やジェシーが隣にいて話しているけれど、今は左の3人と話している。

そこにしようか、と思った。

今まで北斗との距離感をつかめなかったせいか、こういう場所でも隣同士というのがあまりなかった。

なのに今それを欲しているわけは、俺が彼のことを好きだから。

いつから、と問われればわからない。出会った時からかもしれない。

目の前でメンバーと談笑している北斗の隣に座りたいのもそういう理由。

だがこの俺が急に近づいてもびっくりするだろう。

そんな思考の沼にはまっていると、背後からの声で現実に引き戻された。

「何突っ立ってるの、きょも」

びっくりして振り返ると、樹がいた。一番遅いのはいつものことだ。

「あっ、いや、ちょっとね、考え事」

珍しく慌てる俺を、慎太郎も訝る。

「どうした?」

何でもないよ、と答えて一人掛けのソファーに腰を落ち着けた。きっと北斗の隣には樹が座る。

そして着替えやセットを済ませた後はいつものように6人でお喋りをしていた。

この時間が好きだ。

でも北斗と二人だけの時間を過ごしたい、それが最近の願い。

いつ叶えられるかはわからないけれど。


時計が収録が始まる時刻を指した。

みんなは立ち上がり、部屋を出ようとする。

と、「京本」

後ろから声を掛けられる。

5人の中でこの呼び方をするのは、ただ一人しかいない。しかも俺の意中の人。

振り向けば、涼しい顔をした北斗が立っている。いや、普段の表情だ。

北斗は俺の背中に手を伸ばした。

触れられる感触を感じ、にわかに心拍数が上がる。まさに「ドクン」という音が聞こえた気がした。

「ゴミ、ついてた」

その場で手を払う。

ありがとう、と言うまでに数秒かかった。その声も上ずっていたかもしれない。

北斗は微笑み、「早く行こ」と歩き出した。

その笑みは今まで見てきたメンバーの北斗と一緒なのに、なぜか別人のようで、もっと輝いて見えた。


続く

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