テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
wrwrdとmzybの曲パロを書きたい(?)
夏の終わり、グルッペンは久しぶりに地元へ戻ってきた。
駅前の商店街は、昔と変わらず、少しだけ色褪せていた。
「……懐かしいな」
そう呟いた声は、誰にも届かない。
スマホの画面には、トントンの名前。送信済みのメッセージが、画面の下に残っていた。
──会えるか?
その簡単な一言を送るために、どれだけ悩んだだろうか。
──もちろん。
グルッペンは、昔ふたりでよく通った喫茶店へ向かった。
扉を開けると、そこにいたのは、変わらないトントンだった。
「……お前、来ると思ってた」
「なんでわかるんだよ」
「お前、昔からわかりやすいから」
ふたりは、何も言わずに席についた。
アイスコーヒーとレモンティー。注文も、昔と同じだった。
「……元気だったか?」
「まあな。お前は?」
「生きてるよ」
その言葉に、トントンは少しだけ笑った。
「それなら、よかった」
夕暮れの街を、ふたりは並んで歩いた。
昔の通学路。今はもう、制服姿の自分たちはいない。
「……あの頃さ」
「うん」
「お前のこと、好きだったよ」
トントンは、立ち止まった。
斜陽が、ふたりの影を長く伸ばしていた。
「……知ってたよ」
「マジかよ」
「お前、わかりやすいから」
ふたりは、少しだけ笑った。
その笑いは、少し儚さを含んでいた。
「でも、言わなかったな」
「言えなかったよ。お前が、俺のことをどう思ってるか、怖くて」
「俺も、言えなかった」
沈黙が落ちる。
蝉の声は、もう聞こえない。代わりに、風の音だけが耳に残る。
「……あの夏、俺たち、咲けなかったな」
「咲けなかったけど、枯れてもいない」
トントンの言葉に、グルッペンは目を伏せた。
「今さら、咲けると思うか?」
「わかんない。でも、こうして会えたなら、少しくらいは……」
その言葉に、グルッペンは少しだけ笑った。
「お前、ずるいな」
「お前もな」
ふたりの間に、風が吹いた。
それは、過ぎ去った季節の中で、言えなかった言葉がようやく芽吹くような、そんな夜だった。
帰り際、トントンは一枚の紙を差し出した。
「……これ、昔書いたやつ。お前に渡せなかった」
グルッペンは、それを受け取った。
そこには、拙い文字でこう書かれていた。
──好きだった。
──でも、言えなかった。
──お前が笑ってくれるなら、それでいいと思ってた。
グルッペンは、何も言えなかった。
ただ、紙を胸にしまい、トントンの顔を見た。
「……俺も、同じだったよ」
ふたりは、言葉の代わりに、静かに笑った。
斜陽の街で、ふたりの影が重なった。
どうでしたでしょうか!
ヨルシカさんが大好きで書いてみました…
感想などあればコメントしてくれたら嬉しいです!