「何かがマズイって感じたら、周りの環境がマズいんじゃなくって、自分の思い込みや考えがマズイってことに気付くまでに、約三年もかかったよ。これは俺の実際の経験から言ってる、本だとか人の言ったこととか、そういうことじゃないんだ」
プナールの生気のない瞳、猫背の背中、ツヤのない髪。教室の窓辺で遠くの城壁を眺めながら、あんなの越えるのはどうせ無理だと力なく呟いていた頃の自分を思い出す。
「ある日、城壁の向こうにいた先生はスピーチの授業で、手足を動かさないようにと言った。意味のない動きを封じるためだった。それから今度は、手足を動かすようにと言い出した。意味のある動きを加えるためだった。無意味に時間を費やせば無意味な人生が作られて、意味のある動きからは意味のある人生が作られる、その意味は、今ならばよくわかる。たぶん今は、何を言ってるかさっぱり分らないだろうけど」
プナールは首を縦に振った。
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