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あれから毎日、日記を読み続けた。
あろうことかあの日記は、日を追うごとにページが増えていった。
俺の体調もあまりよくなかった。
あの事故以降、後遺症で記憶を失い、暫く眠ったままだったからか、長い距離を歩くことが困難になった。
医者からは一時的なものと言われたが、少し良くなるまでは入院だそうだ。
そして最近、俺は屋上へ通うようになった。
何故か、空を見ると心があたたまるんだ。
そこで、ある女の子に出会った。
金髪でショートカットの女の子。
初めて彼女に会ったとき、彼女は俺を見て驚いた顔をした。
理由はまだ聞けていないし、聞くつもりもない。
きっと、彼女の知り合いに似てたとかそういうものだろう。
彼女と会って結構経つが、彼女の名前は知らないし、俺は彼女の独り言を聞くだけの関係性だ。
今日も屋上へ向かうと、彼女はいた。
「昨日ぶりだね。
今日はね、独り言じゃない。
ある少女の話をしようと思うの。
可哀想な少女のお話。」
いつもは独り言だけの彼女が物語を語るなんて想像していなかった俺は、驚きつつも静かに話を聞いた。
「少女はね、両親から愛されて育ったの。
とても大事に、大事に育てられてね、
優しい両親はね、近所で評判のおしどり夫婦だった。
少女は両親が大好きだった。
もちろん、両親も少女が大好きだった。
少女が5歳の頃、歳が離れた妹が生まれた。
それはそれは出来のいい妹でね。
両親の愛情は、妹に傾き始めた。
そんな妹は、体が弱く、体調を崩しやすかった。
両親は、妹を愛し、少女を少しずつ煙たがった。
ずっと愛されて育ってきた少女は、両親に気に入られるよう必死に取り繕った。
いつか、両親が自分をまた見てくれる時が来る。
頑張ればいつか報われる。
少女が中学に上がった頃、だから妹が小学校に入った頃かな?
妹が突然病気を患った。
両親は完全に妹につきっきりになった。
少女は頑張っても認めてくれない両親に見切りをつけ、友人に寂しさを埋めてもらおうと考えた。
でも、少女は今まで、両親に愛される為に勉強ばかりを頑張ってきたせいで、友人の作り方、人からの気に入られ方など知らなかった。
でも、少女は寂しかった。
寂しくて寂しくて、仕方がなかった。
そんな少女は、新しい自分を作り上げた。
明るくて、優しくて、頼りになる新しい自分を。
少女の周りには人が集まってきた。
少女は次第に両親の事など気にしなくなっていった。
どんどん、少女に友人が増えていった。
そして、少女が高校に上がった頃、同じクラスの男の子に恋をした。
無愛想な男の子だったけど、そんな彼を選んだのはきっと…
昔の自分にそっくりだったから、かな?」
昔を懐かしみながら、悲しそうに話す彼女に興味が湧いた。
『君は、その少女とどういう関係だったの?』