残像を吸収し終えたコユキが蹲(うずくま)る善悪とアスタロトに近付きながら言葉を発する。
「んもう、誰が大豚よっ! 失礼しちゃうわねぇ! んでアスタ、目は覚めたのぉ? アンタ本当にワイン控えなさいよぉ! こんな感じじゃぁもろにアル中じゃないのよぉ? 大丈夫なのん? アンタに落とす善悪の拳骨だってもうすぐ無くなっちゃうんだからね! 確りしなさいよぉ、もうっ!」
同じく二人に近づきながらバアルがコユキに答える。
「ワインとかじゃないと思うよ? アスタって昔からこんな物だったと思うけどね」
「むむむっ」
「なるほどね、にしてもアンタ等、眠らされてて知らないでしょうけどね、ここを守っていたロセウムってのとロサエムってピンクの悪魔って弱かったのよぉー、ちょー手加減した散弾(ショット)で魔核に戻っちゃったのよん、信じられないほどの脆弱性を発揮しまくっていたわ…… 魔将って一体何なのかな?」
少し離れて二人の元魔将だった魔核を拾っていたラマシュトゥが戻りながら同意を返す。
「本当に…… レッサーでもあんなに弱い悪魔なんて見たことも聞いたこともありませんわ! 強靭治癒(エニシァシ)の八枚掛けですわよ? 小一女子でも『誰の挑戦でも受けるっ!』位には強くなりますわ、それなのにあの二人ったらまるでウスバカゲロウのような脆(もろ)さでしたわ」
コユキが善悪に立ち上がるように促しながら言う。
「んね、儚かったわね、儚いと言えば皆で楽しみに見てた源平のアニメが終わっちゃったじゃない、あれどんなに待っても第二シーズンって無いわけでしょ? んでも、実話ベースであれほど見事な盛者必衰(しょうじゃひっすい)をアニメで見させられたらさぁ、何とか続いてくれないかなって無理を承知で思っちゃうのよね…… んまあ、強引に作っても耳なし芳一(ほういち)辺りになっちゃうんだろうけどね…… 空しいわね……」
バアルがハッとした顔を浮かべて言った。
「ああ思い出した、ラマシュトゥが乱入してくる直前にさ、『相反(アンチストロフィ)』を掛けていたんだったよ! バフやデバフの効果を真逆にするスキルをね、ほら、あの二人って薄かったけどピンクのオーラだったでしょ? だから妾思ったんだよ、ラマシュトゥと同じタイプなんじゃないかなってさ! んで予防的に張っておいたんだけどね、図に当たったって事なんだね、良かったよ!」
「ああーそう言う事なのですのね…… 多分アタシのバフがデバフに変わった以外にも自分達で掛けた物も有ったんでしょうねぇー、そう言う事かぁー」
「そうでござろうなぁ、ところでアスタ、リフレクションを解除したら? もうここには敵がいないことでもあるし、疲れるでござろ? ほらほら、仲間ばっかりでござるよ? 解除解除、でござるよ♪」
アスタロトはそっぽを向きながら答える。
「やだよ、絶対解除しないぞっ!」
「むっ! むむ、それって一生って事でござるかぁ?」
「うん、少なくとも善悪の前では我、絶対解除しないっ! 絶っ対っ!」
「むむむぅっ……」
どうやら脳筋と言われるアスタロトであったが、善悪和尚よりは僅(わず)かながら学習能力に長けていた様であった、頼もしい。
善悪やコユキを先行させた後、表で略奪を続けていた面々が次々と合流する中、レグバのリーダー、ロットがやや(通常の倍位)大きめな頭を傾げながら言う。
「ん? 魔核が無傷なんだったら魔力を送り込めば復活するんじゃないか? 昔の悪魔達、ティターンやギガント共は良くそうやっていたぞ? 仲間の復活とか……」
「え、そうなの?」
「マジか、我知らなかったぞそんなの、だったらもっと早くネヴィラス復活させられたなぁ、ああ、我もだな」
「本当だよ、そんな事が可能だったんだね…… なら、茶糖家の皆に迷惑掛けることも無かったな…… 妾、反省だよ……」
最近、見た目の可愛らしさからリエやリョウコに何かと構って貰っているバアルも知らなかった様であり反省一入(ひとしお)の様だ。
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