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 自身に憑依していた強大な力を失った二匹であったが、魔王の残滓(ざんし)とでも言うべき力は失われる事無く、地球上に増え続けていった魔力を浴び続ける事で、魔獣やモンスターになるのではなくかつて共に体を共有していた悪魔に近付いて行ったのだ。


 具体的にはヘロンはストラスと同様に、様々な植物が与える影響を瞬時に理解する能力と、宝石や鉱物を見つけ出す力を手に入れ、ドラゴは対象の言葉を奪う、話す事を出来なくさせる能力と、死者と会話する能力をリブラから受け継いでいたのである。


 二匹は前述の魔王二柱に倣(なら)い、鳥とトンボの王として君臨していた。

 勿論、魔王と共に空へ旅立った鳥型とトンボ型の悪魔達ではなく、普通の生き物としての鳥とトンボではあったが……


 両者が少しづつ悪魔に近付き始めた時、強大な悪魔であるスカンダとガネーシャを従えたリエに出会う。

 真なる聖女の妹だった彼女は、世界中を巡ってモンスターを退治しつつ、依り代だった経験を持つ生き物を集め、極北の地で地球を救う為様々な研究をしていると二匹に語って聞かせた。


 それまで特段何かをやっていた訳ではなかった二匹は参加を快諾し、ドラゴはリエ達と共に世界中を文字通り飛び回り、ヘロンは配下の鳥を率いて当時この池の前身だった『ペジオの池』の警備の役に着いたのである。

 当時、人間達の時間で言うと二十数年前、壮年に差し掛かっていたペジオは、たった一人この池の周囲で様々な実験を行っていたそうだ。


 近くの集落には様々な種族が寄り集まって、それぞれ協力しながら魔力災害への対応やモンスターとの戦い、多種多様な各種研究を行っていたが、ペジオ一人だけが単独で実験をしていたのには理由があった。

 彼が行っていたのは『キメラ作り』、幾つかの生き物を掛け合わせる事無く合成する事で、全く新しい特技や性質を持った新種の生物を作る、そういった研究と実験を繰り返していたのである。


 あまり自分の事を話したがらないペジオが、何かの時にヘロンに零(こぼ)した言葉はこうだったようである。


『両親が創作関連の仕事をしていたからかも知れない…… な』


 鳥族以外に詳しくなかったヘロンは、そういうものかと聞き流してしまったが……


 一人で作業を行っていた主な理由は、実験をする際に使用していた彼のスキル『混成(コンポジション)』を使えたのが彼だけだった事だが、生来の無口で控えめな性格と孤独を好む性質(たち)も間違いなく関係していたのだろう。


 対するヘロン自身も、元魔王の受け皿であったことに少なくない矜持(きょうじ)を持ち続けていたし、手下の鳥たちと比べ巨大過ぎる体躯になった事で、そこはかとなく孤独感を感じてもいたらしい。


 そんな風に共通する悩みやカルマを感じていたペジオとヘロンは、いつしか交わす言葉こそ少ないながらも友情のような物を感じ始めた、少なくともヘロン自身はそう思っていたそうだ。

堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

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