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「っ!」
そこで目が覚めた。いつも通り、飛び起きるように。
ベッドと小さなクローゼットだけがある質素な俺の部屋に灰色のカーテンからそっと朝日が入り込む。
『典華、魘されてた。大丈夫?』
俺の顔を覗き込むようにしてこの家に住み着いた霊の一人、亜津沙が俺にそう問い掛ける。
『おいおい、大丈夫かよ。お前泣いてんぞ?』
驚きつつも俺の事を心配している、この家に住み着いた霊の一人、晶斗が口をそう言う。
『取り敢えず、ティッシュで涙を拭きな』
なんて事を言いながら簡単にポルターガイスト現象を起こしてティッシュをこっちに運ぶのはこの家に住み着いた霊の一人、杏那。
『また悪夢か?最近毎日見ているじゃないか。大丈夫なのか?』
腕を組みながらこちらに近付いてくるのはこの家に昔から住み着いてる霊の一人、彰だ。
「心配してくれてありがとな!彰のおっさん」
ニカッと笑いながら俺がそう言うと、彰は少し眉間にシワを寄せた。
『おっさんじゃなくて、“お兄さん”な』
ため息混じりの声で彰はそう言う。
これが俺のモーニングルーティンだ。
「さーて、ちゃっちゃっと着替えて飯食って、仕事しに行くか〜」
そう言って伸びをしながらベッドから降りようと体を動かすと、頭に強い衝撃が襲った。そう、偏頭痛だ。
兄貴の夢を見る度にこうなるから本当に面倒だ。
「クソッ。今日はいつもより酷い」
そう言って俺は自分の頭を抱える。
『はい、すまーとふぉん。これで典華の主さんに電話して今日はお休みしましょう!』
杏那が俺のスマホをまた浮かべて俺に渡して来る。慣れない単語を言う時はやっぱり今でも発音が変だ。
『そうそう、しんどい時はしっかり休まなきゃ』
亜津沙が、少し圧のこもった声で俺に休むよう催促する。
『駄目な時は駄目なもんだ。ほら、俺と一緒に二度寝しようぜ』
そう言いながら晶斗がちゃっかり俺のベッドの中に入ろうとしてきたから思いっ切り蹴っ飛ばしといた。
例え幽霊でも男が女のベッドに入ったら駄目だろって話だ。
主にも電話をして俺が休むとなると続々と霊達は俺の部屋を後にしていった。