テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
帰り道。
二人で歩くのが、いつの間にか当たり前になっていた。
⸻
「辛くないの?」
珍しく、彼が聞いた。
⸻
少しだけ間があく。
⸻
「…平気です」
嘘ではない。
でも、本当でもない。
⸻
彼はそれ以上、踏み込まなかった。
⸻
ただ——
歩く速度を、少しだけ合わせた。
⸻
「無理しすぎんなよ」
ぽつりと、それだけ言う。
⸻
優しい言葉。
でも、軽い言葉じゃない。
⸻
音は少しだけ笑った。
「してないです」
⸻
彼も、少しだけ笑う。
⸻
それ以上は何も言わない。
⸻
好きとか、特別とか。
そういう言葉は、一度もなかった。
⸻
でも——
一番近くにいるのは、いつも彼だった。
⸻
周りがどう変わっても。
誰が何を言っても。
⸻
離れない。
⸻
それが、どれだけ特別か。
音は、まだちゃんと気づいていなかった。