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結菜の態度は、はっきりと変わっていった。
最初は、ただの視線だった。
でも今は——
「そこ、どいてくれる?」
鏡の前に立っていた音に、結菜が言う。
「私、そこ使うから」
周りが一瞬、静かになる。
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「…はい」
音は何も言わず、場所を譲った。
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「やっぱりさ」
小さく、でも聞こえる声。
「譲るよね」
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くすっと笑う誰か。
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胸の奥が、じわっと熱くなる。
悔しさなのか、情けなさなのか、自分でもわからない。
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「ねえ」
結菜が、今度は正面から音を見る。
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「なんで、あの人といるの?」
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空気が張り詰める。
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「別に、普通に話してるだけです」
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「普通?」
少しだけ笑う。
でもその目は笑っていない。
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「私、ずっとファンなんだよね」
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その言葉には、はっきりとした棘があった。
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「だからさ」
一歩、近づく。
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「中途半端な気持ちで近づかないでくれる?」
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何も言い返せなかった。
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正しいのかもしれない、と一瞬思ってしまったから。
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そのときだった。
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「それ、決めるの結菜じゃないでしょ」
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低い声。
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振り向くと、そこに彼がいた。
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空気が一気に変わる。
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「……音くん」
結菜の声が少しだけ揺れる。
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彼はゆっくり歩いてきて、音の隣に立った。
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「話すのも、誰といるのも」
静かに言う。
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「本人の自由」
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結菜は何か言いかけて、言葉を止めた。
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そのまま視線を逸らす。
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「…ごめんなさい」
小さくそう言って、その場を離れた。
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残された沈黙。
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「……大丈夫か」
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音は少しだけ間を置いて答える。
「大丈夫です」
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でもその声は、少しだけかすれていた。
#🍏🎸💙