コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
そのとき、ガンという大きな音が響いた。一瞬、菊多に凶器で頭を殴られたのかと思った。でも、どこも痛くない。それどころか、父親に絞められていた首も自由になった。
「や、やめろ!」
振り返ると、父親が顔から流血して手で押さえている。けっこうな流血。これは確かに僕の首を絞めている場合ではないようだ。
その父親の後頭部に椅子が振り下ろされ、再びガンという音が響いた。父親は崩れ落ち、彼女が笑みを浮かべながら立ち尽くしている。
「お父さん、覚えておいて。ボクが身も心も捧げた夏梅を攻撃するのはボクを攻撃するのと同じこと。絶対に許さない!」
心は知らないけど、身を捧げられた覚えはない。でも確かに彼女は僕の最強彼女だった。別れた方がよさそうだと思ってしまったことは謝りたい。
駆け寄ってきた菊多が彼女に食ってかかった。
「姉ちゃん、何やってんだよ! 家族を守ろうとした父さんに対して!」
「家族を守る? それを言うなら夏梅もボクの家族。ボクだって家族を守っただけだ」
「姉ちゃん、いいかげん目を覚ませよ。こんなやつと家族になるなんていやだ!」
気が合うね。僕も君や君たちの父親と家族になるのはいやだ。
「お父さん、すごい出血してるけど大丈夫なの?」
「椅子で殴っただけじゃ夏梅の首を絞めるのをやめなかったから、フランクの串で顔を突きまくってやったんだ。そしたら顔の頬肉を突き破ってしまった」
「……………………」
確かに彼女の足元にジャンボフランクの串が落ちている。本気の力で突きまくったのだろう。それは真っ二つに折れていた。
「そこまでしなくても……」
「何を言ってるんだ? ボクは夏梅のためなら親だって殺せる。これから誰かにいじめられたらすぐに報告するんだ。ボクが必ず手段を選ばず報復するから」
喜んでいる場合じゃない。僕のためだと言うけど、いつか僕が浮気でもしてバレたらフランクの串は僕の心臓に刺さっていることだろう。いや、本当に僕が浮気したなら殺されても仕方ないかもしれないが、怖いのは浮気されたという思い込みで僕を殺してしまうこと。彼女が早くメンヘラではなくなることを祈るしかないのだろうか?