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お酒のことはうやむやのまま、菊多と父親は自宅に帰っていった。僕らは祭り会場に残り、彼らが現れる前のように並んで椅子に座っている。とてもにぎやかな中で二人で話を続けた。椅子を振り回してお腹がすいたのか、彼女はまたジャンボフランクを頬張っている。
「夏らしい話をしよう」
と彼女が言い出した。
「夏らしい話? 怖い話のこと?」
「いや、今日だけ恨みっこなしでお互いへの不満を言い合いたくなった」
夏、関係ないような……
「レディーファーストだからボクからでいいな」
レディーファーストってそういう意味だっけ……
恨みっこなしというが、本当に恨みっこなしなのか確証が持てないと、うかつなことは言えない。彼女から先に言ってくれるというなら僕も助かる。
「夏梅は女の子とキスしたことがあるか?」
僕への不満が質問から始まったのは意外だった。
キスしたというか、されたことなら一度だけある。遊園地に行ったとき、行きのバスの中で寝ぼけた彼女にいきなりキスされたのだ。
あのキスは僕の中ではなかったことになっている。でもわざわざ聞いてきたということは、キスしたことはないと答えるのは危険だ。