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「ルウゼス!!」
リイは急いでルウゼスのもとに駆けつける。スズエンも遅れて駆けつけた。ルウゼスのぽっかり開いた胸の傷を見る。リイは真剣にスズエンは青ざめながらみていた。
「これなら、治せるぞ。」
「ほ、本当なのか?」
「ああ。」
リイの左目の水色の瞳が光り、ルウゼスは青い光に包まれた。すると、なんということだろう、ルウゼスの傷がみるみるうちに治っていく。
「美しい…….。」
スズエンは気づけばそう口にしていた。リイの使う魔術はそれほど美しいものだった。
この魔術は《奇跡の光》と呼ばれ、現在この魔術が使えるのは世界でリイただ一人。
ルウゼスは暗い闇の中にいた。何も見えない、何も聞こえない。ここが黄泉の国なのだろうか。
「守れなかったな、約束。」
ルウゼスは苦笑いする。彼女との約束を守れなかった自分に。(すまねぇ・・・ 。)
すると、彼の心を包み込むように青い光が現れた。それは、とても美しい光だった。
「な、なんだこれ!?」
「これは、貴方があの世界に戻るために必要な光です。」
「!?」
後ろから声が聞こえ、慌てて振り返る。そこには、黒髪の美女が立っていた。
「お前は誰だ?さっき言ったのはどういうことだ?」
「失礼しました。」
女はそう深々と頭を下げた。
「私は死神です。そして、貴方はまだ死んでいません。」
「は?じゃあ、何なんだよ。」
「貴方は今、生死をさまよっている状態なのです。」
女が言ったことはこうだ。ルウゼスは今、生きてもなく、死んでもない微妙な状態らしい。それには理由があり、肉体は死んだが、魂は、まだ無事だったからだ。
「そして、リイが肉体を生き返らせたことにより、貴方はあちらの世界に戻ることができるのです。」
「……リイが?」
ルウゼスはリイがガチギレするような悪口を言ったのだ。助けてもらう義理などないはずだ。
「何で?」
光がもうすぐで、ルウゼスの全身を覆う。全身が覆われると完全にあちらの世界に戻ることができる。
「それは、あちらの世界で聞いてみてください。きっと、『助けたかったから』と言うと思いますよ。」
彼女はそう言うと、懐かしむように微笑んだ。
ルウゼスが目を開けるとそこは闇の中ではなく、青空の広がる眩しい世界だった。そして、見えたのは、黒髪の美女ではなく、死魔狼と対峙するリイだった。
「リイ!!」
「ルウゼス!目が覚めたか。」
「そいつは、危険だ!今すぐ離れろ!!」
ルウゼスが必死に止めようとする。だが、リイは「大丈夫だぞ!」と言うだけだった。
リイと死魔狼の戦いは一瞬だった。死魔狼の攻撃をリイは軽々しくかわしていく。そして、死魔狼が体勢を崩した瞬間に腹部に蹴りをいれた。死魔狼は呆気なく倒れた。
だが、また回復する。
「リイ、気をつけろ!やつは、また……」
「うむ! だから、
魂を破壊するぞ。」
そんなことできるのか、それがルウゼスの率直な気持ちだった。教師のスズエンですらそんなこと出来るわけがないと思っていた。だが、リイはあたかも出来るかのように平然としていた。
リイの右目の赤い瞳が光り、その目で死魔狼を真っ直ぐ見た。すると、死魔狼の体が崩壊しだしたのだ。そして、「バリンッ」と音がしたと思ったら、死魔狼の魂が破壊していた。
あの目は、ルウゼスが馬鹿にした目だった。そして、ルウゼスたちを救った目でもあった。
(俺は……あいつの目を馬鹿にした。それなのにどうして俺を助けたんだ?)
ルウゼスは苦い顔をしていると、そのままバタッと倒れてしまった。
「ここは?俺は中庭にいたはずじゃ…….。」
ルウゼスは、リイが死魔狼を破壊したところから記憶がなく、気づくとベットの上で寝ていた。
「ここは、医務室よ~。」
ルウゼスは違和感を感じた。こんな先生が医務の先生だっただろうか。ルウゼスは基本的に人の顔を覚えようとしなかった。だが、中等部の頃に医務の先生にはよく世話になったので、なんとなく覚えていたのだ。
今、目の前にいるのは淡い黄色の髪の美女、でもルウゼスの記憶では茶髪のおばさんだった。そして、一番の違いは目の前にいる女はエルフなのだ。
先生が変わった理由は、ルウゼスは一つしか、思いつかなかった。
「なあ、アネット先生に何かあったのか?」
「ん?心配しなくても大丈夫よぉ。」
「ベ、別に心配してたわけじゃ…….」
ルウゼスは言い返すが女はニコニコしながら話を続ける。
「アネット先生は里帰り中なの~。だから、私が臨時で来たのよぉ。」
彼女はアプロという名前らしい。アプロは愛想がよく、ずっとニコニコしている先生だった。
アプロはリイがルウゼスを運んできたと言っていた。どうして、自分を助けるのか、ルウゼスはまたその疑問が頭に浮かぶ。そして、闇の中で聞いた黒髪の美女の言葉を思い出す。
(『聞いてみてください』か、)
「アプロ先生、リイは?」
そう尋ねると、アプロは笑みを深め、「呼んでくるわ~」と言って、部屋から出ていった。