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第87話 〚守りきれない可能性〛(海翔)
夜。
海翔はベッドに座ったまま、スマホを握っていた。
画面には、
澪との短いやり取り。
【澪:今日はもう寝るね】
【海翔:おやすみ】
それだけの会話なのに、
胸の奥が、妙にざわつく。
(……何だよ、この感じ)
今まで、
「俺がそばにいれば大丈夫」
そう、どこかで思っていた。
実際、何度も守れてきた。
間に合ったことも、
回避できたこともある。
でも――
最近は違う。
(予知が来ない、って言ってたな)
澪は笑っていた。
大丈夫そうに見えた。
でも、
“見える”と“安心できる”は違う。
海翔は、
自分の手を見つめる。
(俺、何ができる?)
もし、
澪自身にも見えない未来があるなら。
もし、
予知が届かない場所で何かが動いていたら。
(……俺一人じゃ、足りない)
その考えが浮かんだ瞬間、
悔しさが込み上げる。
守るって、
強くなることだと思ってた。
でも今は、
**“一人で背負わないこと”**が必要なんじゃないか。
海翔は、スマホを操作した。
【海翔:玲央】
すぐに返信が来る。
【玲央:どうした?】
【海翔:ちょっと、話したいことある】
少し間があって、
【玲央:了解】
画面を閉じて、
海翔は大きく息を吐いた。
(守れない可能性があるなら)
(守れる人数を、増やす)
それは逃げじゃない。
責任放棄でもない。
本気で守るための、選択。
窓の外で、
夜の風が鳴る。
海翔は、
静かに決意した。
(もう、“俺だけ”で何とかしようとはしない)
(澪を守る輪を、もっと強くする)
それは、
彼が“守る側”として
次の段階へ進んだ証だった。