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 日中は、深夜の騒動が嘘のように穏やかに過ぎた。

 とは言え、ナッキも配下の幹部達も緊張を途切れさせる事なく、それぞれの部下達を集合させたままで周囲への警戒を続けていた。


 交代で最低限の食事を摂る群れの中で、ナッキとサニーの二匹は何も口にする事無く夕方を迎えようとしていた頃、下の池の方から明るい声が響いた、あれはナガチカの物だろう。


「はーいはいはい、今日も来ましたよぉ! ナッキ殿ぉ、サニー殿ぉ! ご機嫌如何ですかぁ? って、あれ? あれれぇ! 可っ笑しいなぁ~、えええ?」


 そう言って今来た道を戻って行ったナガチカは、暫(しばら)くすると首を傾げながら帰って来ると、上の池の端から顔を覗かせているナッキを発見して口にする。


「お、おお! ナッキ殿ぉ! ビックリしましたよ? 昨日とまるで違うメンバーを集めて置くなんてぇ、最初別の池に来たのかと思っちゃいましたよぉ! サプライズってヤツですよね? ナッキ殿って意外に茶目っ気が豊富なタイプだったんですねぇ~、あー参った参った、騙されたー!」


 ナッキは顔を水面(みなも)から大きく出してから答えたが、なにやら戸惑っている様子だ。

 暫くヘラヘラしている我が父、ナガチカの軽薄な表情を見つめていたナッキはやがてオズオズと言う。


「ねえナガチカ、ウチの池の面々だったら昨日とマルっきり同じだよ? 大丈夫ぅ?」


「ええっ!」


 今度は親父がビックリ仰天で首を傾げて言う。


「いやいやいや、昨日はいなかったじゃないですか! ドラゴの仲間のトンボ達って皆こんなに大きかったんですねぇ~、それにヘロンの配下達も揃って魔獣でしょう? 今日お薬持って来ましたけどね、この皆さんには石化の心配とか無いんじゃないですかぁ? あれ? す、水中の皆さんも変わっちゃってるじゃないですか! 結構念入りにサプライズってくれたんですね? ここに大量に集まっているのはぁ…… うんっ、ダンクルオステウス、にしては小さいか…… とは言え一メートルは越えてますもんねぇ~、アランダスピス、いやアストラスピスでは無いかぁ…… そうか! オステウスの稚魚、子供たちですか! いやぁ、お見事! ビックリしましたよ♪」


 なるほどね、自分で名乗っていた通り科学者、正確には生物学者、いいやもっと正確に言えば進化学者らしく、古い時代の生物にはそれなりに詳しいようだな。


 ナッキはキョトンとしながら答える。


「んん? ナガチカが今見ている場所に居るのはメダカだよ? 昨日初めて会った時に僕やサニーと一緒にいたじゃない、忘れちゃったのぉ?」


「は? これがメダカ? そんな馬鹿なぁ! 第一、昨日連れていたのは三十センチ位の、ええっとぉ、ライ魚的なお魚だったじゃ無いですかぁ! このお魚って一メートル位ありますよ? もう、しつこ過ぎると興ざめでしょう? ほら、ネタバラシネタバラシっ!」

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