テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

今日も事務所は慌ただしい。

だけど、北川先生は忙しい時ほど明るく余裕に見える。


「ただいまぁ。向かいのシュークリーム買って来たから皆、食べて。絶対に3時までに食べてくれよ」

「「「「ありがとうございます」」」」

「「「嬉しい」」」


全員分のシュークリームを冷蔵庫に入れ、絶対に休憩を取れと言うのだ。

慌てていようが、ミスをするのは許されない業務の連続だ。

郵便物の送付ひとつにも気が抜けない。

もし送付先と内容物を間違えると、個人の犯罪歴が関係のない人にバレてしまうなど取り返しのつかない重大なミスとなる。


「あー美味しい……こういう時こそ甘いものよね。さすが先生、よくわかってる」


私が電話を置いたタイミングで、大木さんがシュークリームを食べ終わった。


「良子ちゃん、大丈夫?今の電話、苦戦していたみたいだけど聞き取れた?」

「難しかったですけど、何とか……」

「地方の村役場の方よね?あの相続の案件で。どこの人もテレビ見るでしょうに…少し標準語に寄せてくれるとマシだと思うんだけど……もはや、あるあるって感じで聞き取れない」

「あと時間の経過の感覚がかなり違いますよね?今も‘待って’と言われたから待ったけど、何分待ったかな?忘れられたのかと心配になりました」

「あるある。電話おいてお茶飲んでるんじゃないかと思ったことあるもの。それ書いたらシュークリーム食べて休憩して」


業務のキリのいいところで休憩しようと席を立ち、紅茶を入れようとすると宮田さんが珈琲を入れていた。

宮田さんは私の2年先輩だという、一番年齢の近い事務員さんだ。


「お疲れ様。珈琲?紅茶?」

「お疲れ様です。紅茶にします」


ティーバッグの入った引き出しを開けてくれた宮田さんは


「仕事慣れた?」


と聞いてくれるので、はいと答えると彼女は同じ調子で続けた。


「急に転職というか事務所かわるって、良子ちゃん訳あり?」

「ハイハイ、宮田ちゃん。それは意地悪に聞こえるから止めておきな、せっかくの優しいお姉さんが台無し」


自分のマグカップを持って来た孝市先生が、カップを水で軽く濯ぎながら言う。


「そうですね。ごめんね、良子ちゃん。北川先生に離婚相談後、ここの求人応募したっていう私もちょっぴり訳ありかも。今聞いたのはなかったことにして…ごめんね」

「ここに悪い人はいないよ。北川先生があんな人だろ?自分の父を誉めるようだけど、父の周りには年々いい人が集まってる」

「私もそのうちの一人ですかぁ?いぇーい、頑張ります」


謎にテンション高く出て行った宮田さんの後ろ姿を見ながら


「あの人もここで明るくなったんだよね。良子ちゃん、気にするなよ」

「はい」

「明るくても大きな悩みのある人もいるし、人それぞれ」

「はい、ありがとうございます。紅茶か珈琲、入れましょうか?」

「自分でやるけど、ドリップ珈琲出してくれる?」


私の目の前の引き出しから珈琲を出して渡すと


「良子ちゃん一度食事に行こうか?片山先生とも話していたんだ。担当の大木さんと4人でどう?」

「……はい」

「無理強いはしないよ」

「いえ…嫌とかではなくて……こっちへ来て、一度も外食してないなと思っただけです」

「2ヶ月以上?」

「はい」

「よし、すぐ行こう」


こうして、ここへ来て初めての外食、外出が決まり、大木さんがすごく楽しみにしてくれていた。

loading

この作品はいかがでしたか?

69

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚