今日は三岡先生と週に一度の電話連絡の日だ。
この1ヶ月特に変わりない。
両親とも互いに元気だとしか伝言もないが、両親がたまに家に帰って来て、掃除をして布団を入れ替え、こたつを出して私がいつ帰ってもいいようにしているようだ、と先生から聞いた。
「今度事務所の方と食事に行くことになりました」
‘そうか。美味しいもの食べておいで。どんどんあちこち出掛けるといいよ。初めて見るもの口にするもの、全てが新しい自分への刺激だ。外に目を向け、周りに目を向けなさい。来週会うのを楽しみにしてるよ’
三岡先生はそう言い電話を終えた。
そうだよね……生活を楽しまなきゃ。
「東京の方って…こんなものを食べているんですか?…お洒落な人ばかりのはずです」
見たことのないお洒落な空間と料理を前に思わず呟くと
「片山先生の奢りだからね、いつも行けないところリクエストしたのよ」
と大木さんが笑う。
そして孝市先生が私に聞いてくる。
「居酒屋が良ければ、今度一緒に行こう。良子ちゃんお酒は?」
「…嗜む程度に……」
「っていう人は、イケるのよね~今日はこのあとワインでいい?」
片山先生の奢りと言いながらシャンパングラスを片手にワインを注文しようとする大木さん。
私が戸惑う間に、片山先生がワインを注文したようだ。
その様子も洗練された大人の雰囲気で、同じ空間にいる自分も大人になった気がした。
美味しい食事だったが少し緊張したな。
食事が終わってから窓の外のきらびやかな夜景に気付き、先生たちに笑われたが
「今度は居酒屋で」
と次回を約束してくれた。
三岡先生の面会でそのことを報告し
「今日のお昼は初めて事務所の外でランチしたんです」
「それもいいね」
「宮田さんっていうお姉さん事務員さんが、近くのカフェを教えて下さって」
「そうか。仕事はどう?」
「個人案件ばかりやってきましたけど、一件、企業も教えてもらい始めてます」
「順調そうで何より」
そう言った先生はカバンを開けると、2通の封筒を私に差し出した。
「他にもあるが…まず最初の手紙。間宮兄弟に伝言を伝えたあとだから、5週間ほど前に彼らから預かった。佐藤さんと話しながら私の判断で私の手元に留めていたが……今読んでみないか?一人でなく、私の前で開けてみてはどうかな?私が読むのではないよ。ただ一人の部屋で読むよりはいいだろう」
佳ちゃんと颯ちゃんからの手紙……
先生の言う通り、今なら読める?
宛名のない封筒の裏に
‘間宮佳佑’ ‘颯佑’
……ふふっ、颯ちゃん最短だね。
コメント
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嗜む程度にって(* ˙ ˘ ˙ )σ ツンツン良子ちゃん!!!🤭次の居酒屋も楽しみだね〜! 宮田さんも気にかけてくれるみたいだし、嬉しい♪ 2人からのお手紙…緊張するよ( '◠' ; )ゴクリ でも送り主の字を見て笑ったねリョウコちゃん⚐⚑⚐ ˊ˗