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夕暮れ時。
子供達が、遊びから帰っていく中、リビング静かな空気だけが流れていた。
東京都郊外にある一軒家。
ここは、さまざまな精神疾患を抱えた、6人が暮らすシェアハウスだ。
派手な笑い声も、気まずい沈黙もない。
ただただ「それぞれの生きづらさ」を抱えたまま、同じ屋根の下に息を潜めている。
リビングの隅のソファに縮こまっているのは、悠佑。
強迫性症による「鍵の確認」と「手洗い」の儀式を終えたばかりなのに、まだ指先を細かく震わせている。
「…大丈夫、何回も見た。鍵は閉まってる……。」
ブツブツと、一人で呟く彼に、キッチンでマグカップを洗っていた初兎が声をかけた。
初兎は重度のうつ状態を抜け出しつつあるが、今日は朝から気力が湧かず、夕方になってようやくベッドから起き出してきたところだった。
「ゆうくん、お湯沸いてるよ。白湯でも飲む?」
「……、飲む。」
しばらくすると、2階の自室から足音が聞こえてきた。
ないこだ。社会不安障害とパニック発作があり、人と目を合わせるのが苦手な彼は、今日は一日中自室のベッドで天井を見つめて過ごしていた。
夕食の買い出しに行く時間だが、玄関のドアを開ける想像をしただけで呼吸が浅くなる。
ダイニングテーブルには、すでにほとけが座っていた。
双極性障害の躁うつの波が激しい彼は、今日は「躁」のフェーズに入っているらしく、スマホでなにかを書き殴っているが、数時間後には激しい疲労と気分の落ち込みがやってくることを、ここにいる全員が知っている。
そのほとけの向かい側で、ただじっと窓の外を見つめているのはいふだ。
統合失調症の療養中で、頭の中に響く幻聴や、世界が少し歪んで見える感覚と向き合いながら暮らしている。
「今日は…鳥がうるさいな。」
いふのその呟きに、誰も否定せず、ただ「そうだね」と誰かが相槌を打つ。
そして、キッチンから少し離れた和室の障子の隙間から、ひょっこりと顔を出したのは、最年少のりうらだ。
発達障害による強いこだわりと感覚過敏を抱えており、特定の音や光が苦手なりうらは、ノイズキャンセリングヘッドホンを首に掛けながら、みんなの様子を窺っていた。
「…今日のご飯、誰が作るんだっけ」
りうらのその小さな問いかけに、リビングの空気がふっと緩む。
誰も無理強いはしない。
料理ができるときは作り、動けないときは誰かが代わりにレトルトを温めてくれる。
ここでは「普通」でいる必要がない。
代わりに、皆が互いの見えない痛みを想像しながら生きている。
「今日は、俺が作るな。」
と初兎が、マグカップを置いて冷蔵庫の中を覗く。
「じゃあ俺、お米研ぐの手伝うわ」
といふが立ち上がり、
「買い出しは…やっぱり俺が行くよ、少しずつ慣れなきゃやし。」
と、ないこが深呼吸をしてドアに手をかけた。
完璧じゃない。
明日になればまた誰かが深く落ち込み、誰かが部屋から出てこなくなるかもしれない。
それでも、歪んだ形かもしれないが、この6人で互いの孤独を埋めていくように動き始める。
お湯
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