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いつもお世話になってる番組でパフォーマンス、今日も上手くできたなぁ…でもああしても良かったかな?なんて思いながらみんなと話してると恒例のサイン動画を撮ることになった。サインの時おでこをぶつけてみんなに笑われたけど、今回はサインも綺麗に書けたしまあええか!
書いた後いつも通りみんなで集まってカメラに笑顔を向ける。仁ちゃんの隣が空いていたので入っていった。
そしてカメラから掃けようとした時仁ちゃんが俺に少しくっついてきた。多分狭い場所だから怖いんだろう。
足場も不安定やしなぁ、でもこうやってくっついてくるとかちょとかわええな…なんて思って俺も仁ちゃんに手をのばそうとした。
その時、仁ちゃんが段差のところを踏んでバランスを崩した。
咄嗟に出していた手を腰に回すと同時に、仁ちゃんが俺に抱きついてきた。
すぐ目の前に仁ちゃんの顔。キス寸前みたいな、距離感。
仁ちゃんの大きな瞳に吸い込まれそうになった。
時が止まったような感覚。
「やべー!びっくりしたー!」
顔を逸らして安心したような顔をする仁ちゃんにハッと我に帰る。
「ちょっとー!気をつけてや吉田さん」
そう笑いながら文句を言うだいちゃんのとなりで爆笑するじゅう。
「ほんま危ないやんか、俺がいたから良かったけどー」
咄嗟に言葉を繋ぐ。
「ごめんごめん、マジ助かったわ」
はやちゃんがサインの続きを書いているのを横目にそんな会話をする。
「てか、いつまで抱き合ってんの?」
じゅうに笑いながら指摘されて、俺が仁ちゃんの腰に手を回したまま抱き寄せてることに気づいた。
あ、と思った瞬間仁ちゃんと目が合うがすぐ目を逸らされる。その時見えた耳が、赤いように見えて胸がどくんとなる。
「だって仁ちゃん心配やからさーほら、こっち来て」
それを誤魔化すようにじんちゃんをそのまま広い場所に連れて行く。改めて腰を触ると仁ちゃんの体の小ささ、柔らかさ、細さを意識する。
仁ちゃんって、こんな体してるんや──────
そう思った自分にびっくりして仁ちゃんからぱっと離れる。
「気をつけへんと、仁ちゃんもう年なんやから」
「やかましいわ!」
普段通りに笑って俺をこづいてくる仁ちゃんに安心する。俺の変な考え、バレてないよな?
ていうか俺、何考えてるんやろ?今までパフォーマンスでこうやって近くになる事なんていくらでもあったのに。
必死に俺にしがみついてきた仁ちゃんの体の小ささ、俺に全部を預けるような体重の預け方、あの大きなきゅるっとした瞳、不安そうな表情…全部が全部頭をぐるぐるしてしまう。
「お前らこっちがまだ撮影してんのにイチャイチャしてんなよ」
「…してへんって!」
冗談まじりにぶすっとした表情ではやちゃんに言われてちょっと言葉に詰まってしまう。
「あはは!マジちゅーするかと思ったわ!おもろ!今の撮れてんのー?」
能天気に言うだいちゃんに心の中で勘弁してや…なんて思っているとスタッフさんから見切れていると言われて安心する。自分があの時どんな表情をしていたのか分からない。それを確認するのがちょっと怖かった。
あれ、何でそんなことが怖いんやろ…?
モヤモヤした気持ちを抱えながらTikTokの撮影をして楽屋に戻る。まだ気持ちは晴れない。
何なんやろこの気持ち?ずっとさっきのことを思い出して頭がぐるぐるする。
「しゅん、着替えないの?」
「え?あーなんかぼうっとしてたわ!」
じゅうに言われて自分が着替えてないことに気づいた。マネさんも待ってるんだからさっさと着替えないとと思い急いで着替える。
バタバタとする俺をじゅうが微笑むような顔で見てきて、着替えながら「何?」と言うと
「いや、しゅんって結構鈍感だよね。自分の感情にも相手の感情にも」
ふふと笑われて戸惑う。じゅうはいつも何もかもお見通しって感じがする。
「それってどういう…」
「ちょっとーしゅんちゃんもじんちゃんもさっさと着替えてやー帰れへんやん!」
詳しく聞こうとしたところでだいちゃんの声で阻まれる。それと同時に仁ちゃんも?と思い、後ろを向くとちょうど仁ちゃんと目があった。今まで座っていたらしい仁ちゃんは何も着替えてなかった。
「あーごめん、ぼうっとしてたわ」
「同じこと言ってる」
「え?」
何故か爆笑するじゅうに仁ちゃんが戸惑うような顔をする。その後じゅうが俺に無言で笑顔を向けてきた。
何だろう、と思ってるとじゅうがだいちゃんのいる机の前に鞄を持って移動する。
「俺ちょっと急がなきゃいけないからさ、一緒に先帰ろうよ。はやちゃんも明日早いでしょ?」
「あーうん、四時起き」
はやちゃんも着替え終わったところらしくもう身支度を整えていた。
「よっしーとしゅんは別でタクシー呼んで、俺たちマネさんので帰るから」
「は!?そんなにかからないって」
「急いで着替えて服壊れても困るし。じゃあね」
有無を言わさずはやちゃんとだいちゃんの背中に手を回して誘導していく。
え?どういうこと?じゅう明日はゆっくりできるって本番前に話してたやん?何で?
戸惑って硬直してる俺の後ろで仁ちゃんがため息をついて椅子から腰をあげる。
仁ちゃんはいつもタイパ重視なんて言ってさっさと帰るタイプだ。俺はだらだら喋っていて怒られることがある。珍しいな。
そのまま無言でジャケットを脱ぐ仁ちゃんを、何となくそのまま見つめてしまう。
ジャケットを脱いで見えた腰を見てさっき触った感触を思い出す。その瞬間のいろんなこと、仁ちゃんの顔…。
「……何?見られてると着替えづらいわ」
不満そうな仁ちゃんの声でビクッとする。
「あ!ごめんなあ、なんか今日疲れてるんかな俺…」
慌てて自分の脱ぎかけの服をどうにかする。何意識してるんやろ俺。ていうか、意識って何?
必死に別のことを考えようとする。今日帰ったら何食べようかなあ。風呂入る前にえんじぇるのみんなにおやすみ言いたいなあ。明日の予定って何やっけ…。
その間お互いに無言。衣擦れの音とロッカーの音だけが空間に流れる。
やっと着替えが終わったところで振り向くと仁ちゃんがこっちを見ていた。
「お前時間かかりすぎ」
「そんなん仁ちゃんも同じやん!」
「いーや俺のが早かった」
「ちょっとの差やろ!」
普段通りの小競り合いができて何だか安心する。自分の衣装をポールハンガーにかけて、仁ちゃんと一緒に楽屋を出た。
待ってたスタッフさんがタクシーの手配をしてくれていて、2人でそれを待つことになった。
まだまだ夜は寒いなぁ、なんて思っていると仁ちゃんが少しもじもじと不自然な動きをしていることに気づいた。
トイレでも行きたいんかな?と思って顔を覗きこもうとしたら、びっくりしたのか後退りされて遠ざかられた。
その時何故か心が締め付けられるような感覚がする。今日は自分が変な気がする。
「いや、あの、さっきはごめん…ていうか、ありがと」
申し訳なさそうに言う仁ちゃんにほっとする。
「かまへんよ!怪我せんで良かったし。でもちゃんと気をつけなきゃダメやで?今回は俺が隣にいたからええけど…」
「ん……」
む、としたような口でそう答えるじんちゃんの耳が赤い。寒いから?それとも…なんて思っていると、あの時のことがまたフラッシュバックしてしまう。
「俺以外に、ああいうことしたらあかんで?」
自分の意識とは別に、その言葉が出た。
「………は?」
仁ちゃんが目を丸くして俺の顔を見る。多分俺の顔は笑ってない。
戸惑うような仁ちゃんを見て自然に手がのびる。仁ちゃんの耳はさっきより赤くなっているような気がした。
「あ、着きましたー!」
スタッフさんの声と共に車のエンジン音が聞こえてくる。俺は我に返って手を引っ込める。
「ほら、あの、ほんまに危ないからな!支えきれんで倒れちゃうかもしれんし!ほら、タクシーのろ!」
急いで入ろうとして開きかけのタクシーのドアに頭を頭をぶつける。いった〜…と言いながら頭を抑える俺に、仁ちゃんがぷっと吹き出す。
「お前の方が同じことしてんじゃん」
本当に楽しそうに笑う仁ちゃんに思わずむっとする。
「そんな笑わんでええやん!」
「いやーだって…なんか損したわ、と思って…」
「損?何が?」
「何でもねえよ、さっさと入れって」
いつもの遠慮のない仁ちゃんに戻っているのが分かった。そのきっかけが今の出来事ならまあええか…なんて痛むおでこをさすりながら思う。
じゅうの言ったことや今日の自分の変化は一旦おいておくことにした。
今はただ、仁ちゃんとたわいもない会話をして帰りたかった。
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かうんどだうんてぃーびーのインスタ動画が凄すぎてつい書いてしまったそのじん。
見てない方はとりあえず見てください……。
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