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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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早くも、休みの日がやって来た。
以前は白川さんの方が早く集合場所に到着していたし、何より格好もお洒落だった。
だからこそ、今回は俺も気合を入れて。
バイト代を惜しまずに注ぎ込み、ちゃんとした服も用意した。
更には集合時間の一時間前から、非常に緊張した状態でピクリとも動かず待っていたのだが……。
「時間はそろそろだけど……来ないな」
スマホの時間を確認してみれば、集合時間の10分前。
前の時の印象から、これくらいには到着しそうなイメージだったのだが。
今のところ、駅の方の人混みを見ても彼女の姿は確認出来ない。
落ち着け、俺。
だってまだ約束した時間にすらなっていないのだから、到着していないのは全然不思議じゃない。
遅刻したところで、当然怒るつもりとかは全然無いんだけど。
もしかしてこっちに来るまでに何かあったんじゃ……などと心配になってしまい、何度もスマホを確認してしまうが。
今のところ、相手からの連絡は無し。
かといって時間にもなっていないのに連絡したら、絶対急かしてるみたいになっちゃうだろうし。
などと考えつつ、ソワソワしつつもその場に待機していると。
「……ん?」
気のせいかな?
今、人混みの中からターミ〇ーターみたいなゴツい人が、此方をジッと見ていた気がするのだが。
しかし目があった瞬間に視線を逸らし、そのまま人混みに紛れて行く。
たまたまこっちの方を見ていただけで、俺の勘違いだとは思うんだけど……とんでもなくガタイの良い人だったので、思わず一瞬固まってしまった。
まるで映画のワンシーン、もしかして俺……これから殺される? みたいな。
だが人混みに紛れたその人は、もう此方の視界には映っておらず。
何かとんでもなく凄い人を見た、程度の感覚で終わったのだが。
今度はやけに派手な車が、ドッドッドと凄い音を立てながら視界の端に路駐し始めた。
これだけなら、ちょっと派手な改造車に乗った人でも来たのだろうって思える程度なんだけど。
もはや映画とかに出て来そうなスポーツカー、しかも形も色もステッカーも派手。
そんなのがやけに低いエンジンサウンドを鳴らしていると、嫌でも視線が向いてしまうと言うモノで。
更に言うのなら、運転手の男の人と一瞬目があった気がしたのだが……すぐに視線を逸らされ、その後走り去っていく車。
も、もしかしてこの辺って結構治安悪い?
だとすれば、こんな場所を集合場所に指定したのは間違いだったのかもしれない。
今からでも白川さんに集合場所の変更を知らせようかとスマホを取り出したところで。
「す、すみません! お待たせしました!」
これまで俺が注目していたのとは逆方向から、彼女が慌てた様子でパタパタと走って来たではないか。
てっきり電車で来るのかと思っていたので、駅の方ばっかり注意していたけど。
「い、いや! 全然! 俺も今さっき到着したばっかりって言うか! 本当に全く待ってないよ!」
慌てて声を返しながら、走って来た彼女を迎える為に立ち上がったのだが。
あ、不味い。
前にお出かけした時とはまた違った雰囲気の私服。
しかもちゃんと“気合入ってます”って感じの、デートスタイル。
可愛い、うん可愛い。
というか髪を整えたり、格好も整えたりとかした白川さん。
普通に誰が見ても可愛いよな?
前から可愛かったけど、今の状態って他の人も初見で興味を持つくらいに可愛いよな?
さっきから不思議なモノばかり目撃していたので、一人にしたら何かに巻き込まれるんじゃないかって不安になって来たんだが。
「と、とりあえずおはよう白川さん……今日の格好も、その……何と言いますか、凄く、可愛いです」
「ぁ、ぇと、ありがとう……ございます。こういうのに詳しい人に、最後まで相談した甲斐がありました」
照れた様子で、ペコペコ頭を下げて来る彼女はいつも通り。
この光景を見て、此方も少しだけ普段の調子を取り戻したついでに……。
「今日は、電車じゃなかったの? ずっとそっちばっかり見てたから、反対側から来てビックリした」
「あの、えぇと。今日は、ですね。お兄ちゃんがお休みだったので、駅まで車で送ってくれまして……なので、ちょっと到着がギリギリになってしまったと言いますか」
傍から見ても分かる程に、アセアセと緊張している様子で答える彼女。
しかしながら、ちょっと待って欲しい。
白川さんのお兄さん、今日の事を把握しているって事?
それで良く送り出してくれたな……というのと。
これはもはや、俺という存在は完全“悪い虫”認定を喰らってしまったんじゃ……。
とはいえ、そっちの事情まで聞き出す根性は無く。
曖昧な感じでどうにか笑顔を浮かべてから。
「と、とにかく……行こうか。ホント、ブラブラする感じなると思うけど」
「は、はいっ! 本日は、どうぞよろしくお願い致します……というか、やっぱり待たせちゃいました? 駅の方を見てたって、さっき言っていた様な――」
「全然! 本当に来たばっかりだから! むしろ遅刻したらどうしようって焦って、到着と同時に白川さんが来た。みたいな!? ナイスタイミングだったよ!」
「な、なら良いんですけど……」
ちょっと困惑気味の彼女を連れて、本日のデートが開始されるのであったとさ。
何だかんだ言って色々予定を考えて来たけど……気合を入れろ、俺。
絶対に、白川さんに楽しんでもらうんだ。
◆
「…………」
なにやら初々しいお二人さんを見ながらも、眼下にジト目を向けつつスマホを耳に当てた。
そして。
『もしもーし? ナインから通話とか、珍しいですねー? どうしました? 私はちょっと今忙しいって言いますか~』
「野次馬ストーカー、お疲れ様」
『ブッ!』
此方から確認出来ている相手に対して声を掛けてみると、向こうは路上でキョロキョロしながら周囲を伺っているが。
馬鹿め、スナイパーが歩兵と同じ高さに居る訳がないだろうが。
やけに派手な髪色の女が、どうにか変装しましたって格好じゃ……それこそ、遠目でも良く見えるというもの。
アレで賞金首の7番目なんだから、どうしたもんかねって感じだけど。
他の面々に関しても、同じ事が言えるような気がしないでも無いんだが。
「この集団ストーキングはお前の発案か? seven」
『や、いやぁ~急にそんな事を言われても、9Kが何の事を仰っているのかさっぱり――』
「シックスが一番仲の良いのはお前だからな、大方アイツから相談でもされて……他の面々まで巻き込んだな? 555のテンションならまだしも、4cardがココに居るのが証拠だろう。アイツは自分から野次馬するタイプじゃないからな」
『ブフッ! ちょっとどっから見てるんですか!? めっちゃバレてるじゃないですか!』
相手の声に思わず大きなため息を零してしまった。
お馬鹿、本当にお馬鹿。
上から見てると、マジでバレバレだっての。
弟が随分と余裕な顔でテスト期間を終えたかと思えば、今度は別な感じにウキウキと緊張をローテしていたので。
どうせこんな事だろうと思い、今日何処へ行くのかだけ聞いてから……今回も出歯亀してみたのだが。
予想外の人物達が、わんさか居るのだ。
「フォーに伝えておけよ? 相手を素人だと思ってナメ過ぎだ。アイツの体格じゃ、人混みの中に居ても目立つ。実際ウチの弟……あぁいや、シックスのお相手に気が付かれてたぞ?」
『え、マジですか? クロさんやっぱ観察力高ぇ……流石はナインの弟さんなだけあるわぁ』
「いやお前……ウチの弟の事まで知ってんのかよ。というかどこまで知ってんだよ」
今度は別の意味で呆れた溜息が零れてしまった。
世間って意外と狭いもんだねぇ。
あぁでも、なんかチラッとそんな話を担当サポーターから聞いたかも?
たしかoctopus8がやらかした時にどうとかって話だから、アイツ等にとってはサブキャラの方で何かあったんだろうけど。
まぁ今はそんな事どうでも良いとして。
「ファイブも下げさせろ、せめてどっかの駐車場に車を置いて来る様に言えよ。あんな派手な車じゃ間違いなくバレるっていうか、早くも警戒されてんぞ」
『ガッ……く、くそっ。滅茶苦茶ノリが良かったから連れて来たけど、まさかあんなにご立派な車に乗っていたとは……』
「やっぱりお前が呼び込んだのか、言質取ったぞ」
『んなぁ!? 誘導尋問だぁ!』
リアルでも非常にテンションの高いsevenにこれまたため息を一つ。
謝恩会でほとんど皆顔を合わせたしね、結構話もしたから余計に行動が予測出来るってもんだろ。
「俺も似た様な行動してるから、他人の事は言えないが。お前等は本当に部外者なんだ、程々に……お?」
『何、何ですかナイン。気になるところで言葉を止められると、私気になっちゃう性格なんですけど』
「どこまでも性格陽キャで羨ましいよ、まったく。悪いけど、こっちでも動く用事が出来たから。お前等はもう少し距離を空けて出歯亀しろよ? マジでバレるぞ、ウチの弟舐めんな。んじゃな」
『ちょ!? せっかくならナインも一緒にシロちゃんの“見守り隊”を――』
煩いのがまだ何か言っていたが、容赦なく通話を切ってから店から出て真っすぐ目的地へ。
そして、路上に止まっていた車の窓を軽くノックしてみれば。
「……偶然ですね、9K」
「ハハッ、どの口が。大体予想は付いてるけど……アンタももう少し“目立たないコツ”を覚えた方が良いな、白川さん」
非常に険しい顔をしていた白川兄が、随分と驚いた顔で窓を開けてから此方を覗き込んで来たではないか。
白川妹も大変だねぇ……。
デート一つで、ここまで外野が騒ぎ立てるんだから。
まぁ、その一人として覗きに来ている俺が言っても、説得力の欠片も無いけど。
「同じ兄貴同士、一緒に行動します? どーせ心配性ゆえのストーキングでしょう? シスコンのお兄ちゃんは」
「…………うん? ちょっと待ってください9K。“兄貴同士”って言うのは、どう言う事でしょうか?」
どうやら相手方はそこまで調べ上げていなかった御様子で。
今彼の大事な妹がデートしている相手が、ウチの弟だって事には気が付いていないみたいだ。
ということで。
「アレ、ウチの弟。ちなみに何度かシックスを追い詰めた……とは言えんかもしれないけど、96sourってプレイヤーでもある。運営側でも、やっぱプレイヤー情報は秘密主義を徹底してるみたいですね」
ケッケッケと笑いながら呟いてみると、相手がガツンとハンドルに額をくっ付け。
暫く唸り声を上げたかと思えば。
「……もしかして、なんか結構事情が複雑に入り混じってます? この状況、というか人間関係」
「ま、そうね」
「すぅぅぅ……9K、今は仕事という訳ではないんですけど。ちょっとお願いをしても良いですか?」
「へいへい。俺の邪魔をしないのなら、全然良いですよ。とりあえず、車はその辺に置いて来てもらえます? “追跡”の邪魔になりますんで。足ならこっちでバイクを出しますから」
「はい、すぐに」
という事で、複数名のナンバーズに続けて白川兄を発見。
そんなシスコン兄貴は、大急ぎで近くの駐車場へと車を運んでいく。
追跡と監視の基本、それは相手の行動を“予測”する事。
ついでに言えば、俺からすると本当に見知ったのが今回のターゲットなので。
まぁ、しばらく目を離した所で見失う心配など皆無と言って良いだろう。
という事で。
「急にホテルに誘ったりはするなって、一応アドバイスしておくか……」
今回の件に集まって来た奴等を散らした後、ひとまず弟へとメッセージを送信してみると。
相手からは、「する訳無いだろそんな事!」と爆速で返事が来たけど。
間違ってもやるな、という意味で……一応。
今回上手くいきすぎて、行くところまで行っちゃった場合。
多分お前、賞金首数名と相手の兄貴から強襲を受けるぞ。
流石に弟がそんな境地に晒されるのは勘弁なので、今回ばかりは少し手を貸してやるとするか。
とはいえ。
「ま、存分に恋愛ドラマ見せつけてくれ。弟よ」
そんな事を言いつつ、その後車を置いて来た白川兄と合流を済ませるのであった。
楽しい楽しい休日は、始まったばかりだ。
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うわぁ、デート当日なのに監視者・追跡者がわんさか(笑)。でも本編のドキドキ感と9Kやナンバーズたちの“兄貴目線”な狂言回しのバランスが絶妙でめちゃくちゃ楽しかったです! 主人公と白川さんの初々しいやり取りが可愛すぎるし、それを見守る(?)姉と白川兄の共闘も熱い。“同じ兄貴同士”と言い放つ9Kのシスコンっぷり、最高でした。