テラーノベル
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吉田:え、?
佐野:…なーんつって!一人で帰るの大変そうだからさ、家まで送らせて笑、ちょっと待っててね
佐野さんは手をヒラヒラさせながら行ってしまった。は、何考えてんのこの人…思考が全然読めないんだけど。いや、有難いですよこちらは。でも、佐野さんはいいのか?!
佐野:忘れ物ない?
吉田:……はい
店の裏口を出ると路地に繋がっている。ここはタバコの匂いが充満しているだけだから比較的大丈夫。だけど、数メートル進んだ先にある大通りに出てからが問題なんだ。人、もの、全ての臭いが俺を支配してくる。マスク無しで歩くなんて自殺行為に等しい。息止めて行こうかな。でもそしたら普通に窒息死するか。いやいや、無の感情で行けばいいのか
佐野:…大丈夫?
吉田:え?
佐野:顔、引きつってる
佐野さんは心配そうに俺の顔を覗き込む。そんなに変な顔してたのか俺?
吉田:…頑張ります
佐野:俺の匂いがあれば耐えれる?
吉田:え、多分、?
俺がそう答えるやいなや、佐野さんは自身に巻いていたマフラーをスルスルと外し、俺の首に巻き始めた
吉田:あ、うぇ、!?
佐野:…うん。いい感じ。これで行けそ?
…マッジでありがとう。うん、行ける行ける。命の恩人すぎるわ。感謝しかない。1時間前の吐きそうな俺に見せつけてやりてぇ
吉田:…ありがとうございます。もう、感無量です
佐野:ははっ笑、全然よ。じゃあ行こっか
佐野:えっと、店長から苗字しか聞いてないんだけど、吉田なに君?
吉田:あ、仁人です
佐野:へぇ、あんまいなそうな名前。大学生だよね?何年?
吉田:3年です
佐野:あ、じゃあ俺の2個下か
佐野さんのマフラーのお陰でなんとか歩くことができている。無かったら本当に終わってた。チラッと隣を歩く佐野さんを見ると、タートルネックにネックレスにロングコート。正しく大人のファッションって感じ…俺もロングコート着てるんだけど、なんか違うんだよな。俺ガキすぎるのかな
佐野:…なに、そんなこっち見て
吉田:なんか、かっこいいなって
佐野:ふふん、よく言われます
吉田:そうなんすね
佐野:いやそこはツッコんでよ笑
吉田:だって、本当によく言われてないとおかしいですもん。ていうか、クリスマスなのにいいんですか、?
佐野:え?何が?
吉田:……恋人とか、いるんじゃないですか?
こんな優しくてかっこ良い人、恋人がいないわけがない。佐野さん、家に早く帰って恋人と過ごしたいはずだ。なのに、こんな俺に付き合わせてしまって、すごく申し訳なかった
佐野:…やっぱ恋人いるように見える?
吉田:…はい
佐野:この質問、今日で記念すべき20回目。そして俺は恋人はいないでーす
佐野さんは明るくそう言うと、騙されたねぇと追い討ちをかけるように言ってきた。でも、俺の目には、わざと明るく振舞っているというか、どこか寂しそうに見えた
佐野:……やっぱ寒いね笑、早く家帰らないと風邪ひくわ笑
俺が無言になったのが気まずくなったのか、佐野さんは明らさまに話題を変えた
吉田:…すみません、マフラー俺が付けてるから
佐野:全然それは大丈夫だよ
吉田:……あ!佐野さん、手出してください
佐野さんは不思議そうにしながらも右手を差し出した。俺は佐野さんと手を繋いで自分のコートのポケットに一緒に突っ込んだ
佐野:は、!?
吉田:俺、他の人より体温高いんです。だからさっきよりはマシになるはずです笑、マフラーの代わりになりますか?
佐野さんの顔を見ると目が点になっていた。あれ、俺変なことした?お礼のつもりだったんだけど
吉田:えっと、佐野さん?
佐野:…ヤバイ
吉田:やばい?
佐野:いや、なんでもない。うん、めっちゃ良い笑、ありがとう
吉田:よかったです
なーんだ、怒ってんのかと思ったけど何ともなかった。よかったよかった
佐野:こっちの道であってる?
吉田:はい、、あっ、ここにもイルミネーションあったんだ
イルミネーションは道に沿って光り輝いていた。所々に雪だるまやサンタクロースの置物もあって、カップル達が写真を撮って笑いあっている。勿論、俺だって彼女がいたことはあるが、何年も前の話だ。どんなデートをしたのかもあまり記憶にない。だから、もし今恋人がいたら、俺はどんなクリスマスを送っていたのだろう、と考えてしまう。まぁ、想像する前に、想像する自分がキモくてやめるんだけど
佐野:…仁人は恋人いた時ある?
吉田:え、まぁ
佐野:ちょっと意外なんだけど
吉田:失礼な…まぁ、高校生の時ですから、何年も前ですけどね
佐野:そっか
さっきの少し寂しそうな表情を思い出す。やっぱ、謝った方がいいよな
吉田:…あの、さっきすみませんでした
佐野:…え?
吉田:俺、佐野さんのことを表面だけで判断してました。外見が良いから恋人がいるだろう、優しいからいるだろうって。でも、そんなの佐野さんのほんの一部ですよね。もっと良い所も悪い所もあるはずで、いや、俺はまだ良い箇所しか見つけてないんですけど、あ、、?ん、何言いたいんだっけ
佐野さんは驚いたような表情で見ていたが、俺が喋っている途中から何故か笑い始めた
吉田:なんでそんな笑ってるんですか
佐野:はぁ、、ほんと、仁人は面白いね
吉田:…そうですか…アパートそこなんで。今日は何から何までありがとうございました
佐野:…こちらこそありがとう
吉田:俺なんもしてないですよ?このマフラー洗濯して後でケーキ屋さんに届けますね
佐野:え、別に洗濯とかいいのに
吉田:良くないです。洗濯で佐野さんの匂い取れるのは寂しいけど、俺の匂いがついたから洗濯しないと
佐野:…寂しいんだ
吉田:……まぁ、多少は
佐野さんの口角が上がったような気がした。なんか、嬉しそう。大半の人はこんなこと言うと嫌がるのに、変な人だな
佐野:補充、する?
は、?
吉田:えっ…何言って
佐野:だって、名残惜しそうな顔してんじゃん。仁人って分かりやすいよね
ぐうの音も出ない。図星だ。佐野さんの匂いで補充したい、けど、佐野さんが嫌だろうから我慢してんのに。恥ずかしさとか色々な気持ちが溢れそうなのを耐えるために唇を噛む。そんな俺の様子に対して佐野さんは優しく語りかける
佐野:俺、仁人に補充してほしいなぁ
佐野さんの表情に、言葉に、心が揺らいでしまって
吉田:…ほんとに、良いんですか?
佐野:うん……おいで
その言葉を皮切りに、俺の思考は停止した。俺は、両手を広げる佐野さんに勢いよく抱きついく。周りの目なんて、1ミリも気にならなかった。うわぁ、幸せってこのことなんだ……落ち着く匂い、大好きな匂いに包まれて、今にも溶けそう。タートルネックだからあまり匂いしないんじゃないかと思ってたけど、そもそも佐野さんの服自体に匂いが染み付いてるから関係ないわ。ずっとこのままでいたいくらいだ
佐野:…ほんとに好きなんだ
吉田:うん。幸せです流石に
佐野:そう笑
吉田:……はっ、すみません。俺、つい嬉しくなって、
急いで離れようとしたが、腰に手を回され、強引に引き寄せられた。グッと距離が縮まり、佐野さんの匂いが再びダイレクトに伝わってくる
佐野:我に帰るの早いなぁ
吉田:っ、だって、佐野さん嫌でしょ、こんな初対面の人間に抱きつかれて匂い嗅がれて、こんなに嫌がらない人初めて見ました
佐野:…そうでもないよ
吉田:え?
佐野:じゃ、おやすみ
佐野さんは俺の頭をポンポンと撫でて、暗闇の中に消えていった……え、?今の時間なんだったんだろう。そうでもない、か。やっぱ変人だわ。俺も変だけど、佐野さんも十分おかしい。そんなことを考えながら早足にアパートに向かった
♥200超え次第次行きます
#さのじん
𝕔𝕠𝕔𝕠
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コメント
1件
第2話もすごく良かったです……!佐野さんの“補充する?”からの「おいで」、あの一連の流れにもう胸がキュッと締め付けられました。仁人くんが我に返って離れようとしたときに腰を引き寄せるところも、何度も読み返してしまいました。お互いに“変わってる”って思い合ってるのに、どこか通じ合ってる感じがたまらないです。続きすごく気になります……!