俺の愛する人のダンスは美しい。
キレがあったり、スキルの高いメンバーはもちろんいる。だけど、彼のダンスは優しく暖かくも熱を持って語りかけてくる。
そう言ったら、食器を洗っていた当の本人は『えー、なんか照れる』と笑った。
🖤「だって、本当のこと」
💚「そんなふうに言われた事ないんだもん」
今回は振りがしなやかかつ複雑で、片付けが終わった阿部ちゃんはスマホを見ながら振りの確認をしていた。
指先を整えて腕を伸ばす仕草に胸が鳴る。
💚「めめ」
いつの間にか確認を終えていたらしい阿部ちゃんに呼ばれ、我に返る。
🖤「あぁ、ごめんボーッとしてた」
💚「疲れてるの?珍しいね」
🖤「阿部ちゃんが綺麗で」
💚「うん?何それ」
阿部ちゃんのファンサに落ちる事を森林伐採と…最近は環境の事を考えている阿部ちゃんだから植樹と呼ぼうなんて声もあるらしいが…そう呼ぶ。
近くでこうして見ていると、確かに植樹だなと思う。阿部ちゃんが手を伸ばしたら、周りに青く若い葉や木が一斉に芽吹くような、そんな感覚。
🖤「綺麗」
💚「もう、どうしたの」
阿部ちゃんは訳がわからないといった様子で笑いながら俺の腰に両手を回した。
ロケに向かう移動車が走る。
季節は新緑。ついこの間まで満開に花を咲かせていた桜並木は、柔らかく若い葉を纏い揺れている。
隣の阿部ちゃんは、この間の振りをまたスマホで確認していた。ニュアンスが難しいと言い、少し考えすぎている。
🖤「俺はそこ、いいと思うけど」
💚「そうかなぁ」
🖤「この間家で練習してた時、阿部ちゃんの手があんまり綺麗で妖精さんみたいに見えた」
阿部ちゃんが不思議そうな顔をした。
木々が芽吹く光景は俺の妄想の中だけの話なのに、それをすっ飛ばして妖精さんとか言ってしまったから無理もない。
💚「なに妖精さんて。でもあの時も、綺麗って言ってくれてたね」
🖤「ごめん、妄想」
💚「それはちょっと怖いんだけど」
阿部ちゃんが笑い、『一旦あっためよ』と言ってスマホを置いたので肩を抱いて引き寄せ一緒に外を見る。
🖤「見て。新緑、すごく綺麗」
💚「ほんとだね」
そう言いつつ、葉枝の揺れる様子にヒントを得ようとしている顔だ。
🖤「阿部ちゃん、あっためられてないよ」
💚「ふふ、ばれた」
🖤「一旦俺のこと考えてくれませんか?」
💚「そうします」
可愛い妖精さんはそう言って、俺の肩に頭を乗せた。
俺に葉は芽吹かないけど、愛おしい気持ちは触れるたびに湧き上がる。
手をそっと握る。
阿部ちゃんのダンスの美しさを生み出す、一番先端の部分。
気付いた阿部ちゃんも握り返してきて指を絡めたまま、2人でまだ続く新緑の世界を眺めた。
終
コメント
14件
阿部ちゃんの、女性アイドルダンス大好き💚
何が書きたいかわからなくなったけど、💚のダンスの時の指先が綺麗で本当に好き。 とりあえず9人ダンスのあの演目からまだ抜け出せない。