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ハンマーで殴られて、ぐちゃぐちゃになった鉄格子から、青年は青ざめている顔をして、牢の中から大男を指差した。
「こいつは人を殺すぞ!」
中年男性が叫ぶ。
呉林はかなり驚いた顔をして、
「異界のもの……」
そう呟いた。
私は緊張したが、現実的に大男に話しかける。
「あの、どうしたんですか?」
すると、大男はハンマーを振り上げた。
それは私の左肩を殴り、骨の折れる音が私の耳に入る。左の手がぶらりとして、鈍い音と同時に鈍い痛みが走った。
私は何が起きたのか解らなかった。激痛に顔を歪めていると、呉林は私の右手を掴むと走り出した。
「大丈夫! 逃げるわよ!」
掴まれた呉林の手は汗ばんでいた。
左手がぶらりとしている。呉林は、今度は処刑場の方へと私を連れて全速力で走る。
「大丈夫! 肩!」
走りながら私に必死な目を向ける。
「ああ、なんとかね。痛みが酷いよ……」
私は青い顔で力なく答える。全速力なので、次第に私も呉林もさっきよりも息切れしてきた。運動不足の私は、激痛に耐えながら荒い呼吸をし、ヘロヘロな脚を鞭打つ。少し遠くで、大男が追ってきているのか、テレビの砂嵐の音が聞こえる。
「あのテレビ頭は何なんだ! 異界のものって!」
私は苦しい呼吸と左肩から滲み出る赤い色を極力気にしないようにして呉林に叫ぶ。
「本でしか読んだことがないけど、この世ではない世界に挟まって身動きできない人々のことよ!」
丁字路に差し掛かる。呉林は左奥の処刑場に迷わず向かった。何か考えがあるのだろう。私は怖いが何も言わずに従った。
呉林がかなり暗い処刑場の扉を開ける。処刑場は広くはなく、四畳半くらいの一室だった。中央に罪人を縛る太い棒があり、その周りの四隅に弾を込めたライフルが一丁ずつあった。
「私はここで目を覚ましたの。多分、銃殺刑をするところよ」
彼女は恐ろしい所で目を覚ましたようだ。私だったら震えて動くことも出来ない。
呉林が私に重いライフルを渡した。そして、自分もライフルを持つ。私は片手しか使えなかったが、顔をしかめながら何とかライフルを握った。
大男のテレビ頭が私たちに向かって走ってきた。戸惑う私はこの時初めて死の恐怖を抱いた。