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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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FORSAKENの最奥に鎮座する、いつもの重厚な黒檀の執務机。
その上には現在、青白く、不気味な光を放つ立体魔術通信の術式が展開されていた。
虚空に浮かび上がっているのは、FORSAKENと似て非なる異質な領域SWAP SAKENを統治するアクチュアリティ――知性と美貌を併せ持つ「彼女」の姿である。
「――それで? スペクター様。貴方の領域の北境界における魔力の歪み、こちらにも影響が出ているのだけれど。まさか、お寝坊な古代の吸血鬼たちの管理も満足にできないわけではないでしょう?」
通信の向こうから響くアクチュアリティの声は、穏やかなようで、一分の隙もない。
しかし、その冷徹な尋問を受け止めているスペクターは、赤いシルクハットの陰から悠然とした微笑を崩さず、椅子の背にもたれかかっていた。
「まさか。我が領域の調教は完璧ですよ、アクチュアリティ女王。何一つ、私のコントロールを外れているものなどありません」
机の上では、どこまでも格式高く、一国の王としての対話が繰り広げられている。
だが――その分厚い木目の下、誰の目にも触れない絶対的な死角では、極限の背徳劇が進行していた。
机の下の影。
冷たい床の上に跪き、衣服を乱したノスフェラトゥが、スペクターの太腿の間に顔を埋めている。
すぐ頭上からは、他領域の統治者の声が響いている。
見つかれば、古代の怪物のプライドなど粉々に砕け散る絶望的な緊迫感。
ノスフェラトゥは、主であるスペクターの要求通り、その下腹部の熱を自らの口の中に、深く迎え入れていた。
「ん……、ふ……、う……っ」
動くたびに、上質な生地が擦れる微かな音が響く。
スペクターは、女王の鋭い視線を正面から受け止めながら、机の下のノスフェラトゥの黒髪を乱暴に掴み、その口内へともっと深く、容赦なく自身の質量を押し付けていた。
他者の声を聞きながら、主の楔を喉の奥まで 咥え込まされる 屈辱と 快感。
ノスフェラトゥの長い睫毛は涙で濡れ、視界は屈服の熱で激しく歪んでいる。
「ふふ……。ずいぶんと余裕のありそうな口振りですわね。なら、その言葉がハッタリでないことを――」
アクチュアリティがさらに厳しい条件を突きつけようとした、その瞬間だった。
ピロリロリ〜ン♪
厳かな魔術通信の音を完全にぶち壊す、軽快でチープな電子音が、スペクターの胸ポケットから鳴り響いた。
「……何の音でしょう?」
アクチュアリティが不審げに眉をひそめる。
スペクターは微笑を崩さないまま、ポケットから私物のスマートフォンを取り出した。
画面に表示されていたのは、魔術の呪言でも、配下からの緊急連絡でもない。
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「……ッ」
普段ならどんな事態にも動じないスペクターの赤い瞳が、一瞬だけ揺れた。
愛用している最高級ハットクリーナーの70%オフ。
これは滅多にない、絶対に逃してはならない世界線の危機(経済的意味で)であった。
しかし、今はアクチュアリティ女王との重要な魔術通信の真っ最中。
さらに、右手は魔術通信の術式を維持するために机の上に固定せねばならず、左手はスマートフォンの購入確定ボタンを操作するためにフリーにしておきたい。
画面を凝視し、素早くスクロールを始めるスペクター。
だが、スマホを片手で持ちながら、通信のホログラムを維持し、さらに購入手続きの「クレジットカード有効期限」を狭い画面に入力するのは至難の業だった。
効率的な「画面固定台」が、今すぐ必要だった。
スペクターは一切の躊躇なく、机の下を見下ろした。
そこには、主の突然の静止に困惑し、口元を淫らに濡らしたまま、潤んだ瞳でこちらを見上げているノスフェラトゥの顔がある。
スペクターは左手を伸ばすと、ノスフェラトゥの開かれた唇に自身のものを根元までしっかりと 咥え込ませたまま、その高く端正な鼻筋と額の間の絶妙な「くぼみ」に、スマートフォンを縦向きにカチッと設置した。
「……ぇ? ん、んん……!?」
ノスフェラトゥの喉が驚きで跳ねる。
しかし、スペクターを咥え込んだ状態であるため、声を出すことも、首を振ることもできない。
古代の吸血鬼の顔面は今、完璧な角度の「スマホスタンド」として機能させられていた。
「スペクター様? 貴方、さっきから何を見ていらっしゃるの? 視線が下を向いているけれど」
アクチュアリティの声が追及してくる。
「いえ、何でもありません 。少し、手元の資料(タイムセールの画面)を精査したくてね」
スペクターは平然と答えながら、ノスフェラトゥの顔面に載せたスマホの画面を、左手の指先でシュッシュッと高速スクロールしていく。
(な、何を……私は今、何をされている……!?)
ノスフェラトゥの脳内はパニックに陥っていた。
頭上では他領域の女王が冷たい声を響かせ、自身の口内は主の熱で満たされ、そして額の上では「購入手続きへ進む」「お届け先住所の確認」のタップの振動が、皮膚を通じて脳髄へとダイレクトに伝わってくる。
動けばスマホが落ちてしまい、主の「お買い物」の邪魔になってしまう。それは絶対に許されない。
ノスフェラトゥは涙目を極限まで見開き、主のモノを 咥えたまま、微動だにせずスマホの角度をキープするという、前代未聞の高度な従属姿勢(スタンド化)を強いられた。
「よし……クーポン適用、と」
スペクターの指先が、ノスフェラトゥの眉間の上で素早く動く。
「……貴方、私の話を聞いてますの?」
「もちろんですとも、アクチュアリティ女王。実に見事な提案(送料無料ラインまでの残り金額)です」
緊迫した魔術通信の裏で、スペクターの指先が、ノスフェラトゥの鼻先で「注文を確定する」のボタンを力強くタップした。
ご注文ありがとうございました!🎉
画面に可愛いクラッカーのイラストが躍る。無事、限定セール品の確保に成功した瞬間であった。
スペクターは満足げにフッと息を漏らすと、ノスフェラトゥの顔面からスマホを回収し、ポケットへと仕舞い込んだ。
そして、ようやく机の下の「スタンド兼玩具」へと視線を戻す。
そこには、極限の緊迫感と羞恥心、そして顎の疲労のあまり、魂が口から抜けかけたような顔の哀れな古代の吸血鬼の姿があった。
「よくやったね、ノスフェラトゥ。君のその無駄に高い鼻のおかげで、素晴らしい商品がお買い得で手に入ったよ。……さあ、密事の続きを始めようか」
「……もう、私の心は完全に折れた。殺してくれ……っ」
涙を流して床に突っ伏すノスフェラトゥの背中には、もう背徳の快感など微塵も残っておらず、ただ「通販の役には立てた」という虚しい達成感だけが漂っていた。