テラーノベル
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「かわいすぎて、無理」
桃橙
女体化
名前伏せ無し
朝、目を覚ました瞬間、さとみは何かがおかしいことに気づいた。
(……視界、低い)
布団の感触も、体の重さも、ぜんぶ違う。慌てて洗面所に駆け込んだ。
鏡の中には、ピンク髪の──見知らぬ女の子がいた。
「……嘘だろ?」
顔は確かに自分の面影がある。でも、明らかに女の子。胸もあるし、ウエストも細い。
理由はわからない。夢じゃない、頬を叩いても目は覚めない。
(どうすんだよ、コレ……)
そんな混乱の中、鳴るチャイム。
「さとみー? 入ってええ?」
その声に心臓が跳ねた。
「ま、待って、入んなっ──!」
ドアが開いて、ジェルが入ってきた。
次の瞬間、固まる2人。
「…………え?」
「えっと……その……オレ、さとみ……だよ……」
「……………は?????」
ジェルはポカンと口を開け、まるでマンガみたいにフリーズしていたが──
「……なにこれ、かわいすぎ」
叫んだ。
「え? いや、おい、落ち着け」
「え、無理無理、可愛すぎてしぬ 」
「ちょ、手触っていい?」
「やめろ、触んな!遠慮くらいしろ、!」
顔を真っ赤にして叫ぶさとみに、ジェルは目を細めた。
「……あー……顔赤いのも、かわいいなぁ……」
そのあともジェルは、“女の子になったさとみ”を全力で世話しはじめた。
服を買ってきたり、髪をとかしてくれたり、しまいには「メイクもしてみよか?」とキラキラした目で言ってくる始末。
「いいってば! 元に戻るかもしんないし!」
「でもその間、ずっと俺が守るから。お前が困ってたら、全部助けるからな」
ジェルの声は本気で、やさしくて──少しだけ、ドキドキした。
(なんだよ、こいつ……やさしすぎんだろ……)
さとみは目をそらしながら、ぽつりとつぶやいた。
「……なあ、ジェル。もし、戻らなかったらさ……お前、どうすんだよ?」
「ん? そん時は、女の子になったさとみを、俺が一生大事にする。抱きしめて、守って……そんで、好きって言うわ」
「……っ!」
顔が熱い。心臓がうるさい。
女の子になって気づいてしまった。ジェルの言葉一つひとつが、胸に深く刺さる。
(もしかしてオレ……前から、こんな風に思ってた?)
ジェルは屈託ない笑顔で言った。
「さとみは、男でも女でも──オレにとっては、いっちゃんかわいいからな?」
「……バカ」
でも、心の中ではもう返事をしていた。
(オレも、ずっと──お前が好きだった)
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