ある日のことだ。
俺の家中にバサバサという
翼を羽ばたく音が響き渡る。
(また何かしているな?)
そう思い、扉を開けると
広く大きな青空が広がっている。
下を見れば積乱雲が雷の音を鳴らし
人間界には夏の雨が降っている。
これだけ聞けば「動く家に住んでいるのか?」と
思えるが、それは半分正解…半分不正解だ。
ヒントを出すとすれば、俺の家は紺色に近い
鱗に覆われていて銀色の鬣が頭辺りから真っ直ぐ
生え揃っている。背中からは屋根が飛び出していて
腹横には扉がある。賢い人はご察しだろうが
この家は竜だ。正式名称は「ハウスドラゴン」
俺の友人であり、我が家である。
現在、俺が封印している煙人を合わせて計三人。
広い部屋に比べては少人数だ。
それに話し相手もあまり居ない。
「ララ〜…揺れるから暴れるなって。」
俺が大声で叫ぶと、ハウスドラゴンのララが言う。
「仕方ないじゃない。飛んでるんだから!」
「飛ぶって…何処に行ってるんだ?」
「……ヨーロッパよ。」
「?!」
まさかの答えに驚いた。
魔界の近くにある、あのヨーロッパに
行っているのだ。悪い噂も後を絶たない。
「てか、なんでヨーロッパなんだよ?」
混乱する頭を整理しながら
聞くと、『ウフフ』とララが笑う。
「決まってるじゃない〜!
あのヨーロッパには竜の医者が居るのよ!」
「それも二級の竜。そして麒麟だそうよ!」
そう言い、ララが空中に炎を吹く。
ヨーロッパに麒麟なんて珍しいなぁ…
と思いながらも到着を待った。
しばらくして扉の外を覗いてみると
白い城に大きな時計。お洒落な雰囲気が広がる
ヨーロッパに着いていた。
そんな中、ララが森の方へ飛んでいく。
「確か…ここだったと思うのだけれど…」
森の中に入り、周囲を見渡すと
大きな木と鮮やかな花しか広がっていない。
こんな森の中に病院があるのか?と半信半疑で
森の中を探していると、後ろから声をかけられた。
「患者さんですか?」
妙に頭に残る若い男のような声をした
鳥のようなマスクを着けている人物に声をかけられた。
「か、患者…じゃねぇけど。」
俺が一歩後ろに下がると
その人物が凄い勢いで俺のネックレスを掴んだ。
「それ、封印してますよね?
ネックレスの中に煙のような人が見えます。」
マジマジとネックレスを見ながらその人が言う。
(スピラエのことがバレたか?)
俺が危険感を感じ、その人物を殴ろうとすると
いとも簡単に止められた。
「暴力反対ですよ。怪我した分、治療費がかかります。」
「俺だって医者なんですからね。
医者に怪我させるとか酷いです。」
その人物が頬をふくらませる。
仮面だから見えないが、イメージだとそのような感じだ。
「テメェ、人じゃねぇな?」
マスクから角が突き出ている。
角ということは竜や魔物あたりだろうか。
けど知能を持っていることから上級かもしれない…。
「正解です。私は麒麟のクルル。」
「ここで執刀医の助手を営んでおります。」
そう言い、クルルが頭を下げるとマスクが外れ
黄色い鱗の輝くその素顔が明らかになった。
麒麟ということはララが探している
竜の医者なのかもしれない。
「そうなのか。
それより、竜の医者ってやつをしらねぇか?」
俺が聞くと甲高い声でクルルが答える。
「それこそ私にとっての恩師。
執刀医のグル先生です!用事があるのなら
連れて行って差し上げましょう!」
「え…いや…俺じゃなくて…」
「いいからいいから〜」
言うことも聞かずに手を引っ張って
森の奥まで連れて行かれる。
何故俺の知っている幻獣は自分勝手なのだろうか?
自分勝手さは俺よりも酷かった。
コメント
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次楽しみ
一行目から感じました、流石だなと(?)(語彙力は自分が食べました) 想像力を働かしてくれるのは小説の醍醐味ですから…やはりノベルで読むとより面白いです☺️ まさか自分の設定したキャラが視点役を担うとは…結構驚きましたね(笑)。ですが、貴方様になら安心して預けられそうです🤭 まだまだ物語は幕を開いたばかり…この先どんな展開になっていくのか非常に楽しみです✨ これからも執筆、頑張ってください!🙇♂️