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⚠️史実と異なる部分が多く含まれます。
イタリア王国の話
僕は生まれた頃から国の化身として育った。
両親なんて居ないし、人間の友達だって出来やしない。
一般人と関わることなど許されていないのだ。
そして今直ぐにでも僕にこの国を支えてもらいたいが為に、大人達は小さな頃からあり得ないほどの勉強と仕事をこなす事を要求してきた。
それは大人達が僕を自分達に都合のいい化身に育て上げようとした結果であり、僕の意志や意見など関係なかった。
生まれてからずっと毒親に育てられている場合自分の親が毒だと気付けないと言うが、僕はまさしくその状態であった。
そうした子供がどのような成長をするかと言うと、物事に対する興味関心がなく、人の言うことばかり聞く”都合のいい奴”になるのだ。
この世界には権力を持ちたい者が数え切れないほどいる。
そうした時に僕を裏で操って国を自由に動かしたかったのだろう。
なんとも身勝手で迷惑極まりない。
だけどもあの頃の僕にとって彼らの言う事を聞くのは当たり前であり、疑う余地すら無かった。
そんな時だった、僕は三国同盟を組む事となったのだ。
外交の奴らが相当頑張ったのだろう。
相手国の名はナチス・ドイツ、世界の覇権国であり世界最強の座に座るのも遠くない未来だろうとも呼ばれる程の超大国であった。
そしてもう一国の名は大日本帝国、こちらもまた世界の覇権国である。
アジア最強の異名を持ち、今までの戦争全て無敗という偉業を成し遂げた国でもある。
そんな国と同盟を組める事は願っても叶わないほど素晴らしい事だし、もとより僕を育てた彼らに言われたら自分には受けるという選択肢しか無いのだ。
それが義務であり当然だと信じていたのだから…。
初めて二国に会う日、普段から重大な責務も完璧にこなす僕ですら流石に緊張していた。
軍服のせいでかいた汗が蒸れて気持ち悪い。
コンディションは最悪としか言えないな。
だからといって失敗など許されない。
僕の国に対して好印象を持って同盟を組んでもらえるように、喋り方も話す事も表情だって完璧にしてきたんだ。
僕なら大丈夫。だって国の化身だから。
場所はドイツの首都ベルリンにある大きな会場。
左からナチス・ドイツ、大日本帝国、イタリア王国の順に旗が並べてあり、席も自国の旗が後ろにある所へ案内された。
見ると既にナチス・ドイツの化身と大日本帝国の化身がおり、僕の国より一足先に二国同盟を結んでいたからか既にある程度の信頼関係が構築されているようで、なんだか仲間はずれなようで少し戸惑った。
この中で本当にやっていけるのだろうかと思ったが、ある考えがそんな不安も消し去ってくれた。
大丈夫。この二国は今日、僕と同盟を組むためだけにここまでの場を用意して待っていてくれたのだ。
ならば堂々と、そして紳士に行かなくては。
そう思い腹にこれでも無いかと力を入れて顔を引き締めて話しかけた。
「お初にお目にかかります。イタリア王国の化身です。皆様からイタ王と呼ばれていますので、そちらで呼んでいただけると嬉しいです。」
「こちらこそお目にかかれて光栄です。大日本帝国と申します。長いので日帝と呼んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。」
「ナチス・ドイツだ。こちらこそ会えて嬉しい。よろしく頼む。」
えっナチスさん死ぬほど雑なんだけど…。
まぁいい、才能がある奴ほど気難しいとも聞く。
きっとそう言うタイプなのだろう。
上手く付き合って行かなくては。
そこから少しの間3人で同盟の件について詳しく話をしていると食事が運ばれてきた。
いかにも高級そうな銀食器で運ばれてきた料理はどこをとっても完璧としか言いようがないくらい素晴らしい物であった。
いかに盛大に僕をもてなしてくれているかがよく分かる。
そんなこんなありつつ無事調印を押し晴れて日独伊三国同盟が結ばれることとなったのだ。
それから実に2年もの月日が経ち、三国ともタメで話せるような仲になった時期に2人に言われた。
「イタ王、お前それで良いのか?」
「何が?」
「だって今のイタ王の状態はまるで国民の人形同然だ。」
ナチスが何を言っているか分からなかった。
国の化身なのだから国民の為に働くのは当然だからだ。
その心を伝えると少し怒った様子で
「限度があるだろう。我々国の化身だって心がある。人間と同じで嫌なことはあるし、疲れるし、我儘を言いたくなる時もある。」
そう言った後、イタ王はやりたい事とか無いのか。そう問われた。
そうして2.3分ほど考えて出てきたのは”国民の為に”それだけだった。
その答えを聞いた2人は呆れたような、なんとも間抜けな顔をして互いの顔を見合わせていた。
「あのな、イタ王、ナチスが言いたいのは人のためとか、仕事とか、そんな物じゃなくイタ王がそれら全部取っ払って何か好きなことが出来るなら何がしたいか聞きたいんだ。」
「だってそんなの思いつかないよ。ioはずっとその為に生きてきたんだから…」
「………イタ王は俺らと一緒に遊んだり、話したりして楽しいか?」
「もちろん、じゃなきゃ心の底から笑ったりなんて出来ないよ。」
「そうか、じゃあまた俺らと会いたいと思うか?」
「? 当然だよ?」
「じゃあそれはやりたい事に入らないのか?」
「ぁ…」
そう言われたらそうだ…僕のやりたい事…
もしも2人と2度と会えないとなったら僕は正直耐えられ無いかもしれない。
それは3人で遊んだ思い出や共に戦った絆があるからだ。
こんな簡単な答えすら出せないのはなんでだ?
「なぁ、イタ王少しくらい自分で物事を考えてやりたい事とかやってしまえ。」
「このまま一生マリオネットの人生なんて何が楽しいんだ?」
「その先にお前が思い描く実現したい未来があるのか?それは単なる他者から与えられた選択であってお前がやりたいと言ってやってる事じゃ無くないか?」
「だったらそこまで国民の為に頑張る必要無いだろう。あいつらはお前を都合の良いように利用して使い捨てたいだけなんだよ。」
「え…ぁ…」
「おい待てナチス言い過ぎだ。」
「本当のことだ。このままの状態が続くのであればイタ王に幸せな未来など無いぞ。」
「日帝も、それぐらい分かるだろ。」
「ッ…」
「うん、そうだね…ナチスの言う通りだ。気遣ってくれてありがとう、日帝。」
「じゃあさ、今度3人で旅行にでも行かない?それが僕のやりたい事。」
「「!!」」
「あぁ!もちろんだ!絶対に3人で行こう!」
「じゃあ俺が用意しておこう。場所はドイツで良いか?」
「うん…!!」
その時ほんのり世界が色づいた気がしたんだ。
それから2人のお陰で僕は自分の意見を少しずつ言うようになっていった。
こうした方がいいとか、この件については君が口出しすることじゃ無いとか、それは僕の仕事ではないとか。
そう言った物。勇気を振り絞って言い放ったそれはすんなり聞き入れられ自分の感情を押し殺さなくても良くなった。
そうしていくうちにやりたい事も増えてきた。
特に食事は凄かった。ピッツァとかパスタとか、とにかく僕の中で食事に対するこだわりが強くなっていった。
もちろん1番やりたい事は枢軸のみんなとのお話だったけどね。
でもこうなると都合が悪い人間が出てきた。
それは今まで僕を良いように扱ってきた大人達だ。
自分の言うことを聞かず勝手に国を変えてゆく。
いや、本来なら国の化身が自らの手で導く。それが正しいあるべき形だったのだが。
利用できないどころか奴らにとって僕は自分の邪魔をする害悪にでしか無くなったのだ。
だからダメだった。
政府は邪魔だとわかると悪い噂をかき集めでっち上げのニュース記事ばかりの新聞をばら撒いた。
内容もひどい物であり、僕が国民に暴行を加えたり、戦争が長引いているのも裏で手を引いているからだと言う嘘で塗り固められたもの。
やはり今まで裏の権力者として暗躍してきた奴らだったからか、そのニュースは全国的に広まり、世間からはまるで国の化身の癖に裏切り者になったクソ野郎扱いをされる事となった。
何も知らない国民らは僕が歩いているだけで罵詈雑言を浴びせ、しまいには銃弾が頬を掠ったこともある。
そうして国の化身と言う立場でありながら投獄されてしまうことになった。
今まで散々皆のために死力を尽くし我が国がより良い発展を遂げられるように、この第二次世界大戦に勝てるように自分なりに頑張ってきたつもりだ。
だからこそ僕は感謝されども憎まれる筋合いなどないと思っている。
刑務所に入ってからは酷かった。
真冬の極寒だと言うのにも関わらず薄着で服など無いに等しい状態であった。
食事だって冷凍庫で凍らしてたのかと思うくらいカチカチのパンを鉄格子の外から投げてくる。
人権などないも同然だ。いや、正確に言ったら人ではないから元からそんな物無かったのか?
正直ここまで人に対して怒りを覚えたのは初めてだったよ。
ここから出たらどうやって僕を陥れた奴らをどうやって殺してやろうか本気で考えたね。僕の怒りが看守に伝わったか知らないが更に待遇が悪くなった。
きっと自分も殺されるのではと怖くなったのだろう、僕達みたいな国の化身は人より何倍も強いからね。
本当に怖いのはお前ら人間なのに。
真冬から時間が分からなくなるほどの長い期間牢屋にいた僕はもうとっくに限界だった。
今にでも頭がおかしくなりそうだ。
それも当然だろう、毎日パン1つと水を投げ入れられ食べなかったら外から鞭で叩かれる。
夏場はヒートテックに分厚いコートを着せてきて本当に地獄かと思った。
身体的にも精神的にもボロボロな僕に最後の追い討ちをされてしまったんだ。
「イタリア王国は連合国に降伏し、ナチス・ドイツと大日本帝国に対して宣戦布告した。」
そう、告げられたんだ。
何か僕の中で壊れた音がした。
生まれてこの方一切泣いたことなど無かった。
だけどもこれは…これは…到底許せる内容では無かった。
ナチスには散々助けてもらった。イタリア王国がここまで生き残れたのは確実にあの国のお陰だ。
大日本帝国には大事なことを沢山教えてもらった。この国から色々学ぶことも多かった。
なのに…こんなことって…
ごめん、ごめんね2人とも…
僕が不甲斐ないばかりに足を引っ張った挙句あまつさえ2人に宣戦布告などと…
もっともっとしっかりしてればこんな事ならなかったのかな………。
自然と涙が頬を伝う。
それはもう自分では到底止められる様な物ではなく、看守達はそんな僕を見て笑っている。
もうどうでも良いと思ったんだ。
生きる意味などないと、だからいい方法を思いついたんだよ。
これが少しでも2人の償いになると良いけどね…
僕は鉄格子の前にいる看守の腰に付いている銃を即座に奪い取る。
やっぱり化身だから人間よりよっぽど動く速度が速いんだよね。
そうして僕は奪い取った銃の照準を看守らに合わせて______
バンッ…
バンッ…
バンッ…
1人1発。合計3人を撃った。
全員もれなく心臓を撃ち抜いたから流石に死んだだろう。
後は僕だけだ。
「枢軸のみんなに迷惑をかける原因になった僕がのうのうと生きるわけにも行かないからね…
2人とも今までありがとう。
もし死んで地獄に来たら…その時は一緒に乗り越えてくれるかな…?
最後まで図々しくてごめんね。」
そう小さく呟いて…
自身のこめかみに銃口を向けた後、もう誰もいなくなった静かな部屋で永遠の眠りについた。
コメント
37件
いたおー…ちゃん…安心して…?嫌がらせしたヤツらは皆…消しとくから…この腐女子パワーでね…
続きかけますか? 図々しくてすいません土下座 作品とても面白かったです・:*+.\(( °ω° ))/.:+
やばい 、 テラーでこんなに泣いたの初めてかもしれん