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ラウは見た目も洗練されているけど生活も丁寧な奴だった。
どんなに忙しくても朝食はちゃんと用意するし、夕飯も自炊する。ストレッチやジムで運動も欠かさないし、隙間時間には英語とフランス語を勉強している。
あと鬼ほどダンスが上手かった。昔チームで海外の大会に出た事もあるのだという。
俺はサウナが好きで時間があれば寝ていたいタイプだけど、それを2日やったらラウとの時間が全くない事に気付いた。
お互いのペースを守って生活すればいいんだろうけど、新婚生活という言葉に無意識に引っ張られているのか何となく2人の時間もあった方がいいような気がしてしまう。
そうして、俺も少し意識して早めに帰って今日の事を話す時間を作ったり、おすすめされた本を読んでみたりするようになった。
あとなんと言ってもラウの料理が美味い。最初からずっと美味い。
しかもカフェみたいなオシャレな盛り付けをしてくるし、それに合うお酒、俺があまり飲めないとわかると合う飲み物まで調べている。
🤍「何でも知っておいて損はないから。翔太くんにも喜んで欲しいし」
そう当たり前のように言う、俺より10歳も若い後輩。どっちが年上かわからなくなる。
そんなある日、会社でラウが珍しいミスをした。
普段はミスをしても前向きらしいけど、できたのを確認したはずのファイルをいざ先方に送ろうとしたらなかったらしい。
やった気になるなと注意され、その後も何度も確認したが見つからず。
バックアップもされていなかったそうで、ファイルの中身を一から作り直しになったとか。
その日、何となく気になって起きて待っていたらラウは終電で帰ってきた。
明らかに落ち込んでいて、ジャケットと荷物を置くとソファに寝転んで顔を隠してしまった。
ラウは俺が疲れて帰ってくるとあったかいスープを出してくれたり、マッサージをしてくれたり、お菓子をくれたりする。
俺のして欲しい事や好きな事を普段の生活から読み取って、欲しい時にくれる、そんな事ができる奴だ。
俺はどうだろう?
ラウの好きなもの、して欲しい事…思い浮かべてもよくわからない。
でも、いつも気遣ってくれるラウに俺も何かしてあげたいと身体が勝手に動いていた。
💙「ラウおかえり、話聞いたよ。大変だったな。お前と同じ部署の奴が言ってたけど、誰かがやっかんだんだろ?みんなお前が悪くないのわかってるみたいだったから。明日も胸張って行こうな」
立ち膝の格好で思いつく限りの励ましの言葉をかけて、頭を撫でる。ラウは無言で頷いたあと、小さな声で俺を呼んだ。
💙「どうした?」
🤍「ちょっと、甘えてもいい?」
💙「甘えるって」
俺の返事は待たず、ラウは腕を伸ばしてきて俺の腰に抱きついた。飛び抜けて背が高いラウは腕も長くて、片腕で俺の腰を一周してしまいそうだ。
驚いたけど俺の腹にすり寄るが早いか、ラウが泣き始めた。ずっと耐えていたのが俺に甘えて溢れたんだとしたら、とちょっと自惚れて、そして何とも言えずたまらない気持ちになった。
💙「辛かったよな、大丈夫、大丈夫だから」
俺はちょっと先輩風を吹かせながら自然とラウの頭を抱き寄せ、落ち着くまで背中と髪を撫でてやった。