家では『ラウ』『翔太くん』だけど会社では変わらず『村上』『渡辺さん』の俺たち。
なぜか景品担当の同期宮舘から、大当たりの内容について話してはいけないと言われたので、あれからビンゴの景品についてはフルコースエステだっただの日帰り温泉招待だっただの適当に言っていた。
よくよく聞くと
❤️「後々もし社内で恋愛したくなった時に、その時の事をイジられたり、引き合いに出されたりしたら面倒でしょ」
と言ったので俺たちへの配慮だったようだ。
そういう訳で、俺とラウが疑似新婚生活を送っているのを知っているのはこの宮舘だけだった。
そんな生活も半分が過ぎ、終盤に差し掛かった頃。
昼ご飯を食べに出ようと宮舘と歩いていると、ミーティングルームでラウと女性社員が話しているのが見えた。
その一瞬でも明らかに告白だろという雰囲気、その子の話を聞くラウの顔も真剣だった。
期限が来たら全て元通りになるんだな、と急に実感すると同時に、始まった時とは気持ちが大きく変わっている自分に気付いた。
❤️「翔太食べないの?」
大好物のラーメンが伸び始めていた。
💙「えっ、あ、食べる」
❤️「もしかしてさっきの、気になった?」
💙「…わかんない」
家に帰るのが楽しみだったのに、この生活が全てイミテーションだったと改めて感じてしまって全てが虚しく無意味なものに思えてきた。
いつも夕飯の時間は合わせるようにしていたけど、何となく『今日外で食べる』と連絡して、サウナでぼんやり過ごした。
ご飯は何となく食べ損ねたけど帰って寝るだけだしもういいか…なんて思いながらドアを開けると、ちょうどラウが風呂から上がったところのようだった。
🤍「お帰りぃ」
💙「ただいま…」
あの告白を見てしまったからか、1人気まずくて目を合わせられない。
水を飲もうとして冷蔵庫を開けると、おかずにラップがしてあった。
💙「これ」
🤍「んー、何となくだけど翔太くん、サウナ行ってご飯食べて来ないんじゃないかと思ってとっといた。余っても明日のお弁当にするし」
この短期間で俺の事を何でも見抜く観察眼と、時折見せる子どものような屈託のなさ。今朝まで心地よかったものが何だか苦しい。
💙「…いらん」
🤍「ん、わかった」
ソファで横になるとすぐに『ベッドで寝ないと、疲れとれないよ』と起こしに来る。
💙「いい、今日ここで寝る」
🤍「翔太くん、なんかあったの?」
💙「なんもないって!いいからほっといて」
ハッとしたけどもう遅い。
ラウがどんな顔をして俺を見ているのか確かめたくなくて、背を向けて狸寝入りしているうちにそのまま寝てしまった。
この生活を始めたばかりの頃以来の、何も会話のないまま終わる夜になった。
コメント
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これはラウール愛され世界線な気もして来た さみぴよ
しょぴかわよ💙