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この世には金を使う人間と金に使われる人間がいる。今から紹介する人物は少なくとも後者であることは間違いないだろう。
その男は炭鉱で労働者として働いていた。
給料は決して高くはなく、光熱費や食費で半分になり、それも交通費で3分の2になる。
そんな男は町にいた。今日は給料日のようだ。
どうやら給料日には町に楽しみをしに行くらしい。
男は物売りの前を通った。
人間と言うものは限定、割引、そして奇妙に引き寄せられるものだ。
「その貯金箱、奇妙とはどのように?」
男は貯金箱の説明を聞いた。
その瞳に光を反射する金粉が舞い落ちるようにきらめき、
「それおいくらですか?」
男が聞いたのは、値段はそちらで決めてくれて良いという解答だった。
「なら、その貯金箱ください」
男が差し出したのは給料の10分の1だった。
「まいど」
男は家に帰り貯金箱を振ってみる。
カラン、と硬貨一枚の音がした。
男はなんだか無力感に襲われ床につく。
次の日、男は脳みそ空っぽで炭鉱へと向かう。
そして町に寄らずに家に着いた。
男は夕食を買いにコンビニへと行く。
「いらっしゃーせェ!」
男はその言葉を背に受けながら変わらないおにぎりを持ち、会計を済ませる。
「ありやとやーしたァ!」
男は家に帰り床につこうとしたが、昨日の貯金箱のことを思い出した。
「・・・」
硬貨の音は二つになっていた。
男に少し希望の色が見える。
それから一週間がたった。
夜遅く、残業から帰った男はすぐに貯金箱を確認した。
なんとそれには紙の音もするではないか!
昨日は我慢した男も今日ばかりは待ちきれず急いで貯金箱を開ける。
そこには二千円札が一つ、五百円硬貨が一つ、五十と十円硬貨がそれぞれ一つ入っていた。
男は家を飛び出し、物売りの元へ駆けつけた。
「何個を、おいくらで?」
「えっと、この中に入っているお金で十個ください。」
「まいど」
これを繰り返してだんだん金を積み上げていった男にふと、同僚がこう聞いた。
「その稼いだお金は何に使うんです?」
「そりゃ、貯金箱を買うためさ!」