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戦いがピークを迎え、空気が重く、冷たく感じられる。タクトの周りには無数の警告が漂い、ミカエルの動きがそれを回避しようとする度に、ひび割れる音を立てる。タクトの目には光が宿り、ミカエルをかわすその姿には、無駄な動きが一切なかった。
ミカエルが刀を握り直し、ペースを落とすことなく突進する。しかし、その速さ、力強さには少しの隙間も見当たらない。
「お前は…やはり、強い。」
タクトはその言葉を噛みしめるように言った。ミカエルの攻撃は鋭く、そして無駄がない。けれども、タクトの目に映るのはただの戦闘ではない。それはまるで二人の間に流れる、時間という名の「警告」に過ぎないように感じていた。
「警告」は、相手の行動や意図を事前に知覚し、動きを阻害する力だ。その力は、ただ相手を圧倒するだけでなく、戦局を支配するための最強の武器でもあった。
その時、タクトの体に微かな震えが走る。瞬間、ミカエルの動きが一瞬遅く感じた。その理由は、タクトが放った警告の力――戦闘の中で、自分自身が何をすべきか、どう動けば最も有利になるかを感じ取る、まさに「先読み」の力。
「――先に言っておこう、ミカエル。」
タクトの冷徹な声が響く。ミカエルが顔をしかめる。だが、すぐに表情を引き締め、攻撃を緩めることなく再度刀を構え直す。
「もう、すでにお前の動きは見えている。」
その瞬間、タクトの周囲に再び警告が立ち上がる。それはまるで時間そのものが歪み、ミカエルの攻撃が一瞬の間にスローモーションとなって目の前に現れるような感覚だ。
そして、タクトはそのスローモーションの中で、まるで舞うように身をひねり、鋭い反応でミカエルの刀を回避する。ミカエルは、タクトが放つ警告の力にいくつも捕らえられ、動きが一瞬遅くなった。
「…なっ。」
ミカエルの表情が、ほんの一瞬にして崩れる。その隙を見逃さず、タクトは素早くその隙間に侵入する。
「—たった今の、警告だ。」
タクトが低く、冷ややかな声で言い放つ。その瞬間、爆発的な速度で警告が発動し、ミカエルの体を捉えようとする。
だが、ミカエルも反応を見せる。彼は刀を大きく振るい、タクトの周囲にある警告を一瞬で切り裂いていく。彼の刀から放たれる圧倒的な力が、警告の力をいとも簡単に断ち切る。
「無駄だ、タクト。」
ミカエルの声が静かに響く。その言葉には、今までの戦闘の中で培われた自信と、タクトに対する挑戦の意志が込められていた。
「警告が、俺には効かない。」
タクトはその言葉を静かに受け止めたが、その瞳の奥には、やりとりの中で感じた確信があった。彼が警告で相手を封じ込められると思っていた瞬間、ミカエルはそれを超えてくる。ミカエルの異能はただの力強さではなく、彼自身の心の中に潜む無尽蔵の意志が反映されているからだ。
タクトは少しだけ、ため息をつき、そして再度警告の力を開放する。それは今までとは比べ物にならないほど強力で、周囲の空気すらも歪めるほどの力を持っていた。警告の発動音は、雷のように響き渡り、全てを圧倒する。
「全てを察知するだけじゃ、終わらない。」
タクトはその言葉を発した後、手を一気に振り上げた。警告が次々と爆発的に発動し、ミカエルを完全に包み込む。その瞬間、タクトは冷徹に目を閉じる。
「お前の動き、もう完全に読んでいる。」
だが、ミカエルは一歩も引かず、刀をさらに強く握りしめてタクトに突進した。その姿には決して負けないという強い意志が見て取れた。戦いは、まだ終わらない。