心から信じて止まぬサルモクシス(ルキフェル)、コユキと善悪と出会えたからか、はたまた魂からの忠誠の言葉『モヌマ(マラナ)・ダ(タ)』を誓ったからなのか、イーチはすっかり従順な感じになって、コユキ善悪のみならず、アスタロトやスプラタ・マンユのメンバーにも甲斐甲斐(かいがい)しく仕え始めるのであった。
「ですからね、この先で待っているのはヒュドラと言う、それはそれは恐ろしい三つ首の邪竜でしてねぇ、危ないですよ~、あっ! 勿論コユキ様や善悪様の様な完全無欠で尊い(たっとい)お方には何でもない相手だとは思っていますけど…… お二人に比べれば、そうですねぇ? そう、ミミズですよミミズ! ミツクビノミミズ、ミクツビノミミズ、いやミミミズノクツビ! に過ぎませんよぉ!」
なるほど、ウザいな……
コユキと善悪も早くも無視を決め込んでいたが、この骨、空気が読めないのか太鼓持ち的な会話を止める気配が一向に無いのであった。
「といっても強敵は強敵ですぞ! 古代の邪竜アジ・ダハーカみたいな事は無いとかお思いでしょう? 所がどっこい、彼(か)のヒュドラを前にしたら伝説の邪竜であっても裸足で逃げ出すこと請け合い! それ位の恐ろしい化け物なのですよ~! 気を付けて下さいね、ね、神様♪」
イーチの言葉に反応してしまう竜、いや邪竜が一人。
「そうか…… 俺が裸足で逃げ出すのか…… ほう、そうかそうか」
イーチはちっちゃな邪竜ではなく何かと親切なアスタロトに向けて聞くのであった。
「アスタ様、こちらは?」
「アジ・ダハーカだぞ」
ギックゥ!
これも才能なのであろう、一瞬でアジ・ダハーカに対する態度を改めるイーチ。
「そうなのですね! 私が尊敬し憧れて止まない竜の中の竜、最強であるアジ・ダハーカ様だったのですかぁ! お会い出来て光栄です! 噂では緑の美しい鱗に覆われていると聞き及んでおりましたが、金色の鱗でございましたかぁ、似合う! 似合います! そこらの古いだけの竜とは違ってお洒落ですねぇ~! 古いだけの格好悪い竜なんか一撃でしょうな! ほら、あのルドラでしたか? あれ? あれは只の蛇でしたかね? あははは、蛇なんか例に出しちゃって失礼でしたね、テヘペロ、お許しをぉ~!」
またもや反応してしまう青紫の闘神が一人。
「ほーんそうかそうか、俺は蛇、か…… 面白い……」
イーチが再び聞いた、アスタロトに。
「アスタ様、こちらは?」
「さっきお前も見ていただろう? 破壊神シヴァ、別名ルドラ、お前的に言えば只の蛇だぞ」
クラアァ!
倒れそうになったが、歯を食いしばって何とか耐えた、イーチのおべんちゃらは一周回り切る迄続いたが、それ以降の彼は結構無口な感じにイメチェンしたのである。
静かになって行軍に集中できそうになったと言うのに、善悪が意外な言葉を口にしたのである。
「丘も中腹迄登った事ではあるし、ここらで休憩を入れるのでござる! コユキ殿、奴に連絡を入れたいのでござるが…… やっぱ電波無い感じ? でござるか?」
コユキは答えて言う。
「うん想像通りダメね、んでもクラックに入る前に何度か連絡しといたから、そろそろ…… お! 来た来た! こっちよぉ! キャーシィーっ!」
ぞろぞろと肥満体の男女がコユキと善悪が休憩している丘の中腹に向けて面倒臭そうに登ってきたが、先頭でコユキに向けて手を振る一際大きな女性は、コユキと善悪の顔馴染み、キャサリン、現アメリカ合衆国の聖女である、当然相方の聖戦士、ウィリアム・スミスも隣に並び坂道をフゥーフゥー言いながら登って来ている。
「ア、アイムソーリー、トゥ、キープ、ユゥ、ウェイティング」 (ごめんなさい、待たせちゃったわね)
おい!
「ウィル、久しぶりでござる! 来てくれて嬉しいのでござる!」
「ナチュラリィ、イフ、リクエステッド、バイ、ア、フレンド」 (俺たちゃ友達だろ、当然じゃないか)
止めろよ! 読者が分からないだろうがぁ!
全く七か月前に言ったのに、覚えていないとは腹立たしい事この上ないな!
と言う事で今後は日本語でご紹介するとしよう、私は分かるんだよ? 私は分かるのだが、あくまでも読者たるオーディエンスの為に日本語でお伝えする、この事だけは是非ご理解頂きたいっ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!