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Eliminator~エリミネ-タ-

4 - 第4話 一の罪状④ 裁く者と裁かれる者

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2025年05月19日

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************



「いやあぁぁぁぁっ!!」



都会の喧騒の片隅で、女性と思わしき叫び声が響き渡る。



辺りには人影の無い建造物の死角。



「――むぐっ!!」



女性は何者かに羽交い締めにされ、更にその口を塞がれる。



「ちっ、うるせぇな! オイ、あれ使えあれ!!」



「ククク、ああ待ってろ」



女性を羽交い締めにしてる男の正面から、何者かが近付いた。



その右手には何やら、黒い機具らしき物が握られている。



男はそれを女性の腹部へ押し付けた刹那――



「――っ!!!!!!」



女性は激しく痙攣した後、その抵抗は力無く失う事となった。



「どうよ20万ボルトの味は?」



改造スタンガンと思わしき凶器を手に、嘲笑う一人の男。



「ヒャッヒャッヒャ!!」



「死んだんじゃねぇか? アハハ」



それに追従する様に、意識を失った女性を取り囲む三つの人影。



三人共に体格は良く、下品に染め上げた金髪に、これまた下品なパーカーをだらしなく着こなしている。



本当に下品な出で立ち、もとい笑い声だった。



その嘲笑う表情には、人の側面にある醜悪さに満ち溢れていた。



「さっさと連れ込んでヤッちまおうぜ!」



「財布から金抜くのも忘れんなよ!」



三人は水商売風と思わしき女性を無造作に引きづり、近くに停めてあった黒いワゴンへ向かう。



時刻は既に午前零時を回っていた。



「女は後ろに放り込んどけ。さあ出発だ!」



一人の男が意気揚々と運転席のドアを開ける。



「……は?」



そこに飛び込んできた有り得ない光景。



突然の事態に男は一瞬己の目を疑い、そして驚愕に見開いていた。



「なんだテメェはぁっ!! 何勝手に人の車乗ってんだよ!?」



男は目の前の状況に対し、怒声を張り上げていた。



何故なら運転席には、見知らぬ人物が居座っていたのだから。



「オイどうした!?」



「何叫んでんだよ?」



怒声に気付いた二人が、運転席の方へと寄り集まってくる。



「コイツが勝手に俺の車に乗ってんだよ!!」



運転席の人物は、いきり立つ三人を尻目にゆっくりと地へ降り立つ。



その得体の知れぬ雰囲気に何かを感じ取ったのか、三人は無意識に後ずさっていた。




“少なくともまともじゃ無い”




黒衣を纏った、それと相反する燃える様な銀色。



「お前達の行き先は欲望の果てでは無い……」



その深い銀色の瞳で三人を見据えて。



「逝き着く先はただ……地獄のみ」



コードネーム『雫』はそう、事も無げに宣告していた。



「はぁ? なに寝惚けた事言ってやがる!!」



「あっぶねぇ目しやがって!!」



「テメェどこの馬鹿よ!?」



飛び交う三人の怒号。



見知らぬ者に車に勝手に乗り込まれたのみならず、突然地獄行き等宣告された処で、理解出来ず混乱するのは当然の事だろう。



「罪状――市岡 明、園田 雅司、岩崎 一博以下三名。現在まで傷害395件。恐喝及び窃盗計588件。被害総額1264万5933円。婦女暴行被害者数122名、未遂現1名。全て把握」



『雫』は三人へ向けて、これまでの悪夢の如き所業を高らかに述べていく。



「んなっ!?」



これには流石に三人も、図星を突かれて固まったかの様に立ち竦んだ。



そもそもこれは補導等により、明るみになった件数のはずが無い。当の本人達ですら、これまでの正確な所業件数等、覚えている筈も無いのだから。



“それを何故知っている?”



“ここまで正確に?”



“全く面識無いはずの者が?”



何より自分達の名前まで、見知らぬ目の前の者が正確に知っているという事実に、得体の知れない様々な思惑が交錯していた。



「よって、これより……“消去”を開始する」



罪状を述べた『雫』は、右手を目の前に掲げ、三人へ向けて威嚇に近い“何か”を顕にしていた。



「てっ! 適当ぶっこいてんじゃねぇぞテメェェェェェ!!!!」



「俺らを誰だと思ってやがる!!」



「ぶっ殺されてぇか!! ああん!?」



『雫』へ向けて怒声を吐き捨てる三人。一人が懐から取り出した、妖しく光るバタフライナイフを剥き出しにした瞬間――



「はっ!?」



「えっ!?」



空気が破裂したかの様な、形容し難い鈍い音が鳴り響いたと同時の事。



三人は目の前で起きた現状に、驚愕と疑惑を抱かざるを得ない。



“一体何が?”



先程まで捉えていたはずの三人の瞳には、その姿を映してはいなかったのだから。



「消えた……?」



「どうなってんだ!?」



三人は先程まで目の前にいたはずの『雫』の姿が何処にも無い事に、戸惑いながら辺りを見回している。



しかし、その姿は眼前には無い。まるで煙の様に消えていたのだ。



だか人が忽然と姿を消す等、通常有り得ない。



そう、あくまで“通常”なら。



「うっ! 後ろだぁっ!!」



突然張り上げた一人の声で、ようやく事態を呑み込み振り返る三人。



『雫』の姿を見失ってから、この間約七秒経過。



三人の背後から約五メートル程離れた位置に、『雫』は背を向けて立っていた。



「驚かせやがって!」



何故突然消えたのかに対して、疑問を抱かないかの様に声を上げるが、三人はすぐに“ある違和感”に気付く。



「あぁ?」



「何だ……あれは?」



その疑問の矛先は、『雫』の右手に向けられた。



三人は目を凝らす。



掲げられた『雫』の右手に掴まれていたのは拳大程の、否もっと大きいであろう赤黒い“何か”。



その赤黒い物体は、まるで生きているかの様に蠢いている。



掌を伝って地面に滴り落ちる液状。



「なっ……」



三人はその物体、見てはいけないおぞましい“何か”を目の当たりにし、金縛りに遭ったかの様に立ち竦むしかない。



“まさか?”



それは俄には受け入れきれない事実。



現実と悪夢の境界線。



「オイ園田ぁぁ!! なんだよそれえぇぇぇ!?」



「ひっ……ひゃあぁぁぁ!!!」



二人の金切り声で、ようやく事態が動き出した。



「あぁ!?」



園田 雅司は己を慌てふためく目で見ている二人に、状況を理解出来ぬまま視線を落とす。



「なっ……何だよこれえぇぇぇ!?」



その視線の先に見た光景に、園田は絶叫を上げる以外に無い。



園田の左胸部分に、ぽっかりと空いた赤黒い空洞。



その周りを侵食する様に、突き破られた衣服から徐々に赤い染みが拡がっていく。



「お前気付かなかったのかよぉ!?」



二人にも、そして園田本人にも、ようやく状況が理解出来た。否、理解するしかない。



『雫』が手に持つ、その“何か”の意味に。



「いっ……嫌だ! たっ……助けっ!!」



状況を理解出来た園田は、ぽっかりと空いた左胸を押さえながらさ迷い、訳の分からない嗚咽を上げている。



『雫』が右手に掴み掲げている赤黒い物体は人間の、園田本人の心臓そのものだった。



気付かなかったのも無理は無い。



抜き取られた本人はおろか、本来在るべき場所から離れた心臓ですら、まだ気付いていないかの様に『雫』の掌で蠢いているのだから。



『雫』の右手から突如蒼白い輝きが迸る。



「んなっ!?」



三人は確かに見た。『雫』に掴まれていた蠢く心臓が、その蒼白い輝きと共に瞬時に凍結していたのを。



先程まで蠢いていた園田の心臓は、『雫』の掌で完全に凍りついている。



「やっ……やめっ!!」



自らの心臓が別の場所で凍りついたのを目の当たりにし、園田は“返してくれ”とでも言わんばかりに、よろよろとその手を伸ばすが、『雫』は“それ”を閉じる様に握り潰した。



まるで硝子細工を地面に叩きつけたかの様に『雫』の掌で砕け散る、凍りついた心臓。



「カ……カヒュッ」



心臓と呼応していたのか、それと同時に白眼を剥き、口から空気が漏れる様な断末魔の嗚咽を最期に、園田はアスファルトの地面に倒れ込む。



うつ伏せに倒れた園田の躯は、不規則な痙攣と共にアスファルトにどす黒い血溜まりを拡げていき、やがて完全に動かなくなった。



「…………」



あまりに現実離れした凄惨な出来事に、二人は声も出せず立ち竦んでいる。



「園田 雅司。消去完了」



“それは夢か現(うつつ)か?”



現実では有り得ない現象で、園田の命を“消去”した『雫』。



その銀色の瞳には、命を物としか見ていないかの様な。



『雫』は次なる対象に目を向ける。



それは無機質で、それでいて美しい迄に残酷な輝きを以て。



「そっ! 園田ぁぁぁ!!!」



闇夜を切り裂く悲痛な絶叫によって、惨劇に凍りついた刻が動き出す。



“物を言わぬ躯と化した仲間”



“その凄惨な死”



理解を超えた現実を受け入れきれぬ為、ただ絶叫を上げる他に無い。



“現実逃避”



「ひっ……人殺っ!!」



だがそれは悪夢では無く、紛れもない現実。



「モグォァッ!?」



『雫』の右手に掴まれて、口を塞がれる形となって、それ以上の声は出せない。



「いっ! 岩崎ィィィィィ!!!」



またもや『雫』がいつの間にか移動していた事に、市岡 明は驚愕に絶叫する。



『雫』は瞬間移動している訳では無い。ただ二人の下に“移動した”だけだ。



五メートル近い距離を、瞬きの間に詰める。それは刹那の刻の事。



人間の視覚領域では、その加速した情報に脳が処理を追い付けない。



よって二人の眼には、『雫』の姿が消えた様にしか映らなかった。



「ひっ……ひぃやぁあぁぁぁ!!!」



そして思わず尻餅をついて絶叫する市岡は、その一部始終を見た。



「……ムグァッ!?」



その眼前で『雫』の口元を掴まれた岩崎 一博の頭部が、その掌から侵食する様に凍結していくのを。それと同時に、言葉にならない岩崎の嗚咽も消える。



常人の眼には映らない移動速度といい、この物理現象といい、どう見ても人間業では無い。



完全に凍結した岩崎の頭部を、『雫』は腐った果実もとい、物を壊す様に握り潰していた。



抵抗無く砕け散った岩崎の頭部は、氷の粒子として闇夜に霧散していく。



「…………」



司令塔である頭部を失った岩崎の躯は、よたよたと周りを暫し徘徊している。



だが頸からの出血は無い。断面まで凍結している為だ。



「岩崎 一博。消去完了」



『雫』が消去完了を告げると同時に、その躯は糸の切れた人形の様に、前方へ力無く崩れ落ちるのであった。

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