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「――全ユニット、対象を視認次第、射殺許可を行使せよ」
地下道に設置されたスピーカーから、冷徹な合成音声が響き渡る。
特殊部隊のタクティカルライトが、迷宮のような暗闇を幾条もの白光で切り裂いた。
「兄貴、連中マジです。新宿の恩人をテロリスト扱いなんて……!」
山城が悔しげに奥歯を噛みしめる。志摩の言う通り、久我山の手回しは完璧だった。
都庁の炎上も、地下の陥没も
すべては「野良犬・黒嵜和貴」という巨悪が引き起こした惨劇として、全国にニュース配信されている。
「文句は後だ。源蔵さん、住人たちを古い地下鉄の連絡通路から脱出させてくれ。ここは俺と山城で食い止める」
「……死ぬんじゃねえぞ、和貴」
源蔵は重い足取りで、怯える住人たちを誘導し、暗闇の奥へと消えていった。
俺は脇差を抜き、壁に背を預けて息を殺した。
近づいてくる軍靴の音。赤外線暗視装置を備えたプロの集団だ。真っ向から挑めば、数秒で蜂の巣にされる。
だが、ここには組織の計算にはない「地の利」がある。
俺は足元の排水溝に、志摩から渡された「EMPグレネード」を投げ込んだ。
パァンッ!!
乾いた破裂音と共に、周囲のライトが一斉に消え、特殊部隊の暗視ゴーグルが過負荷でホワイトアウトする。
「……視界消失! 隊列を崩すな!」
「――今だ」
俺は闇の中を、音もなく加速した。
ハイテクに頼り切った連中にとって、完全な暗闇は恐怖でしかない。
だが、五感すべてで新宿の泥を嗅いできた俺にとって、ここは勝手知ったる庭だ。
すれ違いざまに先頭の兵士の銃床を叩き、二人目の喉元に鞘を叩き込む。
「右だ!いや、左……ぐわあぁ!」
パニックに陥る特殊部隊を背に、俺と山城は通気口から地上――
永田町へと続く「政治の闇」の入り口へと這い出した。
雨は止んでいた。
だが、街の至る所に設置された最新の監視カメラが、無機質なレンズを俺に向けて一斉に回転させる。
「志摩、聞こえるか。今から『麒麟』の懐に飛び込む。……バックアップを頼むぜ」
『……了解した。だが気をつけろ。久我山は影山とは格が違う。奴は…この国の「現実」そのものを操作する男だ』
残された時間は、あと77日。
新宿を追われた野良犬たちは、ついに飼い主の喉元を狙って走り出した。