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#バレンタイン
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ハスク「…まだ起きてんのかよ」
ハスクが外に出ると、入口の傍で珍しく煙草を吸っているシャットがいた。
シャット「…ハスカー…あなたこそ起きてたんですね」
「ハスカー」と呼ぶのは、シャットとアラスターだけの特別な呼び方だ。二人きりの時にしか使ってくれない愛称で、呼ばれると少し嬉しくなる。
ハスク「外で酒飲みたくてな。シャルもどうだ?」
シャット「そうですね。アラスターには内緒ですよ。」
ハスク「はいはい。でも悪酔いするなよ。お礼に煙草1本くれ」
シャット「ガキにはまだ早いです」
ハスク「ガキじゃねぇよ。早くくれ」
シャット「はい。どうぞ」
ハスク「ありがとう。火くれ」
シャットは面倒くさそうに言いながらも、火をつけてやる。
その仕草が、今どきの流行りで言う“メロい女”のそれだ。だが、シャルの一番メロいところは――
シャット「お腹すいたのでおつまみくれませんか?」
ハスク「自分で持ってこい」
シャット「あ、そういえばこの前お酒買い足した気が…」
ハスク「こちらをどうぞ」
シャット「苦しゅうない」
そこだ。ハスクにとってはたまらなくメロい瞬間である。
ハスク「寒くないか?」
シャット「…アラスターの上着借りましたから」
ハスク「お前ら本当にお互いのこと好きだよな」
シャット「いいえ、そんなことないです」
ハスク「お前は好きだろ?」
シャット「…いいえ別に。好きじゃないです」
少し俯きながら答える。
ハスク「嫌いじゃないだろ?」
シャット「…えぇ」
ハスク「まぁ、いいや。俺には関係ない」
シャット「…そうですね」
ハスク「俺は戻る。早く寝ろよ」
背を向けホテルに入っていくハスクを、シャットは思わず呼び止める。
シャット「ハスカー」
ハスク「ん?」
優しく振り向く。
あなたのそういう所は嫌いじゃない。
だから私は、あなたのことを好きですよ――友人としては。
シャット「あの…お酒と…おつまみと…相談相手」
ハスク「それが俺の仕事だからな」
シャット「…ありがとう」
次の日の朝。シャットにとっては今日になっての朝だった。眠れなかったのは、昨夜のチャーリーやヴァギー、カミラの行動があまりにも情報過多で、落ち着けなかったからだ。
夜に聞いたことが悪かった。情報の波についていけなかった。
だから落ち着きたくてタバコも吸ったけれど、心は晴れず、アラスターの上着を借りた――その匂いが好きだなんて、口に出せない。
アラスター「おや、シャル。珍しく早起きですね」
シャット「あなたのせいですよ…」
アラスター「まぁ、ホテルに来なかったあなたの原因で」
シャット「はぁ…それで?その続きは?」
アラスター「続き?」
シャット「プリンセスが天国に行った後にロージーとカミラのところに行ったんでしょ?戦争でもするのでしょう?」
アラスター「さすがシャル!私の相棒!ご察しがいいことで!」
シャット「はぁ…こんな時に」
アラスター「戦いたくない?」
シャット「いえ、そんなことは無いです。疲れが取れることは無いなと思いながら…あと戦力ならロージーよりヴォックスに頼めばいいのに」
アラスター「あんな奴に頼みたくありませんね」
シャット「…ま、そうですよね」
アラスター「疲れているなら今日、私と過ごしますか?」
シャット「余計疲れるのでやめときましょう」
アラスター「失礼な!」
ホテルのフロントにて。
チャーリー「あ!シャット!」
シャット「…また人が増えましたね」
チャーリー「あぁ!彼女はチェリーボム!エンジェルの友達」
シャット「へぇ…」
(おっぱい…大きい…)
チャーリー「ねぇ、シャット…シャットはホテルに残っててくれる?」
シャット「?なぜです?」
チャーリー「…エクスターミネーションで、このホテルは地獄で一番危険な場所になる。死ぬ可能性だってあるし」
シャット「死ぬ可能性ですか…」
チャーリー「うん…シャット次第だから、シャットが決めて」
シャット「そうですね。私はアラスターが残るなら喜んでここにいますよ」
チャーリー「え…いいの?」
シャット「今私がここにいる理由もそうですし、それに私は上級悪魔ですから、簡単に死にませんよ」
チャーリーは嬉しさのあまりシャットに抱きつく。
シャット「え、!?」
チャーリー「シャット!ありがとう!」
シャット「え…あぁ…」
昨日の夜から落ち着きがなく、チャーリーの前では強がっているため、内心落ち着かない。
いつもならアラスターが一緒にいたら落ち着くのに、今回は落ち着かない。
無意識にアラスターの部屋の扉の前に立っていた。
アラスターはまだ下にいるため、ノックしても誰もいない。
そして後ろから、アラスターの声。
アラスター「どうしたの?部屋に入ろうか」
シャットは小さく頷き、アラスターに促されて部屋に入る。
二人きりになるのは久しぶりだ。
最近はホテルにいたため、アラスターと過ごした時間は少なかった。
アラスター「さっきはいいこと言いましたね、シャル」
シャット「…そうですね…」
アラスターはシャットの表情を見て、何かを察したようだ。
アラスター「…やはり怖いですか?」
シャット「…アル…私…」
いつも感情を見せない彼女が、珍しく弱みを見せた。
髪は乱れ、口角は下がり、声もいつもより低い。
アラスターはステッキを椅子に置き、ベッドに腰を下ろす。
アラスター「来ますか?」
腕を広げる。
シャット「……」
いつもなら冗談で流すはずの彼女は、珍しく本気で抱きついてくれた。
アラスターは乱れた髪を整え、ジャケットを脱がせて楽にさせる。
シャットはアラスターの胸の中で目を閉じ、心からリラックスする。
アラスター「寝ますか?」
シャット「…はい」
アラスター「なら部屋に連れて行きましょうか?」
シャット「いえ…ここで寝かしてください…」
珍しく甘える彼女に、アラスターは柔らかく微笑む。
アラスター「えぇ、いいですよ。ならこのまま寝ますか?」
シャットは言葉を返さず、そのまま目を閉じる。
アラスター「ふふっ…困りましたね。うちの子猫は」
猫特有の甘え声のようなゴロゴロが、アラスターの耳に届く。
シャット「…ねぇ、アル…」
アラスター「ん?」
シャット「もう私の前から居なくならないでくださいね」
アラスター「…はい、分かりました…」
シャット「あなたが死ぬ時は私に殺されてくださいね」
アラスター「それいつも言ってるね」
シャット「えぇ、私の大切な人は私以外に殺されてほしくないんです」
アラスター「気持ちは分かるけど、私は大切な人には死んでほしくないな」
シャット「人を沢山殺してるのに?」
アラスター「他人は他人だからね」
シャット「私は知人ばっかり殺してますよ」
アラスター「まぁ、仕方ないでしょ」
シャット「…じゃあ今から仕事してきますね」
スーツのジャケットを羽織る。
アラスター「今日は仕事ないよ」
シャット「いいえ、もうひとつの方です。いいことを知ってしまったのでね…幸せにしてきますよ」
アラスター「…ふっ…そっか。いってらっしゃい」