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「七瀬ちゃん、ひとりマラソン大会は楽しい?」

「た、楽しーー楽し、楽しそうに見えますか」


車から降りて来たのは惣一郎さんだった。いつものベージュの帽子は被っておらず髪の毛は無造作なオールバック、ジーンズに革靴、レーヨン素材の開襟シャツは茶系の南国プリントでそれをなんの違和感もなく着こなしていた。そして中指と人差し指にはシルバーのごついリングが光り、丸眼鏡には薄い色が入っていた。


「惣一郎さん、派手ですね」

「ーーーこれが本来の私ですが」

「なんでいつもベージュの塊なんですか」

「仕事着です、顔料で汚れるのは嫌ですし」

「ですし、なんですか」

「こんなに派手な顔立ちだと生徒が落ち着いて制作に励めませんから」

「ーーーーご自身が格好いいと自覚されているんですね」

「はい」


そう真顔で答えた惣一郎さんは車の助手席を開けた。乗れという事らしく私も戸惑う事なく乗り込んだ。座席は低く座席シートは硬く乗り心地はどちらかと言えば悪い。エンジン音も足の裏にやけに煩く感じた。


「惣一郎さん」

「はい」


在来線下り列車が踏切の向こう側を通り過ぎて行く。


「黄土色の車って珍しいですね」


ぶっ


「七瀬ちゃん、あなたも美術科の生徒なんだから別の表現方法はないんですか、せめてイエローオーカーとか」

「ああ、イエローオーカー」

「はい」


車の内装はレトロ感満載でメーターパネルもアナログ式だった。


「これ、相当古い車じゃないですか」

「あーー、私よりも年上ですよ」

「はあ」

「昭和42年8月生まれ、ダッドサン社のブルーバード510型です」

「昭和っていつですか」

「七瀬ちゃんの親御さんが生まれた頃じゃないですか」


木陰からいつも奥さまがこちらを見ていました

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