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「ーーーそんなに古いと燃費も悪そうですね」
「ガソリンもかなり喰いますよ」
「はぁ、余程お好きなんですね」
「はい、喰いたいものは喰う、乗りたいものには遠慮なく乗ります」
「喰う、乗る」
「はい」
時折見せる気怠げな笑顔で口にした「喰う」「乗る」には特別な意味があるような気がした。
「ダッドサンは今の日産自動車なんです」
「はぁ」
「くうねるあそぶ、このキャッチコピーは知っていますか」
「あーーー、何処かで聞いたことがあります」
「1989年、日産自動車のキャッチコピーでライターは糸井重里さんです」
「あーーー、糸井重里さん」
惣一郎先生は赤信号で停まった運転席から私を見下ろした。
「くう、ねる、あそぶ、最高だと思いませんか」
「はぁ」
「で、私はあなたを何処まで送って行けば良いのですか」
「ーーーえ、送ってくれるんですか」
「それこそ、逆に何処に行くつもりだったんですか」
「いやーー特にーー深い意味はありません」
「ちぇっ」
惣一郎さんは私が実家住まいだと言うと「ちぇっ」を繰り返した。