テラーノベル
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水族館を出た頃には、外はすっかり夕方になっていた。
「じゃあなー!」
「今度ちゃんと四人で飯行こ」
舜太がぶんぶん手を振る。
その隣で、柔太朗は小さく笑った。
「佐野、今日は寝れないな」
「やめろ!!!」
「図星じゃん」
「柔太朗ほんと嫌い!!」
「はいはい」
舜太がまた笑い出す。
「仁人、勇斗のことよろしくね〜」
「お前何目線?」
「保護者」
「違うだろ絶対」
そんなやり取りを最後に、二人とは駅前で 別れた。
そして。
残されたのは――
佐野勇斗と、吉田仁人だけ。
急に静かになる。
さっきまで騒がしかった分、その空気が妙にくすぐったい。
電車に揺られながら、勇斗は窓の外をぼんやり眺めていた。
「……」
「疲れた?」
仁人が聞く。
「んー、ちょっと」
「歩いたもんね」
「でも楽しかった」
そう言って笑うと、仁人も柔らかく笑い返した。
その顔を見て、勇斗はふと思う。
今日一日、ずっと楽しかった。
緊張もしたけど。
隣にいるのが仁人だから、全部特別だった。
電車が揺れる。
ふいに肩がぶつかった。
「ごめん」
「ん」
仁人は短く返事をする。
でも、なぜか少しだけ視線を逸らしていた。
「……仁人?」
「何」
「なんか静かじゃない?」
「そう?」
「うん」
すると仁人は少し困ったように笑った。
「……勇斗のせい」
「え?」
「今日ずっとかわいいから」
勇斗は瞬きをする。
「は!?」
「無意識でやってる?」
「何を!?」
「俺のことずっと見てるし」
「っ……」
図星だった。
「あと笑う時、毎回こっち見る」
「そ、それは……」
「名前呼ぶ回数も多い」
「……」
「距離近いし」
言われるたびに勇斗の顔が赤くなる。
でも。
仁人も少しだけ赤い。
「……仁人、照れてる?」
「照れてない」
「いや照れてる」
「照れてない」
「耳赤い」
「勇斗のせい」
「なんで!?」
仁人は小さく息を吐いて、座席にもたれた。
「今日、ずっと心臓やばい」
「……」
「かわいすぎる」
勇斗は完全に固まった。
そんな直球ある?
しかも仁人、普段あんまり感情を大きく出さないのに。
今日は妙に素直だ。
「……仁人」
「ん?」
「それ反則」
「勇斗には言われたくない」
「俺なんもしてない!」
「してる」
仁人がじっと見てくる。
その視線が熱い。
勇斗は落ち着かなくなって目を逸らした。
すると。
「……ねえ」
「な、何」
「こっち見て」
低い声。
いつもより少し甘い。
勇斗はゆっくり顔を上げる。
近かった。
思ったよりずっと。
「っ……」
「また赤い」
「仁人が近いから!!」
「勇斗がかわいいから近づきたくなる」
「やめろって……」
仁人が小さく笑う。
でもその顔が、どこか余裕なさそうで。
勇斗は不思議に思った。
「……ほんとにやばいの?」
「何が」
「心臓」
「やばい」
「えー、見えない」
「見せないし」
「なんで」
仁人は少しだけ黙る。
そしてぽつりと呟いた。
「……勇斗、今日ずっとメロい」
「……は?」
今度は勇斗の思考が止まる番だった。
「いや待って、何その言葉」
「そのまま」
「メロいって何!?」
「なんか……好きが増す感じ」
「語彙力!!」
「勇斗見てるとにやける」
「っ……」
「あと、触りたくなる」
「ちょ、電車!!」
勇斗が慌てて周囲を見る。
仁人は肩を震わせて笑った。
「冗談」
「絶対違うだろ!」
「半分本気」
「半分でもダメだろ!」
でも。
そんなことを言う仁人自身が、かなり照れている。
珍しい。
いつも余裕そうなのに。
勇斗は少しだけ嬉しくなった。
「……仁人」
「ん?」
「今日、俺ばっかやられてると思ってた」
仁人が目を瞬く。
勇斗は少し照れながら笑った。
「でも仁人もちゃんと俺のこと好きなんだなって分かった」
その瞬間。
仁人が完全に黙った。
「……え」
「え?」
「……それずるい」
「何が?」
「今の顔」
「は?」
仁人が片手で顔を覆う。
耳まで真っ赤だった。
「ちょ、仁人!? 大丈夫!?」
「……無理」
「え!?」
「好きすぎるかも」
勇斗は数秒固まったあと、一気に顔が熱くなる。
「っ〜〜〜〜!!」
「勇斗うるさい」
「仁人のせいだろ!!」
「今の完全に勇斗が悪い」
「知らん!!」
周囲の視線が集まり、勇斗は慌てて口を押さえる。
仁人はそんな勇斗を見ながら、小さく笑った。
でもその目は、少しだけ本気で。
熱っぽかった。
そして勇斗はまだ知らない。
このあと仁人の家に着いてから、もっととんでもなく甘やかされることになるなんて。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹
コメント
1件
藍月。さん、第4話読み終えました〜!🥀 もうね、ここまで甘々だと思わなくて、心臓が持たなかったです……。 仁人が普段クールなタイプだからこそ、「心臓やばい」とか「メロい」とか言っちゃうの、反則級にかわいいし、勇斗がそれに全部赤面してるの、尊すぎて叫びました。 最後の「好きすぎるかも」で完全にやられた。 続き、待ってます。絶対読みます。