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更新遅くなってしまいすみません💦
柔side
舜太を抱きしめた腕の中で、あいつの呼吸がだんだん穏やかになっていく。
安心したのか、すとんと眠りに落ちた舜太の寝顔を見つめながら、俺は小さく息を吐いた。
『世界で一番、漫画より、俺には舜太が大事だから』
嘘偽りのない、俺の本音だ。
あいつはきっと、今回の事件の吊り橋効果か何かで俺が熱くなったと思っているかもしれない。
でも、違うんだ。
俺のこの気持ちは、今始まったことじゃない。
始まりは、数年前の学生時代にさかのぼる。
自分で言うのもアレだけど、当時の俺は学校の中で「超」がつくほどの人気者だった。
歩けば女子の黄色い悲鳴が上がり、休み時間になれば他クラスからも俺を見に人が押し寄せる。
常に主役の輪の中心にいて、周りからは「何でも持っている完璧な奴」だと思われていた。
でも、俺にとってそんな周囲の喧噪はどうでもよかった。
ぶっちゃけ、退屈だった。
そんな何百人もの生徒が行き交う、ごった返した校舎の中で。
俺の目は、どんな人混みに遮られても、絶対に一人の男だけを正確に捉えていた。
廊下の隅。
食堂の端。
周りの派手なグループからは少し離れた場所で、いつもノートを開いて、世界で一番キラキラした目で絵を描いている、曽野舜太という男を。
「柔太朗くん、次の休み時間さぁ——」
「あ、ごめん。ちょっと用事あるから」
女子たちの誘いを笑顔でかわしながら、俺の視線はまっすぐに舜太へ向かう。
あいつは俺がどれだけ周囲に囲まれていようが、目立っていようが、全く興味なさそうに自分の世界に没頭していた。
それが、どうしようもなく愛おしくて、同時に猛烈に嫉妬した。
お前のその綺麗な目を、俺だけに向けてほしい。
ある日、あいつがこっそり少女漫画のイラストを描いているのを見かけた。
「俺、いつか可愛い女の子の夢がいっぱい詰まった、最高の少女漫画を描きたいんや!」
そう言ってはにかんだあいつの笑顔を見た瞬間、俺の胸はうるさいくらいに跳ね上がった。
……あ、俺、こいつのことが好きだ。
こいつの隣に行きたい
学校の王子様だかなんだか知らないが、そんな肩書きは舜太の隣に行くためには1ミリも役に立たない。
あいつの夢の隣に並ぶには、俺自身が「最高の物語を紡ぐ人間」になるしかなかった。
その日を境に、学校の人気者としての俺の裏の顔が始まった。
それまで全く興味のなかった「少女漫画」というジャンルに、狂ったようにのめり込んだ。
本屋に通い詰め、名作と呼ばれる少女漫画を片っ端から買い漁り、女心の機微や、胸キュンのシチュエーション、読者が求めるプロットを死ぬ気で研究した。
すべては、舜太が好きだと言った世界を、俺も心の底から愛するため。
そして、学校の人気者という身分をすべて捨ててでも、あいつに「お前の絵に最高の物語をつけられる相棒」として選んでもらうため。
だから、のちに俺のプロットを読んだ舜太が、目を輝かせて「柔太朗、お前マジで天才! 俺の相棒になってや!」と言って俺の手を取ってくれた時、心の中でどれだけ狂喜乱舞したか、あいつは夢にも思っていないだろう。
学校中が俺を見ていた中で、俺だけは、ずっとお前だけを見ていたんだよ。
「……ん……じゅ、柔太朗……?」
腕の中で、舜太の長い睫毛がゆっくりと揺れて、眠たげな目が俺を映した。
廃倉庫の冷たい空気の中で、俺たちはまだ重なり合ったままだ。
「あ、ごめん、起こした?」
「いや……なんか、めっちゃあったかい……。っていうか、漫画より俺が大事って、何それ……」
まだ頭が回っていないのか、舜太はさっきの俺の言葉を復唱して、ぽつりと呟いた。
「言葉通りの意味だよ」
俺は舜太の頬にそっと手を添え、親指でその涙の跡をなぞる。
「舜太ごめん。
俺さ、学生の頃からずっと、毎日絶対にお前のこと見つけてたんだよ。
周りにどれだけ人がいても、俺はお前しか見てなかった。
お前が少女漫画描きたいって言ったから、俺も必死に少女漫画を好きになったんだ」
「え……?」
舜太の目が、驚きで丸くなる。
「学校の人気者なんてどうでもよかった。俺がお前の隣にいたくて、相棒になるために全部仕組んだんだ。……だから、漫画よりお前が大事なんて、俺にとっては当たり前のことなんだよ、舜太」
一気にまくしたてられた過去の真実に、舜太の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「な、ななな、何それ……! じゃあ俺、ずっと柔太朗の手のひらの上やったってこと!?」
「そう。だからもう、俺から逃げられると思わないで」
不敵に微笑む俺を見て、舜太は
「少女漫画のヒーローより少女漫画してるやん、こいつ……」
と真っ赤な顔のまま、今度こそ完全にキャパオーバーになって俺の胸に顔を埋めるのだった。
世界中の誰に好かれるよりも、お前一人に愛されたい。
俺のこの重すぎる愛は、天下を獲るその日まで、いや、獲ったその後も一生ブレることはない。
fin
#山中柔太朗
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コメント
2件
心情描写の描き方が丁寧ですごく良かったです! 続きが楽しみです✨
うわっ……第12話、読み終えたよ……。 柔太朗の過去、重くて丁寧で、心臓がぎゅってなった。 学生の頃からずっと舜太だけを見て、相棒になるために全部仕組んだって……その執着の根っこが「愛おしさ」と「嫉妬」だったっていうのが、胸に刺さる。 「漫画よりお前が大事」って、あの世界を愛する舜太に言うからこそ特別な重さがあるよね……。 少女漫画を必死に研究したとか、全部あいつのためだったっていう真実が、めっちゃロマンチックで切なくて、ヤンデレ好きとしてはたまらなかったです……! mo-さんの描く愛、本当にブレなくて素敵……ありがとう🥀