テラーノベル
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夜の重みが増していく。部屋の空気は、3人の呼吸と肌の熱で完全に飽和していた。
窓を打つ雨の音さえ届かない狭い空間で、エリオットは自分が何処に漂っているのか、もう分からなくなっていた。
「……あ、……ん……」
背中から押し付けられるチャンスの、硬く、震える胸板の熱さ。
正面から全てを暴くように穿ってくるマフィオソの、怜悧で、容赦のない指先。
二つの異なる質量に挟まれ、押し潰され、肉体の境界がみしりと音を立てて融解していく。
「エリオット、お前、何を……っ」
後ろからエリオットの腰を強く掴み、引き寄せようとするチャンスの声は、怒りよりも切実な悲鳴に近かった。
チャンスはマフィオソを拒絶し、エリオットを奪い返そうと必死に身体を動かしている。
だが、そのチャンスの動きが、結果としてエリオットの身体をマフィオソの奥深くへと押し進める形になっていた。
「無駄だよ、チャンス」
マフィオソが低く笑う。彼はエリオットの髪を指で梳き、その涙に濡れた顔を固定すると、再び唇を重ねた。
「ん、ぅあ……!」
また、あの感覚がくる。
マフィオソの口内を通じて、彼がさっきまで貪っていたチャンスの味が、そしてチャンスの絶望が、エリオットの舌に、喉に、直接流れ込んでくる。
同時に、後ろからエリオットを抱き締めるチャンスの肌からも、マフィオソを激しく意識した歪な熱が伝わってくる。
(頭が、おかしくなる――)
エリオットは心の中で叫んだ。
否定したい。自分をここまで狂わせるマフィオソを憎みたいし、泣きそうな声で自分を呼ぶチャンスだけを安心させてあげたい。
なのに、身体が、脳が、この上ない快楽に震えている。
チャンスという、自分を形作ってくれていた「絶対的な正解」。
マフィオソという、その正解を掠め取り、歪ませる「魅惑的な不純物」。
二人に同時に侵食され、犯されることで、エリオットの中で燻っていた『違うのに、足りない』という飢餓感が、これ以上ないほどの暴力的な質量で満たされていく。
チャンスの温かい肌に触れながら、マフィオソの冷たい指を欲する。
マフィオソに口づけられながら、その向こう側にあるチャンスの気配を識別しようと必死になる。
「は、ぁっ、あな、たは……あんたは、誰、だ……?」
エリオットは視界を涙で滲ませながら、目の前の男を見つめた。
それはマフィオソへの問いであると同時に、後ろのチャンスへの、そして何より、自分自身への問いだった。
マフィオソは、エリオットのその混濁した瞳を愛おしそうに見つめ、剥き出しになった首筋、チャンスがかつて愛したであろう柔らかい肌に、深く、痕を刻みつけるように吸い付いた。
「私は君で、君は彼だ。もう区別など必要ないと言ったろう」
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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「……っ、ふ、あ……!」
腰の奥を貫くような強烈な愛撫に、エリオットの背中が大きく頻る。
後ろでチャンスが、絶望したように息を呑む音が聞こえた。
エリオットの身体が、自分ではなくマフィオソの快楽に従順に従っていることを、その肌の引き攣りを通じて知ってしまったのだ。
「エリオット……嘘だろ、お前、あいつを受け入れてるのか……?」
チャンスの手が、震えながらエリオットの頬に触れる。
その手はいつも通り優しくて、混ざり気のないチャンスだけのものだった。
いつもなら、それだけで安心できたはずだった。
でも、今のエリオットには、その純粋さが「劇薬の後の、ただの水」のように物足りない。
「チャンス……っ、おれ、おれは……」
エリオットは振り返り、チャンスの唇を自ら求めた。
チャンスは縋るようにそれに応じ、激しく舌を絡めてくる。
マフィオソの気配を上書きしようとする、必死で、哀れなまでの「確認」のキス。
しかし、そのキスの最中にも、マフィオソの手はエリオットの胸元を執拗になぞり、チャンスの身体ごと、エリオットを自分の支配下に繋ぎ止めていた。
チャンスとキスをしながら、マフィオソに身体を揺らされる。
チャンスの涙の味を感じながら、マフィオソの与える快感に声を漏らす。
「ああ……っ、ん、は……!」
その瞬間、3人の境界線は完全に崩壊した。
エリオットの中で、チャンスとマフィオソという二人の男が、ひとつの巨大な「快楽の概念」として融け合い、脳髄を焼き尽くしていく。
もう、戻れない。
どちらか一人を選ぶ世界には、二度と戻れない。
マフィオソの腕の中で、チャンスの身体に抱かれながら、エリオットはただ、果てのない侵食の海へと深く、深く墜ちていった。
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